巻1 09 李太白集 《0109 古風五十九首之九》 李白kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞 fc2ブログ 5346
- 2014/12/30
- 00:26
心の富んでいて尊敬できる人というものは、このように位が高かったのにそれを捨てて、美味しい瓜を作るということで、甘い言葉に惑わされない人である。同じ瓜を売ってもあくせくして損得勘定だけの行動をするなんていかに愚かなことだろうか。
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9 巻一 古風,五十九首之九
製作年: 745年 天寶四年 45歲
卷別: 卷一六一 文體: 五言古詩
詩題: 古風,五十九首之九
古風,五十九首之九
(隠遁してまどわされないで生きてゆく)
莊周夢蝴蝶,蝴蝶為莊周。
荘周はあるとき自由に空を舞う蝴蝶になった夢をみた、さめてみるとその蝴蝶がまた荘周となって一体化していた。
一體更變易,萬事良悠悠。
万物は本来一体であるのであって、交互に姿をかえるということだけなのだ。万事はまことに、精神的な自由を求めて悠々自適な生活が理想の生き方をするということがよいことなのである
乃知蓬萊水,復作清淺流。
このことはすなわち、麻姑という女の仙人が言った蓬莱山を浮かべている東海の水が浅くなって砂塵を巻いたということは知っているが、また、それが斉物論によって泥が一体化することで清く浅い流れになろうとすることも理解できる。
青門種瓜人,舊日東陵侯。
隠遁した素晴らしい人は長安の青城門の郊外で五色の瓜を作った人である。昔は位の高い「東陵侯」という人であった。
富貴故如此,營營何所求。
心の富んでいて尊敬できる人というものは、このように位が高かったのにそれを捨てて、美味しい瓜を作るということで、甘い言葉に惑わされない人である。同じ瓜を売ってもあくせくして損得勘定だけの行動をするなんていかに愚かなことだろうか。
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(古風,五十九首の九)
荘周胡蝶を夢み、、胡蝶は荘周となる。
一体たがひに変易し、万事まことに悠悠たり。
すなはち知る蓬莱の水の、また清浅の流れとなるを。
青門に瓜を種うるの人は、旧日の東陵侯なり。
富貴はもとよりかくのごとし、営々なんの求むるところぞ。
『古風,五十九首之九』 現代語訳と訳註
(本文)
莊周夢蝴蝶,蝴蝶為莊周。
一體更變易,萬事良悠悠。
乃知蓬萊水,復作清淺流。
青門種瓜人,舊日東陵侯。
富貴故如此,營營何所求。
(下し文)
荘周胡蝶を夢み、、胡蝶は荘周となる。
一体たがひに変易し、万事まことに悠悠たり。
すなはち知る蓬莱の水の、また清浅の流れとなるを。
青門に瓜を種うるの人は、旧日の東陵侯なり。
富貴はもとよりかくのごとし、営々なんの求むるところぞ。
(現代語訳)
(隠遁してまどわされないで生きてゆく)
荘周はあるとき自由に空を舞う蝴蝶になった夢をみた、さめてみるとその蝴蝶がまた荘周となって一体化していた。
万物は本来一体であるのであって、交互に姿をかえるということだけなのだ。万事はまことに、精神的な自由を求めて悠々自適な生活が理想の生き方をするということがよいことなのである
このことはすなわち、麻姑という女の仙人が言った蓬莱山を浮かべている東海の水が浅くなって砂塵を巻いたということは知っているが、また、それが斉物論によって泥が一体化することで清く浅い流れになろうとすることも理解できる。
隠遁した素晴らしい人は長安の青城門の郊外で五色の瓜を作った人である。昔は位の高い「東陵侯」という人であった。
心の富んでいて尊敬できる人というものは、このように位が高かったのにそれを捨てて、美味しい瓜を作るということで、甘い言葉に惑わされない人である。同じ瓜を売ってもあくせくして損得勘定だけの行動をするなんていかに愚かなことだろうか。
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(訳注)
古風,五十九首之九
古風とは古体の詩というほどのことで、漢魏の間に完成した五言古詩の継承を目指すものである。諸篇は一時の作でなく、折にふれて作られた無題の詩を後から編集し、李白の生き方を述べたものである。
莊周夢蝴蝶,蝴蝶為庄周。
荘周はあるとき自由に空を舞う蝴蝶になった夢をみた、さめてみるとその蝴蝶がまた荘周となって一体化していた。
○荘周 紀元前四世紀の人。いまの河南省に生れた。哲学者。「荘子」の著者。○夢蝴蝶 「荘子」の「斉物論」篇に見える話。あるとき荘周が夢のなかで蝴蝶になった。ひらひらと空を舞う蝴蝶。かれはすっかりいい気持になり、自分が荘周であることをわすれてしまった。ところが、ふと目がさめてみると、まぎれもなく、荘周にかえっている。かれは考えた。荘周が夢をみて蝴蝶となったのか、それとも、蝴蝶が夢をみて荘周になっているのだろうか。荘周と蝴蝶とは、はっきりと区別される。すると、これは「物の変化」ということであろうか。つまり、荘子は、人間と蝴蝶、夢と現実を区別する常識的な分別を問題にせず、渾沌とした世界の中で自由にたのしむことをよしと考えたのである。
荘周 「夢蝴蝶」 昔者荘周夢為胡蝶。栩栩然胡蝶也。
自喩適志与。不知周也。
俄然覚、則蘧蘧然周也。
不知、周之夢為胡蝶与、胡蝶之夢為周与。
周与胡蝶、則必有分矣。
此之謂物化。
(蝴蝶を夢む) 昔者荘周夢に胡蝶と為る。栩栩然として胡蝶なり。 自ら喩しみて志に適えるかな。周たるを知らざるなり。俄然として覚むれば、則ち蘧々然として周なり。 知らず、周の夢に胡蝶と為れるか、胡蝶の夢に周と為れるかを。 周と胡蝶とは、則ち必ず分有らん。此を之れ物化と謂う。
以前のこと、わたし荘周は夢の中で胡蝶となった。喜々として胡蝶になりきっていた。 自分でも楽しくて心ゆくばかりにひらひらと舞っていた。荘周であることは全く念頭になかった。はっと目が覚めると、これはしたり、荘周ではないか。ところで、荘周である私が夢の中で胡蝶となったのか、自分は実は胡蝶であって、いま夢を見て荘周となっているのか、いずれが本当か私にはわからない。 荘周と胡蝶とには確かに、形の上では区別があるはずだ。しかし主体としての自分には変わりは無く、これが物の変化というものである。
一體更變易,萬事良悠悠。
万物は本来一体であるのであって、交互に姿をかえるということだけなのだ。万事はまことに、精神的な自由を求めて悠々自適な生活が理想の生き方をするということがよいことなのである
〇一体更変易 万物は本来一つであるということを明らかにするのが、荘子の斉物論である。世の中のあらゆる現象は、もともと一体であるものが、いろいろに姿をかえているのである。斉物論とは、中国古代の哲学書《荘子》の篇名。また荘子の哲学の中核をなす論である。現実世界の根源にあってそれを支えている〈道〉の絶対性のもとでは,現実世界における万物の多様性や価値観の相違などのあらゆる差別相が止揚されて意味をもたなくなること,したがって道の在り方に目覚め道と一体となることによって,個が個としての価値を完全に回復し,何ものにもとらわれない境地に到達できるという論をいう。
○悠悠 無限に運動するさまをいうが、この語も荘子の斉物論てきひょうげんである。精神的な自由を求めて悠々自適な生活が理想の生き方をするというもの。伝統的な儒教の考えでは、『周易正義』が引く『易緯乾鑿度』の「易は一名にして三義を含む」という「変易」「不易」「簡易」道教的には陰陽一体ということになる。
乃知蓬萊水,復作清淺流。
このことはすなわち、麻姑という女の仙人が言った蓬莱山を浮かべている東海の水が浅くなって砂塵を巻いたということは知っているが、また、それが斉物論によって泥が一体化することで清く浅い流れになろうとすることも理解できる。
○蓬莱水 蓬莱というのは、東海の中にあるといわれる仙人の島。麻姑という女の仙人が言った。「東の海が三遍干上って桑畑にかわったのを見たが、先ごろ蓬莱島に行ってみると、水が以前の半分の浅さになってしまっている。またもや陸地になるのだろうか。」王遠という者が嘆いて言った。「聖人はみな言っている、海の中もゆくゆくは砂塵をまきあげるのだと。」『神仙伝・巻二』「王遠」・巻七「麻姑」「麻姑謂王方平曰:自接侍以來、見東海三變爲桑田、向到蓬莱、水乃淺於往者、(略) 半也、豈復爲陵陸乎。方平乃曰:東海行復揚塵耳。」麻姑は語った。「お目に掛かりましてより、早くも東海が三たび桑田に変ずるのをこの目で見ました。先ごろ蓬莱に参りましたが、これまた水は昔の大海の時よりも、ほぼ半分ほどに浅くなっていました。やがては陸地になってしまうことでしょう」と。王遠も嘆息して言った。「海中にも土埃が立つとか、聖人も仰せられた」と。
青門種瓜人。 舊日東陵侯。
隠遁した素晴らしい人は長安の青城門の郊外で五色の瓜を作った人である。昔は位の高い「東陵侯」という人であった。
○青門 長安城の東がわ、南から数えた第一の門を新開門という。青い色であったから通称を青城門、または青門といった。下図 曲江の東にある門安城の図 東南側は陵墓と瓜畑が広がっていた。
○種瓜人 広陵の人、青門の瓜売りは五色の瓜を杜陵につくっていたこと、官を辞して瓜をたくさん栽培したことをいう。泰の東陵侯に封じられていた卲平は秦が滅びると布衣(庶民)の身となり、長安の門の東で瓜を栽培し、それが美味だったので「東陵の瓜」と称された。
卲平 東陵の瓜は五色であったことは次に示す。
「曰:邵平故秦東陵侯,秦滅後,為布衣,種瓜長安城東。種瓜有五色,甚美,故世謂之東陵瓜,又云青門瓜」。魏・阮籍も卲平の東陵の瓜は五色をふまえて「詠懐詩」(『文選』巻二三)其六に「昔聞く東陵の瓜、近く青門の外に在りと。……五色 朝日に輝き、嘉賓 四面に会す」とする。
陶淵明『飮酒二十首 其一』
衰榮無定在, 彼此更共之。
邵生瓜田中, 寧似東陵時。
寒暑有代謝, 人道毎如茲。
達人解其會, 逝將不復疑。
忽與一觴酒, 日夕歡相持。
(飮酒二十首 其の一)
衰榮 定在 無く, 彼此 更【こもご】も 之【これ】を 共にす。
邵生 瓜田の中は, 寧【いづく】んぞ 東陵の時に 似んや。
寒暑 代謝 有り, 人道 毎【つね】に茲【か】くの如し。
達人 其の會を 解して, 逝【ここ】に將に 復た 疑はざらん。
忽として 一觴の酒と 與にし,日夕に 歡びて相ひ持す。
孟浩然『南山下與老圃期種瓜』
樵牧南山近,林閭北郭賒。
先人留素業,老圃作鄰家。
不種千株橘,惟資五色瓜。
邵平能就我,開徑剪蓬麻。
南の山の下で老圃に瓜を種える期。
樵牧 南山に近く、林閭 北郭に賒(とお)し。
先人 富農を留め、老圃 鄰家と作(な)る。
千株の橘を種えず、惟だ 五色の瓜を資(と)る。
邵平 能く我に就きて、径を開き 蓬麻を剪るか。
南山下與老圃期種瓜 孟浩然 李白「峴山懐古」関連 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -317
富貴故如此。 營營何所求。
心の富んでいて尊敬できる人というものは、このように位が高かったのにそれを捨てて、美味しい瓜を作るということで、甘い言葉に惑わされない人である。同じ瓜を売ってもあくせくして損得勘定だけの行動をするなんていかに愚かなことだろうか。
○富貴 ふうき 富んでいて尊いこと。富んでいて尊敬できる人。

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