582 唐宋八大家文読本 巻三 (§3) 《與少室李拾遺書》韓愈(韓退之) kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞 fc2ブログ 5236
- 2014/12/08
- 00:29
韓愈《與少室李拾遺書》§3 もし拾遺公が、仕えて政をすることができる時世に、ひとりで深山に隠れ、門をしっかりととざし、固く人のさそいをふせいで出ないのは、とりもなおさず、孔子のような仁義を行う者と守る道が違うのである。
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與少室李拾遺書
(1)§1
與少室李拾遺書
十二月某日,愈頓首:
伏承天恩,詔河南敦喻拾遺公,
朝廷之士,引頸東望,
若景星鳳凰之始見也,爭先睹之為快。
(嵩山(河南省)の少室山の李渤拾遺に与える書状。)
十二月某日、愈頓首して申す。
伏して承るに、天子のお恵み深く、河南府に詔を下されて、手厚く李拾遺公におさとしがあったということである。
朝廷の人々は、頚を伸ばして東を望んだのだ。
目出度い星や聖天子の世に出るという時に鳳皇がはじめて現れるたかのように、先を争って見るのを喜びとしている。
十二月某日,愈 頓首【とんしゅ】す:
伏して承る 天恩,河南に詔りして 敦く拾遺公に喻す,と。
朝廷の士,頸を引いて東望す,
景星 鳳凰の始めて見るが若きなり,先を爭いて 之を睹るを快と為す。
(2)§2-1
方今天子仁聖,小大之事,
皆出宰相,樂善言如,不得聞。
自即大位已來,於今四年,凡所施者,無不得宜。
勤儉之聲,寬大之政,幽閨婦女、草野小人,飽聞而厭道之。
愈不通於古,請問先生,世非太平之運歟?
ただ今、天子は仁愛であり極めて聡明にあらせられ、小大すべての事は、
皆宰相の考えに出て、善い言葉を楽しま れること、これを久しく聞かれなかったかのように熱心に耳を傾けられ、
それ故ご即位以来今まで四年、およそ施し行われたところの事は、宜しきを得ないものはなかった。
そして政に勤め倹約であるという評判と寛大に人ゆるす政治は、
奥深い座敷、閨の婦女も、草深い民間の被治者たちも、皆飽きるまで聞き、飽きるまでこれをいうのである。
私、韓愈は古代の事が十分に分からないので、どうか先生にお伺いしたいことは、世は太平の運ではないのか。
方に今、天子 仁聖なり,小大の事,皆 宰相に出づ,
善言を樂しむこと,聞くを得ざるが如し。
大位に即くより已來【いらい】,今に於いて四年,凡そ施す所の者,宜しく得ざる無し。
勤儉の聲,寬大の政,幽閨の婦女、草野の小人も,飽くまで聞いて 厭くまで之を道う。
愈 古に通ぜず,先生に請い問う,世 太平の運にら非ざるか?
(3)§2-2
加又有非人力而至者,年穀熟衍,符貺委至;
幹紀之奸,不戰而拘累;
強梁之凶,銷鑠縮栗,迎風而委伏。
其有一事未就正,自視若不成人。
四海之所環,無一夫甲而兵者。
若此時也,拾遺公不疾起與天下之士君子樂成而享之,斯無時矣。
又それに加えて、人の力でなくて、やって来るものがある。
年の田の稔りが熟しあまりがあり、瑞祥のたまものが重なり至り、
法を犯した謀反人、悪人が、戦わずして捕縛された。
強くて暴れる謀反人、悪人が、消滅し縮み恐れ、草が風を迎えるように随い伏す、というようなことがあり、
その一つの事でも正しくならなければ、在位の君子は自身を視ること、不完全な人間のようである。
四海の内、天下は、一人の男も鎧を着て武器を執る者がいない。
このような時に、拾遺公が速かに起ち上がって天下の士、君子と政道の完成を楽しんで、その幸せを身に受けなければ、その時がないであろう。
加うるに又た人力非らずして至る有者り,年穀【ねんこく】熟衍【じゅくえん】,符貺【ふきゅう】委至【いち】す。
紀を幹【おか】すの奸も,戰わずして拘累せらる。
強梁の凶も,銷鑠【しょうしゃく】縮栗も,風を迎えて委伏する。
其の一事未だ正に就かざる有れば,自ら視ること不成人の若し。
四海の環る所,一夫も甲して兵する者無し。
此くの若き時や,拾遺公 疾く起ちて與天下の士君子と成るを樂しんで之を享けずんば,斯れ時無からんや。
(4)§3
昔者孔子知不可為而為之不已,足跡接於諸侯之國。
むかし孔子は、道を行うことができないことを知りながら、これを行おうとしてやまず、その足あとは天下の諸侯の国々に続いていた。
今可為之時,自藏深山,
いま、拾遺公が、仕えて政をすることができる時世に、ひとりで深山に隠れ、
牢關而固距,即與仁義者異守矣。
門をしっかりととざし、固く人のさそいをふせいで出ないのは、とりもなおさず、孔子のような仁義を行う者と守る道が違うのである。
想拾遺公冠帶就車,惠然肯來,
想うに拾遺公が、冠をかぶり帯をしめて、礼服に身を正し、車に乗り、機嫌よく朝廷に来ることを承諾し、
抒所蓄積,以補綴盛德之有闕遺,
平素から心にたくわえ積んだ抱負をのべて、天子の立派な徳のとう闕けて手落ちのある所を補い綴るならば、
利加於時,名垂於將來,
その利益はその時世に加わり、その名誉は将来に伝わるであろう。
踴躍悚企,傾刻以冀。
躍り上がって心おそれ爪立ちしながら、暫くのうちに公の来られることをこいねがうのである。
昔は 孔子為す可からざるを知りて 之を為して已まず,足跡 諸侯の國に接す。
今 為す可きの時,自ら深山に藏る,
牢關して固く距ぐは,即ち仁義の者と守を異にす。
想うに拾遺公 冠帶して車に就き,惠然として肯て來る,
蓄積する所を抒べ,以って盛德の闕遺有るを補綴せば,
利 時に加わり,名 將來に垂れん,
踴躍して悚企し,傾刻以って冀【こいねが】う。
(5)§4
又竊聞朝廷之議,必起拾遺公。
使者往,若不許,即河南必繼以行;
拾遺征君若不至,必加高秩,如是則辭少就多,
傷於廉而害於義,拾遺公必不為也。
善人斯進其類,皆有望於拾遺公,
拾遺公儻不為起,是使眾善人不與斯人施也。
(6)§5
由拾遺公而使天子不盡得良臣,君子不盡得顯位,
人庶不盡被惠利,其害不為細。
必望審察而遠思之,務使合於孔子之道。
幸甚!愈再拜。
『與少室李拾遺書』 現代語訳と訳註解説
(本文)(4)§3
昔者孔子知不可為而為之不已,足跡接於諸侯之國。
今可為之時,自藏深山,
牢關而固距,即與仁義者異守矣。
想拾遺公冠帶就車,惠然肯來,
抒所蓄積,以補綴盛德之有闕遺,
利加於時,名垂於將來,
踴躍悚企,傾刻以冀。
(下し文) (4)§3
昔は 孔子為す可からざるを知りて 之を為して已まず,足跡 諸侯の國に接す。
今 為す可きの時,自ら深山に藏る,
牢關して固く距ぐは,即ち仁義の者と守を異にす。
想うに拾遺公 冠帶して車に就き,惠然として肯て來る,
蓄積する所を抒べ,以って盛德の闕遺有るを補綴せば,
利 時に加わり,名 將來に垂れん,
踴躍して悚企し,傾刻以って冀【こいねが】う。
(現代語訳)
むかし孔子は、道を行うことができないことを知りながら、これを行おうとしてやまず、その足あとは天下の諸侯の国々に続いていた。
もし拾遺公が、仕えて政をすることができる時世に、ひとりで深山に隠れ、
門をしっかりととざし、固く人のさそいをふせいで出ないのは、とりもなおさず、孔子のような仁義を行う者と守る道が違うのである。
想うに拾遺公が、冠をかぶり帯をしめて、礼服に身を正し、車に乗り、機嫌よく朝廷に来ることを承諾し、
平素から心にたくわえ積んだ抱負をのべて、天子の立派な徳のとう闕けて手落ちのある所を補い綴るならば、
その利益はその時世に加わり、その名誉は将来に伝わるであろう。
躍り上がって心おそれ爪立ちしながら、暫くのうちに公の来られることをこいねがうのである。
(訳注) (4)§3
與少室李拾遺書
(嵩山(河南省)の少室山の李渤拾遺に与える書状。)
○李渤 (773~831) 渤、字は濬之(しゅんし)、少室山に隠れて出ず。元和の初めに、右拾遺の官を以て徴されたが、辞して行かなかった。退之はこれに書を送って仕官を勧めたので、出て仕えた。両山に石室があるので大室山、少室山と名付けた。唐の穆宗(李恒)が即位すると、考功員外郎として召された。元和十五年(820)、宰相や大臣が凡庸で政治を誤らせていると上書したため、権臣たちに憎まれた。このため虔州刺史として出向させられた。長慶元年(821)、江州刺史に転じた。かれは「白鹿洞」で読書し、後世に拡張されて白鹿洞書院が建てられると、中国四大書院の筆頭に列せられた。
○拾遺 左右拾遺の官は、天子の遺漏したことを拾い諌める役。
昔者孔子知不可為而為之不已,足跡接於諸侯之國。
むかし孔子は、道を行うことができないことを知りながら、これを行おうとしてやまず、その足あとは天下の諸侯の国々に続いていた。
今可為之時,自藏深山,
いま、拾遺公が、仕えて政をすることができる時世に、ひとりで深山に隠れ、
牢關而固距,即與仁義者異守矣。
門をしっかりととざし、固く人のさそいをふせいで出ないのは、とりもなおさず、孔子のような仁義を行う者と守る道が違うのである。
○牢關 固く門のかんぬきをとざす。牢は固。
○固距 固くふせぐ。こばむ。
○守 守る道。
想拾遺公冠帶就車,惠然肯來,
想うに拾遺公が、冠をかぶり帯をしめて、礼服に身を正し、車に乗り、機嫌よく朝廷に来ることを承諾し、
○冠帯 衣冠束帯をつける。礼服を 着て出仕する。
○恵然 好意をあらわす。機嫌よく。
抒所蓄積,以補綴盛德之有闕遺,
平素から心にたくわえ積んだ抱負をのべて、天子の立派な徳のとう闕けて手落ちのある所を補い綴るならば、
○補綴 欠けている所をおぎないつづる。
利加於時,名垂於將來,
その利益はその時世に加わり、その名誉は将来に伝わるであろう。
踴躍悚企,傾刻以冀。
躍り上がって心おそれ爪立ちしながら、暫くのうちに公の来られることをこいねがうのである。
○悚企 心おそれ爪立ちする。
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