370 韓昌黎集 巻五 30 《嗟哉董生行》 韓愈 kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞 fc2ブログ 4176
- 2014/05/10
- 00:22
370 韓昌黎集 巻五 30 《嗟哉董生行》 韓愈 | kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞 fc2ブログ 4176 |
799年貞元15年 32歳 | ||
30 | 嗟哉董生行 <42>#1 | 淮水出桐柏, |
嗟哉董生行 <42>#2 | ||
嗟哉董生行 <42>#3 |
嗟哉董生行 <42>#1Ⅱ韓退之(韓愈)詩315 紀頌之の漢詩ブログ 1024
嗟哉董生行(韓愈 唐詩 底本二巻)
(嗟哉【ああ】董生の行【うた】)
嗟哉董生行 #1
ああ嘆かわしい世だね、董くんに歌う。
淮水出桐柏,山東馳遙遙、千里不能休;
淮水は胎簪山を水源にして桐柏山のふもとをめぐり流れ出でている、山の東へはるばる馳せ流れる、千里の間休んだりすることはない。
淝水出其側,不能千里, 百里入淮流。
支流に淝水があり、その水源の傍から出ており、千里とはいかないが百里を過ぎると淮水に注入し合流する。
壽州屬縣有安豐,唐 貞元時,縣人 董生召南,隱居行義於其中。
そこに壽州があり、屬縣の安豐が有るのだ、唐の徳宗の貞元時代に、その県人の董召南くんがいる、その男は知識人なのに仕官せず、民間にいるが正義や忠義を心の中に持っていて行いの正しいことをしている。
刺史不能薦,天子 不聞名聲。
州長官はその男を推薦しようとはしないのだ、だから天子は彼の名声を聞き及ぶことはないのだ。
#2
爵祿不及門,門外惟有吏,日來征租更索錢。
嗟哉董生,朝出耕夜歸讀古人書,盡日不得息。
或山而樵,或水而漁。
入廚具甘旨,上堂問起居。
父母不戚戚,妻子不咨咨。
嗟哉董生孝且慈,人不識,惟有天翁知,生祥下瑞無時期。
#3
家有狗乳出求食,雞來哺其兒。
啄啄庭中拾蟲蟻,哺之不食鳴聲悲。
彷徨躑躅久不去,以翼來覆待狗歸。
嗟哉董生,誰將與儔?
時之人,夫妻相虐,兄弟爲讎。
食君之祿,而令父母愁。
亦獨何心,嗟哉董生無與儔。
(嗟哉【ああ】董生の行【うた】)
准水【わいすい】は桐柏【とうはく】より出で、山東に馳【は】せて 遙遙【ようよう】、千里 休む能【あた】はず。
淝水【ひすい】は其の側【かたわら】に出で、千里なる能はざれども、百里にして淮に入りて 流る。
壽州【じゅしゅう】の屬縣【ぞくけん】に安豊【あんぽう】有り、唐の貞元【ていげん】の時、縣人の董生【とうせい】召南【しょうなん】あり、隠れ居【す】みて 義を其の中【うち】に行ふ。
刺史【しし】は薦むる能はず、天子は名聾を聞かず。
#2
爵祿【しゃくろく】門に及ばず、門外 惟【ただ】吏【り】あるのみ、日に来って租を徹し更に餞を索【もと】む。
嗟哉【ああ】董生【とうせい】、朝に出でて耕し、夜は掃って古人の書を読む、尽日 息ふことを得ず。
或は山に樵【しょう】し、或は水に漁す。
厨【くりや】に入って甘旨【かんし】を具【ととの】へ、堂に上って起居を問ふ。
父母は戚戚たらず、妻子は咨咨【しし】たらず。
嗟哉【ああ】董生【とうせい】 孝にして且 慈【じ】、人識らず、惟 天翁【てんおう】のみ知る有り、祥を生じ 瑞【ずき】を下し 時期 無し。
#3
家に狗【いぬ】の乳する有り 出でて食を求む、鷄【にわとり】来って その児【こ】を哺【はぐく】まむとす。
啄啄【たくたく】として庭中に蟲蟻【ちゅうぎ】を拾ふ、之を哺【はぐく】ましめむとすれども食はず 鳴く聲悲し。
彷徨【ほうこう】し躑躅【てきちょく】して 久しく去らず、翼を以て来り覆うて 狗の歸るを待つ。
嗟哉 董生、誰を以てか與【とも】に儔【たぐ】へむ。
時の人、夫妻 相 虐【さいな】み 兄弟讎【あた】を爲す。
君の祿を食【は】み、而【しか】も 父母をして愁へしむ。
亦 濁り何の心ぞ、嗟哉 董生、與【とも】に儔【たぐ】へむもの無し。
現代語訳と訳註
(本文) 嗟哉董生行 #1
淮水出桐柏,山東馳遙遙、千里不能休;
淝水出其側,不能千里 ,百里入淮流。
壽州屬縣有安豐,唐 貞元時,縣人 董生召南,隱居行義於其中。
刺史不能薦,天子 不聞名聲。
(下し文) (嗟哉【ああ】董生の行【うた】)#1
准水【わいすい】は桐柏【とうはく】より出で、山東に馳【は】せて 遙遙【ようよう】、千里 休む能【あた】はず。
淝水【ひすい】は其の側【かたわら】に出で、千里なる能はざれども、百里にして淮に入りて 流る。
壽州【じゅしゅう】の屬縣【ぞくけん】に安豊【あんぽう】有り、唐の貞元【ていげん】の時、縣人の董生【とうせい】召南【しょうなん】あり、隠れ居【す】みて 義を其の中【うち】に行ふ。
刺史【しし】は薦むる能はず、天子は名聾を聞かず。
(現代語訳)#1
ああ嘆かわしい世だね、董くんに歌う。
淮水は胎簪山を水源にして桐柏山のふもとをめぐり流れ出でている、山の東へはるばる馳せ流れる、千里の間休んだりすることはない。
支流に淝水があり、その水源の傍から出ており、千里とはいかないが百里を過ぎると淮水に注入し合流する。
そこに壽州があり、屬縣の安豐が有るのだ、唐の徳宗の貞元時代に、その県人の董召南くんがいる、その男は知識人なのに仕官せず、民間にいるが正義や忠義を心の中に持っていて行いの正しいことをしている。
州長官はその男を推薦しようとはしないのだ、だから天子は彼の名声を聞き及ぶことはないのだ。
(訳注) 嗟哉董生行 #1
ああ嘆かわしい世だね、董くんに歌う。
○嗟哉董生行 底本巻二。董召南というすぐれた民間知識人をたたえたうた。嗟哉は「ああ」。董生は董召南をさす。生はもと学者という意味で、唐の時代には、くん、とか、さん、とかぐらいの敬称として用いられた。行は詩体の一種。「男はつらいよ」の寅さんが口上を言うような詩である。このブログでは、漢詩の訳文を「現代詩」として付くことはしない事としている。できるだけ漢詩の意味が深く理解できるように考えて掲載しているが、この詩は、韓愈が啖呵を切るため、あるいは強調するため五言を四言にしたり、七言を六言にしている。その表現については原文に空白にしてあらわした。
淮水出桐柏,山東馳遙遙,千里不能休;
淮水は胎簪山を水源にして桐柏山のふもとをめぐり流れ出でている、山の東へはるばる馳せ流れる、千里の間休んだりすることはない。
○推水 推陽平民県胎簪山から流れ出、東北方の桐柏山のふもとをめぐり、遠く東流して洪沢湖に注ぐ河。○遙遙 はるばる。『左伝、昭公二十五』「鸚鵠来巣、遠哉遙遙」(鸚鵠 巣より来たり、遠き遙遙たり)の句がみえる。
淝水出其側,不能千里 ,百里入淮流。
支流に淝水があり、その水源の傍から出ており、千里とはいかないが百里を過ぎると淮水に注入し合流する。
○淝水 九江成徳県広陽郷から流出し西北に走って淮水に合流する。
壽州屬縣有安豐,唐貞元時 ,縣人 董生召南,隱居行義於其中。
そこに壽州があり、屬縣の安豐が有るのだ、唐の徳宗の貞元時代に、その県人の董召南くんがいる、その男は知識人なのに仕官せず、民間にいるが正義や忠義を心の中に持っていて行いの正しいことをしている。
○寿州 淮・淝二水の合流点にある。いまは安徽省に属する。○隠居 知識人が仕官せず、民間にいること。中国の通念では、知識人は官文になって社会に奉仕すべきだとされる。それを官吏にならないから隠れ棲むことになる。おのれの意志で仕官しない場合と、望んでもできない場合とがある。董生は後者であった。
刺史不能薦,天子 不聞名聲。
州長官はその男を推薦しようとはしないのだ、だから天子は彼の名声を聞き及ぶことはないのだ。
○刺史 州長官。○薦 州長官は管下の人材を天子に推薦する義務をもち、唐代には、だいたい毎年、長官が主宰して試験し、合格したものを、長安の郡で行なわれる官吏資格認定試験に送ることになっていた。これを「薦【せん】」という。この詩で「不能薦」というのは、董生が州での試験に合格しなかったことをさす。このような試験にも裏口の存在したこと、「古来非独今」である。『從仕』 (韓愈)を参照。
從仕 (韓愈)
居閑食不足,從仕力難任。
兩事皆害性,一生恒苦心。
黄昏歸私室,惆悵起歎音。
棄置人間世,古來非獨今。
嗟哉董生行 #1
淮水出桐柏,山東馳遙遙、千里不能休;
淝水出其側,不能千里, 百里入淮流。
壽州屬縣有安豐,唐 貞元時,縣人 董生召南,隱居行義於其中。
刺史不能薦,天子 不聞名聲。
#2
爵祿不及門,門外惟有吏,日來征租更索錢。
俸禄が門を開けて家にとどくはずがない、門戸に税吏だけがあり、毎日やって来て納税の督促し、そのうえ「わいろ=小銭」を要求する。
嗟哉董生,朝出耕夜歸讀古人書,盡日不得息。
ああ 董くん、こんなことじゃ朝家を出て畑を耕し、夜帰って古人の書を読む毎日だが、昼の間休むこともできないありさまだ。
或山而樵,或水而漁。
また、ある日は山で木こりをし、ある日は川で漁師をする。
入廚具甘旨,上堂問起居。
台所に入りごはんしたくをうまいものをつくり、奥座敷の親のためにごきげんをうかがっている。
父母不戚戚,妻子不咨咨。
父母はくよくよせず、妻子もあくせくしない。
嗟哉董生孝且慈,人不識,惟有天翁知,生祥下瑞無時期。
ああ 董くん、きみは孝行もので情ぶかい、このことは人は気もつかぬことであるが、天の神さまだけはご存じで、しょっちゅう幸せな喜ばしいことをおくだしになる。
#3
家有狗乳出求食,雞來哺其兒。
啄啄庭中拾蟲蟻,哺之不食鳴聲悲。
彷徨躑躅久不去,以翼來覆待狗歸。
嗟哉董生,誰將與儔?
時之人,夫妻相虐,兄弟爲讎。
食君之祿,而令父母愁。
亦獨何心,嗟哉董生無與儔。
(嗟哉【ああ】董生の行【うた】)#1
准水【わいすい】は桐柏【とうはく】より出で、山東に馳【は】せて 遙遙【ようよう】、千里 休む能【あた】はず。
淝水【ひすい】は其の側【かたわら】に出で、千里なる能はざれども、百里にして淮に入りて 流る。
壽州【じゅしゅう】の屬縣【ぞくけん】に安豊【あんぽう】有り、唐の貞元【ていげん】の時、縣人の董生【とうせい】召南【しょうなん】あり、隠れ居【す】みて 義を其の中【うち】に行ふ。
刺史【しし】は薦むる能はず、天子は名聾を聞かず。
#2
爵祿【しゃくろく】門に及ばず、門外 惟【ただ】吏【り】あるのみ、日に来って租を徹し更に餞を索【もと】む。
嗟哉【ああ】董生【とうせい】、朝に出でて耕し、夜は掃って古人の書を読む、尽日 息ふことを得ず。
或は山に樵【しょう】し、或は水に漁す。
厨【くりや】に入って甘旨【かんし】を具【ととの】へ、堂に上って起居を問ふ。
父母は戚戚たらず、妻子は咨咨【しし】たらず。
嗟哉【ああ】董生【とうせい】 孝にして且 慈【じ】、人識らず、惟 天翁【てんおう】のみ知る有り、祥を生じ 瑞【ずき】を下し 時期 無し。
#3
家に狗【いぬ】の乳する有り 出でて食を求む、鷄【にわとり】来って その児【こ】を哺【はぐく】まむとす。
啄啄【たくたく】として庭中に蟲蟻【ちゅうぎ】を拾ふ、之を哺【はぐく】ましめむとすれども食はず 鳴く聲悲し。
彷徨【ほうこう】し躑躅【てきちょく】して 久しく去らず、翼を以て来り覆うて 狗の歸るを待つ。
嗟哉 董生、誰を以てか與【とも】に儔【たぐ】へむ。
時の人、夫妻 相 虐【さいな】み 兄弟讎【あた】を爲す。
君の祿を食【は】み、而【しか】も 父母をして愁へしむ。
亦 濁り何の心ぞ、嗟哉 董生、與【とも】に儔【たぐ】へむもの無し。
現代語訳と訳註
(本文) #2
爵祿不及門,門外惟有吏,日來征租更索錢。
嗟哉董生、朝出耕,夜歸讀古人書,盡日不得息。
或山而樵,或水而漁。
入廚具甘旨,上堂問起居。
父母不戚戚,妻子不咨咨。
嗟哉董生孝且慈,人不識,惟有天翁知,生祥下瑞無時期。
(下し文)#2
爵祿【しゃくろく】門に及ばず、門外 惟【ただ】吏【り】あるのみ、日に来って租を徹し更に餞を索【もと】む。
嗟哉【ああ】董生【とうせい】、朝に出でて耕し、夜は掃って古人の書を読む、尽日 息ふことを得ず。
或は山に樵【しょう】し、或は水に漁す。
厨【くりや】に入って甘旨【かんし】を具【ととの】へ、堂に上って起居を問ふ。
父母は戚戚たらず、妻子は咨咨【しし】たらず。
嗟哉【ああ】董生【とうせい】 孝にして且 慈【じ】、人識らず、惟 天翁【てんおう】のみ知る有り、祥を生じ 瑞【ずき】を下し 時期 無し。
(現代語訳)#2
俸禄が門を開けて家にとどくはずがない、門戸に税吏だけがあり、毎日やって来て納税の督促し、そのうえ「わいろ=小銭」を要求する。
ああ 董くん、こんなことじゃ朝家を出て畑を耕し、夜帰って古人の書を読む毎日だが、昼の間休むこともできないありさまだ。
また、ある日は山で木こりをし、ある日は川で漁師をする。
台所に入りごはんしたくをうまいものをつくり、奥座敷の親のためにごきげんをうかがっている。
父母はくよくよせず、妻子もあくせくしない。
ああ 董くん、きみは孝行もので情ぶかい、このことは人は気もつかぬことであるが、天の神さまだけはご存じで、しょっちゅう幸せな喜ばしいことをおくだしになる。
(訳注)#2
爵祿不及門,門外惟有吏,日來征租更索錢。
俸禄が門を開けて家にとどくはずがない、門戸に税吏だけがあり、毎日やって来て納税の督促し、そのうえ「わいろ=小銭」を要求する。
○吏 官吏は、天子が直接任命する官と、出先官庁がやとう吏とからなり、吏は書吏とも背丈とも称する。官は転任することが多いが、吏は転任せず、官の下役として官庁の実務にあたった。ここにうたわれる吏は緻税吏である。・吏索銭 税金を徴収した上、さらにワイロを出せと請求する。これまた「古来非独今」である。
從仕 (韓愈)
居閑食不足,從仕力難任。
兩事皆害性,一生恒苦心。
黄昏歸私室,惆悵起歎音。
棄置人間世,古來非獨今。
嗟哉董生、朝出耕,夜歸讀古人書,盡日不得息。
ああ 董くん、こんなことじゃ朝家を出て畑を耕し、夜帰って古人の書を読む毎日だが、昼の間休むこともできないありさまだ。
○古人書 韓愈『雜詩』「古史散左右、詩書置後前。」(古史 左右に散じ、詩書 後前【こうぜん】に置く。)とある。古代の歴史の巻々は左右において勉学しているのでどうしても散らばりがちになってしまう。『詩経』『書経』詩人の詩文を前後において私の詩作に生かしている。
或山而樵,或水而漁。
また、ある日は山で木こりをし、ある日は川で漁師をする。
○或山而樵、戎水而漁 二つの而字を于とするものもある。この語法も韓愈の古文復活を示すところ。詩経を模したもの。
入廚具甘旨,上堂問起居。
台所に入りご飯仕度でうまいものを作り、奥座敷の親のためにご機嫌をうかがっている。
○廚 台所。男が親のために、みずから調理することは中国では孝行の定型の一つである。○上堂 家の中で最もよい部屋が堂であって、そこに父母を住まわせる。だから父母のことを堂上ともいう。父母のいる部室に入ることを上堂という。○問起居 起き居が安らかであるかどうかをたずねる。すなわち、ごきげんをぅかがうこと。朝夕起居を問うのが子の親に対する礼儀とされる。
父母不戚戚,妻子不咨咨。
父母はくよくよせず、妻子もあくせくしない。
○戚戚 くよくよする。○咨咨 あくせくする。
嗟哉董生、孝且慈,人不識,惟有天翁知,生祥下瑞無時期。
ああ 董くん、きみは孝行もので情ぶかい、このことは人は気もつかぬことであるが、天の神さまだけはご存じで、しょっちゅう幸せな喜ばしいことをおくだしになる。
○孝且慈 孝は目上のものに対する、慈は目下のものに対する、やさしさ。○天翁 唐代には、物語の中で、天の神をこういった。天のあるじ、天帝のことである。○生祥下瑞 祥、瑞すなわち奇蹟をあらわした。○無時期 やむときがない。ひっきりなしに、というほどの意。
嗟哉董生行 #1
淮水出桐柏,山東馳遙遙、千里不能休;
淝水出其側,不能千里, 百里入淮流。
壽州屬縣有安豐,唐 貞元時,縣人 董生召南,隱居行義於其中。
刺史不能薦,天子 不聞名聲。
#2
爵祿不及門,門外惟有吏,日來征租更索錢。
嗟哉董生,朝出耕夜歸讀古人書,盡日不得息。
或山而樵,或水而漁。
入廚具甘旨,上堂問起居。
父母不戚戚,妻子不咨咨。
嗟哉董生孝且慈,人不識,惟有天翁知,生祥下瑞無時期。
#3
家有狗乳出求食,雞來哺其兒。
家に仔犬をそだてる母犬がいた、その犬が子を生んで 餌をさがしに出る、すると鶏がやって来て 犬の子に食べさせようとする。
啄啄庭中拾蟲蟻,哺之不食鳴聲悲。
コツコツと庭の虫や蟻を拾ってきて、口移しで食べさせようとするのだが 食べないで悲しげに鳴いている。
彷徨躑躅久不去,以翼來覆待狗歸。
鶏は行ったり来たりうろついて、行ってしまうこともしないでそこにいる。翼で小犬をだきかかえ 親犬の帰りを待った。
嗟哉董生,誰將與儔?
ああ 董くん、誰をきみにくらべることができようか。
時之人,夫妻相虐,兄弟爲讎。
世間の人というものは、夫婦が互いに苦しめ合い、兄弟同士でまるで仇のようになる。
食君之祿,而令父母愁。
天子からから俸禄をもらっている、そうしながら、父母を泣かせている連中がいる。
亦獨何心,嗟哉董生無與儔。
これはいったいどんな気持ちというのだろうか、ああ 董くん、きみのようなひとはいないのだ。
(嗟哉【ああ】董生の行【うた】)
准水【わいすい】は桐柏【とうはく】より出で、山東に馳【は】せて 遙遙【ようよう】、千里 休む能【あた】はず。
淝水【ひすい】は其の側【かたわら】に出で、千里なる能はざれども、百里にして淮に入りて 流る。
壽州【じゅしゅう】の屬縣【ぞくけん】に安豊【あんぽう】有り、唐の貞元【ていげん】の時、縣人の董生【とうせい】召南【しょうなん】あり、隠れ居【す】みて 義を其の中【うち】に行ふ。
刺史【しし】は薦むる能はず、天子は名聾を聞かず。
#2
爵祿【しゃくろく】門に及ばず、門外 惟【ただ】吏【り】あるのみ、日に来って租を徹し更に餞を索【もと】む。
嗟哉【ああ】董生【とうせい】、朝に出でて耕し、夜は掃って古人の書を読む、尽日 息ふことを得ず。
或は山に樵【しょう】し、或は水に漁す。
厨【くりや】に入って甘旨【かんし】を具【ととの】へ、堂に上って起居を問ふ。
父母は戚戚たらず、妻子は咨咨【しし】たらず。
嗟哉【ああ】董生【とうせい】 孝にして且 慈【じ】、人識らず、惟 天翁【てんおう】のみ知る有り、祥を生じ 瑞【ずき】を下し 時期 無し。
#3
家に狗【いぬ】の乳する有り 出でて食を求む、鷄【にわとり】来って その児【こ】を哺【はぐく】まむとす。
啄啄【たくたく】として庭中に蟲蟻【ちゅうぎ】を拾ふ、之を哺【はぐく】ましめむとすれども食はず 鳴く聲悲し。
彷徨【ほうこう】し躑躅【てきちょく】して 久しく去らず、翼を以て来り覆うて 狗の歸るを待つ。
嗟哉 董生、誰を以てか與【とも】に儔【たぐ】へむ。
時の人、夫妻 相 虐【さいな】み 兄弟讎【あた】を爲す。
君の祿を食【は】み、而【しか】も 父母をして愁へしむ。
亦 濁り何の心ぞ、嗟哉 董生、與【とも】に儔【たぐ】へむもの無し。
現代語訳と訳註
(本文)#3
家有狗乳出求食,雞來哺其兒。
啄啄庭中拾蟲蟻,哺之不食鳴聲悲。
彷徨躑躅久不去,以翼來覆待狗歸。
嗟哉董生,誰將與儔?
時之人,夫妻相虐,兄弟爲讎。
食君之祿,而令父母愁。
亦獨何心,嗟哉董生,無與儔。
(下し文) #3
家に狗【いぬ】の乳する有り 出でて食を求む、鷄【にわとり】来って その児【こ】を哺【はぐく】まむとす。
啄啄【たくたく】として庭中に蟲蟻【ちゅうぎ】を拾ふ、之を哺【はぐく】ましめむとすれども食はず 鳴く聲悲し。
彷徨【ほうこう】し躑躅【てきちょく】して 久しく去らず、翼を以て来り覆うて 狗の歸るを待つ。
嗟哉 董生、誰を以てか與【とも】に儔【たぐ】へむ。
時の人、夫妻 相 虐【さいな】み 兄弟讎【あた】を爲す。
君の祿を食【は】み、而【しか】も 父母をして愁へしむ。
亦 濁り何の心ぞ、嗟哉 董生、與【とも】に儔【たぐ】へむもの無し。
(現代語訳)
家に仔犬をそだてる母犬がいた、その犬が子を生んで 餌をさがしに出る、すると鶏がやって来て 犬の子に食べさせようとする。
コツコツと庭の虫や蟻を拾ってきて、口移しで食べさせようとするのだが 食べないで悲しげに鳴いている。
鶏は行ったり来たりうろついて、行ってしまうこともしないでそこにいる。翼で小犬をだきかかえ 親犬の帰りを待った。
ああ 董くん、誰をきみにくらべることができようか。
世間の人というものは、夫婦が互いに苦しめ合い、兄弟同士でまるで仇のようになる。
天子からから俸禄をもらっている、そうしながら、父母を泣かせている連中がいる。
これはいったいどんな気持ちというのだろうか、ああ 董くん、きみのようなひとはいないのだ。
(訳注)
家有狗乳出求食,雞來哺其兒。
家に仔犬をそだてる母犬がいた、その犬が子を生んで 餌をさがしに出る、すると鶏がやって来て 犬の子に食べさせようとする。
○乳 乳をのませる。家有狗乳は、家に仔犬をそだてる母犬がいた。○哺 ロうつしに食物を与えること。
啄啄庭中拾蟲蟻,哺之不食鳴聲悲。
コツコツと庭の虫や蟻を拾ってきて、口移しで食べさせようとするのだが 食べないで悲しげに鳴いている。
○啄啄 ついばみついばむ。タクタクという字音が、こつこつついばむさまをたくみに表現している。陶侃に「山鷄啄蟲蟻」杜甫に「家人厭鷄食蟲蟻」の句がある。○鳴声悲 仔犬は腹がへって鳴く声が悲しそうだ。
彷徨躑躅久不去,以翼來覆待狗歸。
鶏は行ったり来たりうろついて、行ってしまうこともしないでそこにいる。翼で小犬をだきかかえ 親犬の帰りを待った。
○彷徨 うろつく。○躑躅 行きつもどりつする。
嗟哉董生,誰將與儔?
ああ 董くん、誰をきみにくらべることができようか。
時之人,夫妻相虐,兄弟爲讎。
世間の人というものは、夫婦が互いに苦しめ合い、兄弟同士でがまるで仇のようになる。
食君之祿,而令父母愁。
天子からから俸禄をもらっている、そうしながら、父母を泣かせている連中がいる。
亦獨何心,嗟哉董生,無與儔。
これはいったいどんな気持ちというのだろうか、ああ 董くん、きみのようなひとはいないのだ。
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