その芍薬は翠莖紅蕊、色彩の配合は、きわめて見事で、取りも直さず天から与えられた力が強いものであるが、しかし天からの恩というのは、絶えず音楽を演奏している富貴の家にだけ私して、この名花を属せしめるということはなく、風流で花を愛でる丈人であるからこそ、特にここに属させたのである。
544 韓昌黎集 巻五 《芍藥歌》韓愈(韓退之)ID index-1<1134> 韓愈 | kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞 fc2ブログ 5046 |
408 《芍藥歌》韓愈(韓退之)ID index-1<1134> 韓昌黎補遺、外集
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768年―799年 青年期・孟郊、張籍と交遊・汴州の乱に遭遇 41首
作年: 785年貞元元年18歲
卷別: 卷三四五 文體: 七言古詩
詩題: 芍藥歌
〔王司馬紅芍藥歌〕【案:見《外集》。】
芍藥歌
(庭に咲きほこる芍薬を見て、その感を詠う。)―#1
丈人庭中開好花,更無凡木爭春華。
年長者の王司馬の庭中には一種の好花が咲いている、ほかにも普通の平凡な花木が咲いてはいるが、春華を競うというほどの物ではなく、芍薬が庭の主役を独占している。
翠莖紅蕊天力與,此恩不屬黃鍾家。
その芍薬は翠莖紅蕊、色彩の配合は、きわめて見事で、取りも直さず天から与えられた力が強いものであるが、しかし天からの恩というのは、絶えず音楽を演奏している富貴の家にだけ私して、この名花を属せしめるということはなく、風流で花を愛でる丈人であるからこそ、特にここに属させたのである。
溫馨熟美鮮香起,似笑無言習君子。
芍薬の花の香りは新鮮で、成熟し、盛んであるし、その姿は、笑うがごとくでありながら凛として無言であり、全く君子をまねているようである。
霜刀翦汝天女勞,何事低頭學桃李。
天女は、霜刀でもって汝を剪り、やがて、天上界に携えて帰ろうと思っているのに、どうして汝は、首をうなだれて、桃李と同じように恥らうようなそぶりをするのだろうか。
#2
嬌痴婢子無靈性,競挽春衫來比並。
欲將雙頰一晞紅,綠窗磨遍青銅鏡。
一尊春酒甘若飴,丈人此樂無人知。
花前醉倒歌者誰,楚狂小子韓退之。
(芍藥の歌)
丈人 庭中 好花開く,更に凡木 春華を爭う無し。
翠莖 紅蕊 天力與う,此の恩 黃鍾の家に屬せず。
溫馨は熟美し 鮮香は起り,笑うに似て無言にして君子に習う。
霜刀 汝を翦って天女勞し,何事ぞ頭を低れて 桃李を學ぶ。
#2
嬌痴の婢子 靈性無く,競って春衫を挽いて來って比並す。
雙頰を將って一たび紅を晞【かわ】さんと欲し,綠窗 磨いて遍し 青銅鏡。
一尊の春酒 甘きこと飴の若し,丈人 此の樂み 人 知る無し。
花前 醉倒 歌う者は誰ぞ,楚狂 小子 韓退之。
『芍藥歌』 現代語訳と訳註
(本文)
芍藥歌
丈人庭中開好花,更無凡木爭春華。
翠莖紅蕊天力與,此恩不屬黃鍾家。
溫馨熟美鮮香起,似笑無言習君子。
霜刀翦汝天女勞,何事低頭學桃李。
(下し文)
(芍藥の歌)
丈人 庭中 好花開く,更に凡木 春華を爭う無し。
翠莖 紅蕊 天力與う,此の恩 黃鍾の家に屬せず。
溫馨は熟美し 鮮香は起り,笑うに似て無言にして君子に習う。
霜刀 汝を翦って天女勞し,何事ぞ頭を低れて 桃李を學ぶ。
(現代語訳)
(庭に咲きほこる芍薬を見て、その感を詠う。)―#1
年長者の王司馬の庭中には一種の好花が咲いている、ほかにも普通の平凡な花木が咲いてはいるが、春華を競うというほどの物ではなく、芍薬が庭の主役を独占している。
その芍薬は翠莖紅蕊、色彩の配合は、きわめて見事で、取りも直さず天から与えられた力が強いものであるが、しかし天からの恩というのは、絶えず音楽を演奏している富貴の家にだけ私して、この名花を属せしめるということはなく、風流で花を愛でる丈人であるからこそ、特にここに属させたのである。
芍薬の花の香りは新鮮で、成熟し、盛んであるし、その姿は、笑うがごとくでありながら凛として無言であり、全く君子をまねているようである。
天女は、霜刀でもって汝を剪り、やがて、天上界に携えて帰ろうと思っているのに、どうして汝は、首をうなだれて、桃李と同じように恥らうようなそぶりをするのだろうか。
(訳注)
芍藥歌
(庭に咲きほこる芍薬を見て、その感を詠う。)―#1
丈人庭中開好花,更無凡木爭春華。
年長者の王司馬の庭中には一種の好花が咲いている、ほかにも普通の平凡な花木が咲いてはいるが、春華を競うというほどの物ではなく、芍薬が庭の主役を独占している。
丈人 年長者の尊称。王司馬
凡木 普通の花木。ここは普通の桃李のこと。
翠莖紅蕊天力與,此恩不屬黃鍾家。
その芍薬は翠莖紅蕊、色彩の配合は、きわめて見事で、取りも直さず天から与えられた力が強いものであるが、しかし天からの恩というのは、絶えず音楽を演奏している富貴の家にだけ私して、この名花を属せしめるということはなく、風流で花を愛でる丈人であるからこそ、特にここに属させたのである。
黃鍾家 黃鍾は音律のことで、家に妓女、楽士を置いて絶えず音楽を演奏している富貴の家。
溫馨熟美鮮香起,似笑無言習君子。
芍薬の花の香りは新鮮で、成熟し、盛んであるし、その姿は、笑うがごとくでありながら凛として無言であり、全く君子をまねているようである。
溫馨熟美 芍薬の花の香りの盛んである様子をいう。
霜刀翦汝天女勞,何事低頭學桃李。
天女は、霜刀でもって汝を剪り、やがて、天上界に携えて帰ろうと思っているのに、どうして汝は、首をうなだれて、桃李と同じように恥らうようなそぶりをするのだろうか。
霜刀 刀の刃が霜のように白く鋭いこと。
芍藥歌
(庭に咲きほこる芍薬を見て、その感を詠う。)―#1
丈人庭中開好花,更無凡木爭春華。
年長者の王司馬の庭中には一種の好花が咲いている、ほかにも普通の平凡な花木が咲いてはいるが、春華を競うというほどの物ではなく、芍薬が庭の主役を独占している。
翠莖紅蕊天力與,此恩不屬黃鍾家。
その芍薬は翠莖紅蕊、色彩の配合は、きわめて見事で、取りも直さず天から与えられた力が強いものであるが、しかし天からの恩というのは、絶えず音楽を演奏している富貴の家にだけ私して、この名花を属せしめるということはなく、風流で花を愛でる丈人であるからこそ、特にここに属させたのである。
溫馨熟美鮮香起,似笑無言習君子。
芍薬の花の香りは新鮮で、成熟し、盛んであるし、その姿は、笑うがごとくでありながら凛として無言であり、全く君子をまねているようである。
霜刀翦汝天女勞,何事低頭學桃李。
天女は、霜刀でもって汝を剪り、やがて、天上界に携えて帰ろうと思っているのに、どうして汝は、首をうなだれて、桃李と同じように恥らうようなそぶりをするのだろうか。
#2
嬌痴婢子無靈性,競挽春衫來比並。
なまめかしくして痴態をおびている侍婢どもは、もとより、一点の霊性もないのに、依然として人間離れをしていないところから、競って紅の春衣を挽いてはなのいろにひかくしする。
欲將雙頰一晞紅,綠窗磨遍青銅鏡。
そうしてから、その花に両頬を頬ずりして、露に濡れたといって、その紅の痕を乾かそうとして、緑の窓辺に移動して行くと、そこには青銅の鏡が磨きをかけられて、光明瑩朗としている。
一尊春酒甘若飴,丈人此樂無人知。
一杯の大盃に春の新酒を灌げば、その甘きことは飴のようであり、留賞して日を送るのは、まことに愉快極まることであるが、丈人のこの楽しみをよく知っている人はいない。
花前醉倒歌者誰,楚狂小子韓退之。
この花の前に酔いつぶれて、歌を作って、いささか丈人のために気焔をあげるのは、誰かと云えば、論語に言う「楚狂接輿」に似ている小儒者の“韓退之”と申すのは私です。
(芍藥の歌)
丈人 庭中 好花開く,更に凡木 春華を爭う無し。
翠莖 紅蕊 天力與う,此の恩 黃鍾の家に屬せず。
溫馨は熟美し 鮮香は起り,笑うに似て無言にして君子に習う。
霜刀 汝を翦って天女勞し,何事ぞ頭を低れて 桃李を學ぶ。
#2
嬌痴の婢子 靈性無く,競って春衫を挽いて來って比並す。
雙頰を將って一たび紅を晞【かわ】さんと欲し,綠窗 磨いて遍し 青銅鏡。
一尊の春酒 甘きこと飴の若し,丈人 此の樂み 人 知る無し。
花前 醉倒 歌う者は誰ぞ,楚狂 小子 韓退之。
『芍藥歌』 現代語訳と訳註
(本文)#2
嬌痴婢子無靈性,競挽春衫來比並。
欲將雙頰一晞紅,綠窗磨遍青銅鏡。
一尊春酒甘若飴,丈人此樂無人知。
花前醉倒歌者誰,楚狂小子韓退之。
(含異文):
嬌痴婢子無靈性【嬌痴婢子無性靈】,競挽春衫來比並。
欲將雙頰一晞紅【欲將雙頰一稀紅】,綠窗磨遍青銅鏡。
一尊春酒甘若飴,丈人此樂無人知。
花前醉倒歌者誰,楚狂小子韓退之。
(下し文)
#2
嬌痴の婢子 靈性無く,競って春衫を挽いて來って比並す。
雙頰を將って一たび紅を晞【かわ】さんと欲し,綠窗 磨いて遍し 青銅鏡。
一尊の春酒 甘きこと飴の若し,丈人 此の樂み 人 知る無し。
花前 醉倒 歌う者は誰ぞ,楚狂 小子 韓退之。
(現代語訳)
なまめかしくして痴態をおびている侍婢どもは、もとより、一点の霊性もないのに、依然として人間離れをしていないところから、競って紅の春衣を挽いてはなのいろにひかくしする。
そうしてから、その花に両頬を頬ずりして、露に濡れたといって、その紅の痕を乾かそうとして、緑の窓辺に移動して行くと、そこには青銅の鏡が磨きをかけられて、光明瑩朗としている。
一杯の大盃に春の新酒を灌げば、その甘きことは飴のようであり、留賞して日を送るのは、まことに愉快極まることであるが、丈人のこの楽しみをよく知っている人はいない。
この花の前に酔いつぶれて、歌を作って、いささか丈人のために気焔をあげるのは、誰かと云えば、論語に言う「楚狂接輿」に似ている小儒者の“韓退之”と申すのは私です。
(訳注) #2
芍藥歌
(庭に咲きほこる芍薬を見て、その感を詠う。)―#2
丈人庭中開好花 更無凡木爭春華
翠莖紅蕊天力與 此恩不屬黃鍾家
溫馨熟美鮮香起 似笑無言習君子
霜刀翦汝天女勞 何事低頭學桃李
嬌痴婢子無靈性 競挽春衫來比並
欲將雙頰一晞紅 綠窗磨遍青銅鏡
一尊春酒甘若飴 丈人此樂無人知
花前醉倒歌者誰 楚狂小子韓退之
●○○△○●○ △○○●○○△
●○○●○●△ ●○△●○○○
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●△○●●○○ ●○△●○○●
●○○●○△○ ●○●●○○○
○○●●○●○ ●△●●○●○
嬌痴婢子無靈性,競挽春衫來比並。
なまめかしくして痴態をおびている侍婢どもは、もとより、一点の霊性もないのに、依然として人間離れをしていないところから、競って紅の春衣を挽いてはなのいろにひかくしする。
嬌痴 嫋やかにして痴態をおびている。
比並 比較する。
欲將雙頰一晞紅,綠窗磨遍青銅鏡。
そうしてから、その花に両頬を頬ずりして、露に濡れたといって、その紅の痕を乾かそうとして、緑の窓辺に移動して行くと、そこには青銅の鏡が磨きをかけられて、光明瑩朗としている。
一尊春酒甘若飴,丈人此樂無人知。
一杯の大盃に春の新酒を灌げば、その甘きことは飴のようであり、留賞して日を送るのは、まことに愉快極まることであるが、丈人のこの楽しみをよく知っている人はいない。
花前醉倒歌者誰,楚狂小子韓退之。
この花の前に酔いつぶれて、歌を作って、いささか丈人のために気焔をあげるのは、誰かと云えば、論語に言う「楚狂接輿」に似ている小儒者の“韓退之”と申すのは私です。
楚狂小子 楚狂:楚の国の狂人。小子:論語に「吾黨小子」とある。孔子の乗った輿に近づいた人、
『論語・微子』《楚狂接輿歌》
鳳兮,鳳兮! 何德之衰。
往者不可諫, 來者猶可追。
已而!已而! 今之從政者殆而。
(楚狂 接輿歌)
鳳や,鳳や, 何ぞ 德の衰へたる。
往く者は諫むべからず, 來る者は猶お 追うべし。
已【や】みなん! 已みなん! 今の 政に從ふ者は殆【あやふ】し。
楚狂接輿歌:
楚狂:楚の国の狂人。接輿:この歌の中心人物の名前になる。孔子の乗った輿(こし、かご、車、乗り物)に近づいた人、の意。 ・歌:『論語・卷九・微子第十八』に「楚狂接輿歌而過孔子曰:」とあって、やがてこの歌の「『鳳兮,鳳兮!何德之衰也。往者不可諫(也),來者猶可追(也)。已而,已而!今之從政者殆而。』」へと続く。その後は「孔子下,欲與之(楚狂を指す)言,趨而辟之(孔子を指す),不得與之(楚狂を指す)言。」となっている。孔子がこの歌は『莊子・人間世』「孔子適楚,楚狂接輿遊其門曰:「鳳兮!鳳兮!何如德之衰也!來世不可待,往世不可追也。天下有道,聖人成焉;天下無道,聖人生焉。方今之時,僅免刑焉。福輕乎羽,莫之知載;禍重乎地,莫之知避。已乎已乎,臨人以德!殆乎殆乎,畫地而趨!迷陽迷陽,無傷吾行!吾行郤曲,無傷吾足!」となっている。
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