369 韓昌黎集 巻五 78 《八月十五夜贈張功曹》 韓愈 kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞 fc2ブログ 4171
- 2014/05/09
- 00:14
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805年貞元21年 38歳 | |
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(八月十五夜張功曹に贈る)
八月十五夜贈張功曹
仲秋の夜、江陵功曹参軍事に新たに任じられた張署君に贈る。
纖雲四卷天無河,清風吹空月舒波。
細い筋のような雲が四方の空に巻き、天には天の川も見えず、すがすがしい風が空を吹きわたって、月影は波の上にひろがりうつしている。
沙平水息聲影絕,一杯相屬君當歌。
川岸の砂は平らに流れの音もやみ、物音も物の姿も絶えたとき、一杯の酒を君に勧めたら、君は歌を歌ってくれ。
君歌聲酸辭且苦,不能聽終淚如雨。
君の歌はむせぶ様な痛ましいし調べと歌詞も哀しく、終わりまで聴いていることができずに涙が雨のように落ちる。
洞庭連天九疑高,蛟龍出沒猩鼯號。
洞庭湖は天に続くかと思われるほどにひろがり、九疑の山は高く、湖水のなかに蛟龍が出没し、山中では猩々【しょうじょう】や鼯鼠【むささび】が鳴く。
十生九死到官所,幽居默默如藏逃。―1
私は九死に一生を得て転任先、配所の郴州に着いたが、ひっそりした生活しかできなくて毎日黙りこんでいるばかりで、まるで逃げ隠れしているようだった。
下牀畏蛇食畏藥,海氣濕蟄熏腥臊。
昨者州前捶大鼓,嗣皇繼聖登夔皋。
赦書一日行萬里,罪從大辟皆除死。
遷者追回流者還,滌瑕盪垢清朝班。
州家申名使家抑,坎軻隻得移荆蠻。―2
判司卑官不堪說,未免捶楚塵埃間。
同時輩流多上道,天路幽險難追攀。』
君歌且休聽我歌,我歌今與君殊科。
一年明月今宵多,人生由命非由他。有酒不飲奈明何。』―3
江陵は現在の武漢市より少し西の長江沿いにあって、この地方では大都会にちがいないが、やはり都を遠く離れた蛮夷の地である。法曹参軍というのは府の司法関係の事務を扱う役人で、官僚にはちがいないが、最末端に属する低い地位である。つまり愈は、流罪は解かれたわけだが、都へ帰ることは許されず、低い地位の地方官として田舎町に勤務しなければならなくなったのである。愈はこの命令に不満だったらしいが、いったん命令が出された以上、ありがたくお受けしないわけにはいかない。まして彼はもう罪人ではなく、身分が低いとはいえ地方官の一人なのである。今までの陽山県令の肩書は流罪に際して形式的に授けられたもので、法曹参軍は県令よりも地位が低いとはいうものの、勤務地が格段に都から近くなったのだし、罪人の扱いはもはや受けないのだから、これで満足としなければならぬのであった。
(八月十五夜張功曹に贈る)#1
繊雲【せんうん】四【よ】もに巻いて天に河【か】無く、清風空を吹いて月は波を舒【の】ぶ。
沙は平らに水息【や】んで声影絶え、一盃【いっぱい】相属【しょく】す君当【まさ】に歌うべし。
君が歌は声酸【いた】み辞も且つ苦しく、終わるまで聴く能【あた】わずして涙雨の如し。
洞庭は天に連なり九疑【きゅうぎ】は高く、蛟竜【こうりゅう】出没して猩鼯【せいご】号【さけ】ぶ。
十生【じつせい】九死【きゅうし】 官所に到り、幽居黙黙として蔵逃せるが如し。
#2
牀【しょう】を下れば蛇を畏れ食には薬を畏れ、海気濕蟄【しつちつ】して腥臊【せいそう】熏【くん】ず。
昨者【さきごろ】州前【しゅうぜん】に大鼓を槌【う】ち、嗣皇【しこう】聖を継ぎて菱皐【きこう】を登【あ】ぐ。
赦書一日に万里を行き、罪の大辟【たへき】に従うは皆死を除かる。
遷者は追回し流者は還【かえ】し、瑕【きず】を滌【あら】い垢【あか】を蕩【そそ】いで朝【ちょう】 班【はん】を清む。
州家は名を申【の】べしも使家は抑え、坎軻【かんか】隻【ひとつ】荊蛮【けいばん】に移るを得しのみ。
#3
判司は卑官にして説【い】うに湛えず、未だ塵埃【じんあい】の間に捶楚【すいそ】せらるるを免れず。
同時の輩流 多く道に上るも、天路は幽険にして追攀【ついはん】し難し。
君が歌を且【しばら】く休【や】めて我が歌を聴け、我が歌は今君と科を殊【こと】にす。
一年の明月 今宵【こよい】多し、人生命【めい】に由る 他に由るに非ず、酒有れども飲まずんば明を奈何【いかん】せん

現代語訳と訳註
(本文)
纖雲四卷天無河,清風吹空月舒波。
沙平水息聲影絕,一杯相屬君當歌。
君歌聲酸辭且苦,不能聽終淚如雨。
洞庭連天九疑高,蛟龍出沒猩鼯號。
十生九死到官所,幽居默默如藏逃。
(下し文)(八月十五夜張功曹に贈る)#1
繊雲【せんうん】四【よ】もに巻いて天に河【か】無く、清風空を吹いて月は波を舒【の】ぶ。
沙は平らに水息【や】んで声影絶え、一盃【いっぱい】相属【しょく】す君当【まさ】に歌うべし。
君が歌は声酸【いた】み辞も且つ苦しく、終わるまで聴く能【あた】わずして涙雨の如し。
洞庭は天に連なり九疑【きゅうぎ】は高く、蛟竜【こうりゅう】出没して猩鼯【せいご】号【さけ】ぶ。
十生【じつせい】九死【きゅうし】 官所に到り、幽居黙黙として蔵逃せるが如し。
(現代語訳)
仲秋の夜、江陵功曹参軍事に新たに任じられた張署君に贈る。
細い筋のような雲が四方の空に巻き、天には天の川も見えず、すがすがしい風が空を吹きわたって、月影は波の上にひろがりうつしている。
川岸の砂は平らに流れの音もやみ、物音も物の姿も絶えたとき、一杯の酒を君に勧めたら、君は歌を歌ってくれ。
君の歌はむせぶ様な痛ましいし調べと歌詞も哀しく、終わりまで聴いていることができずに涙が雨のように落ちる。
洞庭湖は天に続くかと思われるほどにひろがり、九疑の山は高く、湖水のなかに蛟龍が出没し、山中では猩々【しょうじょう】や鼯鼠【むささび】が鳴く。
私は九死に一生を得て転任先、配所の郴州に着いたが、ひっそりした生活しかできなくて毎日黙りこんでいるばかりで、まるで逃げ隠れしているようだった。
(訳注)
八月十五夜贈張功曹
仲秋の夜、江陵功曹参軍事に新たに任じられた張署君に贈る。
「張功曹」は803年暮、3人流罪にされたうちの張署である。中唐詩-266 答張十一功曹 韓愈 Ⅱ韓退之(韓愈) 紀頌之の漢詩ブログ 韓愈特集-29正式には功曹参軍事という。人事を担当する職で、愈が任ぜられた法曹参軍とは同格であり、府庁の最末端に属する官僚である。
これら参軍の職をひっくるめて判司と呼び、罪があれば鞭や杖で叩かれるお仕置きを受ける。高級官庶の場合は身分を重んじて、流罪とか左遷、革職(官職剥奪)、あるいは自殺を賜わるなどの処罰はあるのだが、叩かれることはない。判司はいちおう高級官原の末席には連なるのだが、扱いは高級職と下級職との中間にあるのであった。張署は愈と同時に臨武県へ流されたのだが、臨武県は彬州に属する。やはり郴州で命令を待つうち、これも江陵府の、功曹参軍に任ずるという辞令を受けたのであろう。そして出発の日を待つうち、たまたま中秋の名月の日が来て、張署が愈の宿を訪れ、酒を酌みかわしたところから、この詩が作られた。良くわからない罪で流罪となっている韓愈には次の赴任地がなかなか命が出ないのである。急進改革派、宦官筋からの裏工作によるものなのであろう。
纖雲四卷天無河,清風吹空月舒波。
細い筋のような雲が四方の空に巻き、天には天の川も見えず、すがすがしい風が空を吹きわたって、月影は波の上にひろがりうつしている。
○纖雲 細い糸の雲。筋雲。○四卷 糸巻きのように四方の空を巻く。
沙平水息聲影絕,一杯相屬君當歌。
川岸の砂は平らに流れの音もやみ、物音も物の姿も絶えたとき、一杯の酒を君に勧めたら、君は歌を歌ってくれ。
君歌聲酸辭且苦,不能聽終淚如雨。
君の歌はむせぶ様な痛ましいし調べと歌詞も哀しく、終わりまで聴いていることができずに涙が雨のように落ちる。
○聲酸 辛い、痛ましい、むせぶ様な調べ。
洞庭連天九疑高,蛟龍出沒猩鼯號。
洞庭湖は天に続くかと思われるほどにひろがり、九疑の山は高く、湖水のなかに蛟龍が出没し、山中では猩々【しょうじょう】や鼯鼠【むささび】が鳴く。
○九疑 九疑山 湖南省寧遠縣の南六十支那里に在る山名、九峯竝び聳え、山形相似たるによりて名づく。
十生九死到官所,幽居默默如藏逃。―1
私は九死に一生を得て転任先、配所の郴州に着いたが、ひっそりした生活しかできなくて毎日黙りこんでいるばかりで、まるで逃げ隠れしているようだった。
八月十五夜贈張功曹(八月十五夜張功曹に贈る)
纖雲四卷天無河,清風吹空月舒波。
沙平水息聲影絕,一杯相屬君當歌。
君歌聲酸辭且苦,不能聽終淚如雨。
洞庭連天九疑高,蛟龍出沒猩鼯號。
十生九死到官所,幽居默默如藏逃。―1
下牀畏蛇食畏藥,海氣濕蟄熏腥臊。
隠れ住んでいるように感じるのは、寝台から降りれば毒蛇の心配があり、食事には毒薬の入っている恐れがある。海から立ちのぼる気は湿気を帯びていて、なまぐさい臭いがあたりに漂う。
昨者州前捶大鼓,嗣皇繼聖登夔皋。
先日のこと、州庁の前の太鼓が鳴らされた。そして、お世継ぎの天子が聖明の徳を継がれ、賢臣を登用されるということが知らされた。
赦書一日行萬里,罪從大辟皆除死。
赦免状は一日に一万里を行き、極刑以下の罪はすべて死を免ぜられた。
遷者追回流者還,滌瑕盪垢清朝班。
左遷された者はもとへもどされ、流された者は還され、加えられた恥辱をすすぎ、百官の仲間に加わって朝廷に参上した。
州家申名使家抑,坎軻隻得移荆蠻。 ―2
だが私の場合は、州の刺史は名前を上申してくれたのに湖南観察使がおさえてしまい、運の悪いことに蛮俗の土地である江陵へ移ることができただけだった。
判司卑官不堪說,未免捶楚塵埃間。
同時輩流多上道,天路幽險難追攀。』
君歌且休聽我歌,我歌今與君殊科。
一年明月今宵多,人生由命非由他。有酒不飲奈明何。』―3
(八月十五夜張功曹に贈る)#1
繊雲【せんうん】四【よ】もに巻いて天に河【か】無く、清風空を吹いて月は波を舒【の】ぶ。
沙は平らに水息【や】んで声影絶え、一盃【いっぱい】相属【しょく】す君当【まさ】に歌うべし。
君が歌は声酸【いた】み辞も且つ苦しく、終わるまで聴く能【あた】わずして涙雨の如し。
洞庭は天に連なり九疑【きゅうぎ】は高く、蛟竜【こうりゅう】出没して猩鼯【せいご】号【さけ】ぶ。
十生【じつせい】九死【きゅうし】 官所に到り、幽居黙黙として蔵逃せるが如し。
#2
牀【しょう】を下れば蛇を畏れ食には薬を畏れ、海気濕蟄【しつちつ】して腥臊【せいそう】熏【くん】ず。
昨者【さきごろ】州前【しゅうぜん】に大鼓を槌【う】ち、嗣皇【しこう】聖を継ぎて菱皐【きこう】を登【あ】ぐ。
赦書一日に万里を行き、罪の大辟【たへき】に従うは皆死を除かる。
遷者は追回し流者は還【かえ】し、瑕【きず】を滌【あら】い垢【あか】を蕩【そそ】いで朝【ちょう】 班【はん】を清む。
州家は名を申【の】べしも使家は抑え、坎軻【かんか】隻【ひとつ】荊蛮【けいばん】に移るを得しのみ。
#3
判司は卑官にして説【い】うに湛えず、未だ塵埃【じんあい】の間に捶楚【すいそ】せらるるを免れず。
同時の輩流 多く道に上るも、天路は幽険にして追攀【ついはん】し難し。
君が歌を且【しばら】く休【や】めて我が歌を聴け、我が歌は今君と科を殊【こと】にす。
一年の明月 今宵【こよい】多し、人生命【めい】に由る 他に由るに非ず、酒有れども飲まずんば明を奈何【いかん】せん
現代語訳と訳註
(本文)
下牀畏蛇食畏藥,海氣濕蟄熏腥臊。
昨者州前捶大鼓,嗣皇繼聖登夔皋。
赦書一日行萬里,罪從大辟皆除死。
遷者追回流者還,滌瑕盪垢清朝班。
州家申名使家抑,坎軻隻得移荆蠻。
(下し文) #2
牀【しょう】を下れば蛇を畏れ食には薬を畏れ、海気濕蟄【しつちつ】して腥臊【せいそう】熏【くん】ず。
昨者【さきごろ】州前【しゅうぜん】に大鼓を槌【う】ち、嗣皇【しこう】聖を継ぎて菱皐【きこう】を登【あ】ぐ。
赦書一日に万里を行き、罪の大辟【たへき】に従うは皆死を除かる。
遷者は追回し流者は還【かえ】し、瑕【きず】を滌【あら】い垢【あか】を蕩【そそ】いで朝【ちょう】 班【はん】を清む。
州家は名を申【の】べしも使家は抑え、坎軻【かんか】隻【ひとつ】荊蛮【けいばん】に移るを得しのみ。
(現代語訳)
隠れ住んでいるように感じるのは、寝台から降りれば毒蛇の心配があり、食事には毒薬の入っている恐れがある。海から立ちのぼる気は湿気を帯びていて、なまぐさい臭いがあたりに漂う。
先日のこと、州庁の前の太鼓が鳴らされた。そして、お世継ぎの天子が聖明の徳を継がれ、賢臣を登用されるということが知らされた。
赦免状は一日に一万里を行き、極刑以下の罪はすべて死を免ぜられた。
左遷された者はもとへもどされ、流された者は還され、加えられた恥辱をすすぎ、百官の仲間に加わって朝廷に参上した。
だが私の場合は、州の刺史は名前を上申してくれたのに湖南観察使がおさえてしまい、運の悪いことに蛮俗の土地である江陵へ移ることができただけだった。
(訳注)
下牀畏蛇食畏藥,海氣濕蟄熏腥臊。
隠れ住んでいるように感じるのは、寝台から降りれば毒蛇の心配があり、食事には毒薬の入っている恐れがある。海から立ちのぼる気は湿気を帯びていて、なまぐさい臭いがあたりに漂う。
○下牀 寝台から降りる。○畏蛇 毒蛇の心配があること。○食畏藥 食事には毒薬の入っている恐れがある。○海氣 海から立ちのぼる気○濕蟄 空気中の水分が多いこと、湿気を帯びていること。○熏腥臊 なまぐさい臭いがあたりに漂う。北回帰線付近の8月だから、まだ蒸しあつい日がある。
昨者州前捶大鼓,嗣皇繼聖登夔皋。
先日のこと、州庁の前の太鼓が鳴らされた。そして、お世継ぎの天子が聖明の徳を継がれ、賢臣を登用されるということが知らされた。
○昨者 先日のこと。○捶大鼓 州庁の前の太鼓が鳴る。○嗣皇 世継ぎの天子。○繼聖 聖明の徳を継がれたこと○登夔皋 賢臣を登用される。
赦書一日行萬里,罪從大辟皆除死。
赦免状は一日に一万里を行き、極刑以下の罪はすべて死を免ぜられた。
○赦書 赦免状○罪從 罪を負ったもののこと。○大辟 五刑のひとつ。死刑。死罪。○皆除死 すべて死を免ぜられ。
遷者追回流者還,滌瑕盪垢清朝班。
左遷された者はもとへもどされ、流された者は還され、加えられた恥辱をすすぎ、百官の仲間に加わって朝廷に参上した。
○遷者 左遷された者。○追回 もとへもどされ。○流者還 流された者は還される。○滌瑕 加えられた恥辱をすすぎ。○盪垢 垢を洗い落とす。○清朝班 百官の仲間に加わって朝廷に参上した。
州家申名使家抑,坎軻隻得移荆蠻。―2
だが私の場合は、州の刺史は名前を上申してくれたのに湖南観察使がおさえてしまい、運の悪いことに蛮俗の土地である江陵へ移ることができただけだった。
○州家 州の刺史○申名 名前を上申する。○使家抑湖南観察使がおさえる。○坎軻 いきなやむ。不遇なこと。○隻得 ただ一つだけ得る。○移荆蠻 蛮俗の土地である江陵へ移る。
八月十五夜贈張功曹(八月十五夜張功曹に贈る)
纖雲四卷天無河,清風吹空月舒波。
沙平水息聲影絕,一杯相屬君當歌。
君歌聲酸辭且苦,不能聽終淚如雨。
洞庭連天九疑高,蛟龍出沒猩鼯號。
十生九死到官所,幽居默默如藏逃。―1
下牀畏蛇食畏藥,海氣濕蟄熏腥臊。
昨者州前捶大鼓,嗣皇繼聖登夔皋。
赦書一日行萬里,罪從大辟皆除死。
遷者追回流者還,滌瑕盪垢清朝班。
州家申名使家抑,坎軻隻得移荆蠻。―2
判司卑官不堪說,未免捶楚塵埃間。
わたしが任命された判司(各参軍の総称)は低い官職で一々言ってはいられぬくらい。庭先で埃まみれになって杖で打たれるお仕置きを免れることはできない。
同時輩流多上道,天路幽險難追攀。』
同年代の仲間は多く出世街道を歩んでいるが、天へと昇る道は険しくて、あとを追って進むこともむずかしい。
君歌且休聽我歌,我歌今與君殊科。
君の歌はひとまずやめにして、私の歌を聴きたまえ。私の歌はいま、君の歌とは種類が違っている。
一年明月今宵多,人生由命非由他。有酒不飲奈明何。』―3
一年に円い月は何度もあるが、今宵こそ月光が豊かなのだ。人の一生は天命によって動くもの、ほかのものによって勤くのではない。酒がここにあるのに飲まなかったら、この明月をどうしようか。
(八月十五夜張功曹に贈る)#1
繊雲【せんうん】四【よ】もに巻いて天に河【か】無く、清風空を吹いて月は波を舒【の】ぶ。
沙は平らに水息【や】んで声影絶え、一盃【いっぱい】相属【しょく】す君当【まさ】に歌うべし。
君が歌は声酸【いた】み辞も且つ苦しく、終わるまで聴く能【あた】わずして涙雨の如し。
洞庭は天に連なり九疑【きゅうぎ】は高く、蛟竜【こうりゅう】出没して猩鼯【せいご】号【さけ】ぶ。
十生【じつせい】九死【きゅうし】 官所に到り、幽居黙黙として蔵逃せるが如し。
#2
牀【しょう】を下れば蛇を畏れ食には薬を畏れ、海気濕蟄【しつちつ】して腥臊【せいそう】熏【くん】ず。
昨者【さきごろ】州前【しゅうぜん】に大鼓を槌【う】ち、嗣皇【しこう】聖を継ぎて菱皐【きこう】を登【あ】ぐ。
赦書一日に万里を行き、罪の大辟【たへき】に従うは皆死を除かる。
遷者は追回し流者は還【かえ】し、瑕【きず】を滌【あら】い垢【あか】を蕩【そそ】いで朝【ちょう】 班【はん】を清む。
州家は名を申【の】べしも使家は抑え、坎軻【かんか】隻【ひとつ】荊蛮【けいばん】に移るを得しのみ。
#3
判司は卑官にして説【い】うに湛えず、未だ塵埃【じんあい】の間に捶楚【すいそ】せらるるを免れず。
同時の輩流 多く道に上るも、天路は幽険にして追攀【ついはん】し難し。
君が歌を且【しばら】く休【や】めて我が歌を聴け、我が歌は今君と科を殊【こと】にす。
一年の明月 今宵【こよい】多し、人生命【めい】に由る 他に由るに非ず、酒有れども飲まずんば明を奈何【いかん】せん
現代語訳と訳註
(本文)
判司卑官不堪說,未免捶楚塵埃間。
同時輩流多上道,天路幽險難追攀。』
君歌且休聽我歌,我歌今與君殊科。
一年明月今宵多,人生由命非由他。有酒不飲奈明何。』―3
(下し文) #3
判司は卑官にして説【い】うに湛えず、未だ塵埃【じんあい】の間に捶楚【すいそ】せらるるを免れず。
同時の輩流 多く道に上るも、天路は幽険にして追攀【ついはん】し難し。
君が歌を且【しばら】く休【や】めて我が歌を聴け、我が歌は今君と科を殊【こと】にす。
一年の明月 今宵【こよい】多し、人生命【めい】に由る 他に由るに非ず、酒有れども飲まずんば明を奈何【いかん】せん
(現代語訳)
わたしが任命された判司(各参軍の総称)は低い官職で一々言ってはいられぬくらい。庭先で埃まみれになって杖で打たれるお仕置きを免れることはできない。
同年代の仲間は多く出世街道を歩んでいるが、天へと昇る道は険しくて、あとを追って進むこともむずかしい。
君の歌はひとまずやめにして、私の歌を聴きたまえ。私の歌はいま、君の歌とは種類が違っている。
一年に円い月は何度もあるが、今宵こそ月光が豊かなのだ。人の一生は天命によって動くもの、ほかのものによって勤くのではない。酒がここにあるのに飲まなかったら、この明月をどうしようか。
(訳注)#3
判司卑官不堪說,未免捶楚塵埃間。
わたしが任命された判司(各参軍の総称)は低い官職で一々言ってはいられぬくらい。庭先で埃まみれになって杖で打たれるお仕置きを免れることはできない。
○不堪說 一々言ってはいられないほどのもの。○捶楚 杖で打たれるお仕置きをうける。○塵埃間 庭先で埃まみれになる。
同時輩流多上道,天路幽險難追攀。』
同年代の仲間は多く出世街道を歩んでいるが、天へと昇る道は険しくて、あとを追って進むこともむずかしい。
○天路 天子の政。天子の作る法則。はるか遠い天上のみち。ここでは、中央朝廷に迎えられることをいう。○幽險 一人ぼっちで誰もいない、書して峻道。○難追攀 あとを追って進むこともむずかしい。
君歌且休聽我歌,我歌今與君殊科。
君の歌はひとまずやめにして、私の歌を聴きたまえ。私の歌はいま、君の歌とは種類が違っている。
○殊科 科を異にする。科が優れていること。
一年明月今宵多,人生由命非由他。有酒不飲奈明何。』―3
一年に円い月は何度もあるが、今宵こそ月光が豊かなのだ。人の一生は天命によって動くもの、ほかのものによって勤くのではない。酒がここにあるのに飲まなかったら、この明月をどうしようか。
「張功曹」とは、前に見えた張署である。功曹は官名で、正式には功曹参軍事という。人事を担当する職で、愈が任ぜられた法曹参軍とは同格であり、府庁の最末端に属する官僚である。
韓愈をも含めた同一事件の流罪人について一律の命をくだしている。州の刺史は都に召還されるべき人のリストのなかに間違いなく入れてくれた。しかし、韓愈たちには都へ召喚されるものではなかった
。
州の刺史の上申を握りつぶしたのは、当時の湖南観察使であった。楊憑は柳宗元の妻の父であり、韓愈たちが柳宗元の一派に、すなわち王伾・王叔文の一党に、敵対するものである以上、その召還を妨害したのだ。韓愈の置かれている立場は、守旧派であり、急進改革の王伾・王叔文の一党が、実権を握っている間は、上申書が中央に届いていても取り上げられるわけはないのである。官僚の陰湿さは科挙試験の前から、党派を明確にしておかないと出世はないのである。韓愈は守旧派ではないが、急進派からはそう見られていたのだろう。
この詩の中で、愚痴を述べた韓愈であったが、その点をさらに明確に述べた詩がある。次に掲載する『赴江陵途中寄贈王二十補闕李十一拾遺二十六員外翰林三学士』である。
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