巻1 20 李太白集 《0120 古風五十九首之二十》 李白kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞 fc2ブログ 5401
- 2015/01/15
- 22:54
(仙郷に遊ぶことを詠じている。はじめ赤松に遭遇して愈々仙術を修行することとなり、それから親友に別れて、遠く立ち去る時の感慨を述べたものである。)私が昔、斉都の濟南に遊び、城外のそんなにとおくないところにある華山の華不注峰に登った。
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Index-23Ⅲ-1 744年天寶三年44歳365古風,五十九首之二十昔我遊齊都,
製作年: 744年 天寶三年 44歲
卷別: 卷一六一 文體: 五言古詩
詩題: 古風,五十九首之二十
及地點: 臨淄 (河南道 青州 臨淄) 別名:齊都
華不注山 (河南道 齊州 華不注山) 別名:華不注峰
古風,五十九首之二十 #1
(仙郷に遊ぶことを詠じている。はじめ赤松に遭遇して愈々仙術を修行することとなり、それから親友に別れて、遠く立ち去る時の感慨を述べたものである。)
昔我遊齊都,登華不注峰。
私が昔、斉都の濟南に遊び、城外のそんなにとおくないところにある華山の華不注峰に登った。
茲山何峻秀,綠翠如芙蓉。
この山は、平原の上に屈起し、山勢峻にして秀逸であり、草木がこれを蔽って、緑の色の艶々しいことは、さながら芙蓉の花の匂いにおなじである。
蕭颯古仙人,了知是赤松。
やがて山頂に登りついてみると道風蕭颯たる一人の老人に出会ったが問わずして名だたる赤松子であることがわかった。
借予一白鹿,自挾兩青龍。
赤松子は自ら二つの青竜を挟んでその上にまたがり、そして、私に一頭の白鹿を貸してこれに乗れと言った。
含笑凌倒景,欣然願相從。
それで子の白鹿に乗って、欣然として笑いを含み、日月を投影を眼底に見下ろされつつ、赤松子に随って愈々天に昇ることになった。
#2
泣與親友別,欲語再三咽。
勗君青松心,努力保霜雪。
世路多險艱,白日欺紅顏。
分手各千里,去去何時還。
在世復幾時,倏如飄風度。
#3
空聞紫金經,白首愁相誤。
撫己忽自笑,沈吟為誰故。
名利徒煎熬,安得閒余步。
終留赤玉舄,東上蓬萊路。
秦帝如我求,蒼蒼但煙霧。
古風,五十九首の二十
昔 我 齊都に遊び,華 不注の峰に登る。
茲の山 何ぞ峻秀,綠翠 芙蓉の如し。
蕭颯たる 古仙人,了に知る是れ赤松なるを。
予に一の白鹿を借し,自ら兩の青龍を挾む。
笑を含んで倒景を凌ぎ,欣然として相い從わんことを願う。
泣いて親友と別れ,語らんと欲して再三 咽ぶ。
君が青松の心を勗め,努力して霜雪を保てよ。
世路 險艱多く,白日 紅顏を欺く。
分手をてば各の千里,去去 何れの時か還らん。
世に在り 復た幾時ぞ,倏として 飄風の度るが如し。
空しく聞く 紫金經を,白首 相い誤るを愁う。
己を撫して忽ち自ら笑う,沈吟 誰が為めの故ぞ。
名利 徒らに煎熬【せんごう】,安んぞ余が步みを閒にするを得ん。
終に赤玉の舄【くつ】を留め,東 蓬萊の路に上る。
秦帝 如し我を求めなば,蒼蒼として但だ煙霧のみ。
『古風,五十九首之二十』 現代語訳と訳註
(本文)
古風,五十九首之二十
昔我遊齊都,登華不注峰。
茲山何峻秀,綠翠如芙蓉。
蕭颯古仙人,了知是赤松。
借予一白鹿,自挾兩青龍。
含笑凌倒景,欣然願相從。
(下し文)
古風,五十九首の二十
昔 我 齊都に遊び,華 不注の峰に登る。
茲の山 何ぞ峻秀,綠翠 芙蓉の如し。
蕭颯たる 古仙人,了に知る是れ赤松なるを。
予に一の白鹿を借し,自ら兩の青龍を挾む。
笑を含んで倒景を凌ぎ,欣然として相い從わんことを願う。
(現代語訳)
(仙郷に遊ぶことを詠じている。はじめ赤松に遭遇して愈々仙術を修行することとなり、それから親友に別れて、遠く立ち去る時の感慨を述べたものである。)
私が昔、斉都の濟南に遊び、城外のそんなにとおくないところにある華山の華不注峰に登った。
この山は、平原の上に屈起し、山勢峻にして秀逸であり、草木がこれを蔽って、緑の色の艶々しいことは、さながら芙蓉の花の匂いにおなじである。
やがて山頂に登りついてみると道風蕭颯たる一人の老人に出会ったが問わずして名だたる赤松子であることがわかった。
赤松子は自ら二つの青竜を挟んでその上にまたがり、そして、私に一頭の白鹿を貸してこれに乗れと言った。
それで子の白鹿に乗って、欣然として笑いを含み、日月を投影を眼底に見下ろされつつ、赤松子に随って愈々天に昇ることになった。
(訳注)
古風,五十九首之二十
(仙郷に遊ぶことを詠じている。はじめ赤松に遭遇して愈々仙術を修行することとなり、それから親友に別れて、遠く立ち去る時の感慨を述べたものである。)
昔我遊齊都,登華不注峰。
私が昔、斉都の濟南に遊び、城外のそんなにとおくないところにある華山の華不注峰に登った。
○齊都 済南市は中華人民共和国山東省に位置する副省級市。山東省の西部に位置し、省都として省内の通商、政治、文化の中心としての地位を占める。市中を黄河が流れ、南には泰山が控えている。人口のほとんどは漢族であるが、満族や回族なども居住している。 言語は北京語に近いが声調がひどく訛る山東方言がある。740年、孔巣父ら5人の道士と徂徠山(現山東省)に集まり、「竹渓六逸」と呼ばれることもあった。
○華不注峰 中国五岳の一。陝西(せんせい)省の南,秦嶺(しんれい)山脈の東端にある名山。海抜1997メートル。双峰が突き出した険しい山が「華不注山」、頂上の丸いのが「鵲山」である。陝西省華陰県,秦嶺東部の山。黄土高原を南流してきた黄河が東方へ90度転換,渭河と合流する地域にある。東岳泰山,中岳嵩山(すうざん)などとならび中国五岳の一つで,西岳,小秦嶺ともいう。東,西,南,北,中の5峰をはじめ,花コウ岩を主とする山峰が発達した断層山地で,最高は南峰落雁峰の1997m。〈華山は天下の雄たり〉の称がある。山中には寺観が大小30余あり,道教の山となってきた。【
茲山何峻秀,綠翠如芙蓉。
この山は、平原の上に屈起し、山勢峻にして秀逸であり、草木がこれを蔽って、緑の色の艶々しいことは、さながら芙蓉の花の匂いにおなじである。
蕭颯古仙人,了知是赤松。
やがて山頂に登りついてみると道風蕭颯たる一人の老人に出会ったが問わずして名だたる赤松子であることがわかった。
○赤松 赤松子:神農のころの雨師(雨の神)水玉(水精。水晶)を服用し、それを神農にも教えた。 自焼することで火によって尸解したという。西王母の石室に宿り風雨とともに山を上り下りした。 炎帝(神農)の末娘が赤松子を追ってきて仙人になり、二人とも姿を消した。黄帝の曾孫の高辛氏の時代に再び雨師になった。
借予一白鹿,自挾兩青龍。
赤松子は自ら二つの青竜を挟んでその上にまたがり、そして、私に一頭の白鹿を貸してこれに乗れと言った。
〇白鹿 仙人ののるもの。
○青竜 伝説上の神獣、四神(四象)の1つ。東方青竜。蒼竜(そうりゅう)ともいう。福建省では青虎(せいこ)に置き換わっている。「青」の原義は緑色植物の色であり、本来は緑色をしているとされる。東方を守護する。長い舌を出した竜の形とされる。青は五行説では東方の色とされる。また、青竜の季節は春とされている。天文学上は、二十八宿の東方七宿に対応する。東方七宿(角宿・亢宿・氐宿・房宿・心宿・尾宿・箕宿)をつなげて竜の姿に見立てたことに由来する。
道教における人格神化した名前では、東海青龍王敖広と呼ばれる。清瀧権現の善女龍王は中国・青龍寺に飛来したという。
杜甫『寄張十二山人彪三十韻』
時來故舊少,亂後別離頻。世祖修高廟,文公賞從臣。
商山猶入楚,渭水不離秦。存想青龍秘,騎行白鹿馴。
耕岩非穀口,結草即河濱。
時来たって故旧少なく 乱後別離頻りなり
世祖高廟を修む 文公従臣を賞す
商山猶お楚にガる 洞水秦を離れず
想いを存す青竜の秘なるに 騎行す白鹿の馴るるに
巌に耕すは谷口に非ず 草を結ぶは即ち河浜
四皓の隠れた商山、太公望の釣りを垂れた渭水、みな我が唐に帰した。あなたの隠居の地は回復されている。
道家としての想いは青竜が斎室を守るという道教の秘密を知っており、君はまさに馴れたる白鹿にのってあるくのである。
あなたが漢の鄭子真のように巌石のもとに退耕しようとする場所は長安ちかくの谷口ではない、君が草を結んで庵をつくろうとする処は「神仙伝」にいう河上公の洛陽に遠からざる黄河のほとりであるであろう。
寄張十二山人彪三十韻 杜甫 <318-#4> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1484 杜甫詩 700- 459
含笑凌倒景,欣然願相從。
それで子の白鹿に乗って、欣然として笑いを含み、日月を投影を眼底に見下ろされつつ、赤松子に随って愈々天に昇ることになった。

古風,五十九首之二十 #1
(仙郷に遊ぶことを詠じている。はじめ赤松に遭遇して愈々仙術を修行することとなり、それから親友に別れて、遠く立ち去る時の感慨を述べたものである。)
昔我遊齊都,登華不注峰。
私が昔、斉都の濟南に遊び、城外のそんなにとおくないところにある華山の華不注峰に登った。
茲山何峻秀,綠翠如芙蓉。
この山は、平原の上に屈起し、山勢峻にして秀逸であり、草木がこれを蔽って、緑の色の艶々しいことは、さながら芙蓉の花の匂いにおなじである。
蕭颯古仙人,了知是赤松。
やがて山頂に登りついてみると道風蕭颯たる一人の老人に出会ったが問わずして名だたる赤松子であることがわかった。
借予一白鹿,自挾兩青龍。
赤松子は自ら二つの青竜を挟んでその上にまたがり、そして、私に一頭の白鹿を貸してこれに乗れと言った。
含笑凌倒景,欣然願相從。
それで子の白鹿に乗って、欣然として笑いを含み、日月を投影を眼底に見下ろされつつ、赤松子に随って愈々天に昇ることになった。
#2
泣與親友別,欲語再三咽。
かくして一たび天にしまえばいつ帰るともわからないから、暫時 暇を盗んで、親友に暇乞いをしてから、これと語り合おうとすれば、再三涙にむせび、言葉も出ないのである。
勗君青松心,努力保霜雪。
そうしていうには、君はつとめて堅強なる心を保有し、かの丘に生える松が霜と雪にたゆまぬように努力して養生することがよいのである。
世路多險艱,白日欺紅顏。
顧みれば、この世には険艱多く、しかも、白日は流れるように立ち去ってしまい、紅顔は決して長く存せず、やがて、白髪頭の老人になってしまうから、せいぜい衰病せぬようにすることが肝要である。
分手各千里,去去何時還。
ここは君と手を分かてば各々千里隔たれていて、我は一たびここをされば、いつ帰って来るかわからない、御大事にといって親友と別れたのである。
在世復幾時,倏如飄風度。
さて考えてみれば、人がこの世にいるのは、幾ばくの間であろうか、そのこつぜんとして去ることはあたかも旋風が吹きわたると同じである。
空聞紫金經,白首愁相誤。
撫己忽自笑,沈吟為誰故。
名利徒煎熬,安得閒余步。
終留赤玉舄,東上蓬萊路。
秦帝如我求,蒼蒼但煙霧。
古風,五十九首の二十
昔 我 齊都に遊び,華 不注の峰に登る。
茲の山 何ぞ峻秀,綠翠 芙蓉の如し。
蕭颯たる 古仙人,了に知る是れ赤松なるを。
予に一の白鹿を借し,自ら兩の青龍を挾む。
笑を含んで倒景を凌ぎ,欣然として相い從わんことを願う。
泣いて親友と別れ,語らんと欲して再三 咽ぶ。
君が青松の心を勗め,努力して霜雪を保てよ。
世路 險艱多く,白日 紅顏を欺く。
分手をてば各の千里,去去 何れの時か還らん。
世に在り 復た幾時ぞ,倏として 飄風の度るが如し。
空しく聞く 紫金經を,白首 相い誤るを愁う。
己を撫して忽ち自ら笑う,沈吟 誰が為めの故ぞ。
名利 徒らに煎熬【せんごう】,安んぞ余が步みを閒にするを得ん。
終に赤玉の舄【くつ】を留め,東 蓬萊の路に上る。
秦帝 如し我を求めなば,蒼蒼として但だ煙霧のみ。
『古風,五十九首之二十』 現代語訳と訳註
(本文) #2
泣與親友別,欲語再三咽。
勗君青松心,努力保霜雪。
世路多險艱,白日欺紅顏。
分手各千里,去去何時還。
在世復幾時,倏如飄風度。
(下し文)
泣いて親友と別れ,語らんと欲して再三 咽ぶ。
君が青松の心を勗め,努力して霜雪を保てよ。
世路 險艱多く,白日 紅顏を欺く。
分手をてば各の千里,去去 何れの時か還らん。
世に在り 復た幾時ぞ,倏として 飄風の度るが如し。
(現代語訳)
かくして一たび天にしまえばいつ帰るともわからないから、暫時 暇を盗んで、親友に暇乞いをしてから、これと語り合おうとすれば、再三涙にむせび、言葉も出ないのである。
そうしていうには、君はつとめて堅強なる心を保有し、かの丘に生える松が霜と雪にたゆまぬように努力して養生することがよいのである。
顧みれば、この世には険艱多く、しかも、白日は流れるように立ち去ってしまい、紅顔は決して長く存せず、やがて、白髪頭の老人になってしまうから、せいぜい衰病せぬようにすることが肝要である。
ここは君と手を分かてば各々千里隔たれていて、我は一たびここをされば、いつ帰って来るかわからない、御大事にといって親友と別れたのである。
さて考えてみれば、人がこの世にいるのは、幾ばくの間であろうか、そのこつぜんとして去ることはあたかも旋風が吹きわたると同じである。
(訳注)
古風,五十九首之二十
古風とは古体の詩というほどのことで、漢魏の間に完成した五言古詩の継承を目指すものである。諸篇は一時の作でなく、折にふれて作られた無題の詩を後から編集し、李白の生き方を述べたものである。
(仙郷に遊ぶことを詠じている。はじめ赤松に遭遇して愈々仙術を修行することとなり、それから親友に別れて、遠く立ち去る時の感慨を述べたものである。)
泣與親友別,欲語再三咽。
かくして一たび天にしまえばいつ帰るともわからないから、暫時 暇を盗んで、親友に暇乞いをしてから、これと語り合おうとすれば、再三涙にむせび、言葉も出ないのである。
勗君青松心,努力保霜雪。
そうしていうには、君はつとめて堅強なる心を保有し、かの丘に生える松が霜と雪にたゆまぬように努力して養生することがよいのである。
世路多險艱,白日欺紅顏。
顧みれば、この世には険艱多く、しかも、白日は流れるように立ち去ってしまい、紅顔は決して長く存せず、やがて、白髪頭の老人になってしまうから、せいぜい衰病せぬようにすることが肝要である。
分手各千里,去去何時還。
ここは君と手を分かてば各々千里隔たれていて、我は一たびここをされば、いつ帰って来るかわからない、御大事にといって親友と別れたのである。
在世復幾時,倏如飄風度。
さて考えてみれば、人がこの世にいるのは、幾ばくの間であろうか、そのこつぜんとして去ることはあたかも旋風が吹きわたると同じである。
○飄風 急に激しく吹く風。つむじかぜ。はやて。《「老子」23章から》「故飄風不終朝 驟雨不終日」飄風は朝を終えず驟雨は日を終えず。
つむじ風が朝の間じゅう吹きつづけることはないし、にわか雨が一日じゅう降りつづけることもない。不自然な出来事は長くは続かないというたとえ。
古風,五十九首之二十 #1
(仙郷に遊ぶことを詠じている。はじめ赤松に遭遇して愈々仙術を修行することとなり、それから親友に別れて、遠く立ち去る時の感慨を述べたものである。)
昔我遊齊都,登華不注峰。
私が昔、斉都の濟南に遊び、城外のそんなにとおくないところにある華山の華不注峰に登った。
茲山何峻秀,綠翠如芙蓉。
この山は、平原の上に屈起し、山勢峻にして秀逸であり、草木がこれを蔽って、緑の色の艶々しいことは、さながら芙蓉の花の匂いにおなじである。
蕭颯古仙人,了知是赤松。
やがて山頂に登りついてみると道風蕭颯たる一人の老人に出会ったが問わずして名だたる赤松子であることがわかった。
借予一白鹿,自挾兩青龍。
赤松子は自ら二つの青竜を挟んでその上にまたがり、そして、私に一頭の白鹿を貸してこれに乗れと言った。
含笑凌倒景,欣然願相從。
それで子の白鹿に乗って、欣然として笑いを含み、日月を投影を眼底に見下ろされつつ、赤松子に随って愈々天に昇ることになった。
#2
泣與親友別,欲語再三咽。
かくして一たび天にしまえばいつ帰るともわからないから、暫時 暇を盗んで、親友に暇乞いをしてから、これと語り合おうとすれば、再三涙にむせび、言葉も出ないのである。
勗君青松心,努力保霜雪。
そうしていうには、君はつとめて堅強なる心を保有し、かの丘に生える松が霜と雪にたゆまぬように努力して養生することがよいのである。
世路多險艱,白日欺紅顏。
顧みれば、この世には険艱多く、しかも、白日は流れるように立ち去ってしまい、紅顔は決して長く存せず、やがて、白髪頭の老人になってしまうから、せいぜい衰病せぬようにすることが肝要である。
分手各千里,去去何時還。
在ここは君と手を分かてば各々千里隔たれていて、我は一たびここをされば、いつ帰って来るかわからない、御大事にといって親友と別れたのである。
世復幾時,倏如飄風度。
さて考えてみれば、人がこの世にいるのは、幾ばくの間であろうか、そのこつぜんとして去ることはあたかも旋風が吹きわたると同じである。
空聞紫金經,白首愁相誤。
折角、金丹の練り方の秘訣を聞いたところで、老人になるまで、世事に妨げられて仙道の修行ができず、空しく相い間違うようなことになれば、また再び会うこともできない。
撫己忽自笑,沈吟為誰故。
このように思い悩んでから、忽然として大悟し、そこで自ら大笑いして言うには、いましも沈吟して別れを惜しむは、畢竟、「誰がためにするのか、まったく人間離れをするものではない」という。
名利徒煎熬,安得閒余步。
このような愚痴な了見も出るので、世間におれば、名利のために煮られたり、炒られたりして終始忙しく駆け回らねばならない。どうして私が足並みを静かにしようかと、そんなことは少しも自分に役がない。
終留赤玉舄,東上蓬萊路。
遠游に出かけて翻然高挙、かの赤松子に随って、ゆっくりと仙術の修行をなそうと思うので、かの安期生が赤玉の靴を留めて、遙かに東、蓬莱山にいったとおなじく、わたしもまた遺跡を人間に留めたまま立ち去ろうとするのである。
秦帝如我求,蒼蒼但煙霧。
安期生は、一度去った後「秦の始皇帝が使者を遣わして、いくら尋ねてもわからず、東海は蒼蒼として、ただ煙霧の立ち込めるのに任せ、何処にいるか知る由もなかった」と同じく、私としても、この世を辞せし後は、たとえ帝王が捜されたとしても見つかるはずもなく区々たる親友の交誼など特に問うまでもないことなのである。
古風,五十九首の二十
昔 我 齊都に遊び,華 不注の峰に登る。
茲の山 何ぞ峻秀,綠翠 芙蓉の如し。
蕭颯たる 古仙人,了に知る是れ赤松なるを。
予に一の白鹿を借し,自ら兩の青龍を挾む。
笑を含んで倒景を凌ぎ,欣然として相い從わんことを願う。
泣いて親友と別れ,語らんと欲して再三 咽ぶ。
君が青松の心を勗め,努力して霜雪を保てよ。
世路 險艱多く,白日 紅顏を欺く。
分手をてば各の千里,去去 何れの時か還らん。
世に在り 復た幾時ぞ,倏として 飄風の度るが如し。
空しく聞く 紫金經を,白首 相い誤るを愁う。
己を撫して忽ち自ら笑う,沈吟 誰が為めの故ぞ。
名利 徒らに煎熬【せんごう】,安んぞ余が步みを閒にするを得ん。
終に赤玉の舄【くつ】を留め,東 蓬萊の路に上る。
秦帝 如し我を求めなば,蒼蒼として但だ煙霧のみ。
『古風,五十九首之二十』 現代語訳と訳註
(本文)
(下し文)
空しく聞く 紫金經を,白首 相い誤るを愁う。
己を撫して忽ち自ら笑う,沈吟 誰が為めの故ぞ。
名利 徒らに煎熬【せんごう】,安んぞ余が步みを閒にするを得ん。
終に赤玉の舄【くつ】を留め,東 蓬萊の路に上る。
秦帝 如し我を求めなば,蒼蒼として但だ煙霧のみ。
(現代語訳)
折角、金丹の練り方の秘訣を聞いたところで、老人になるまで、世事に妨げられて仙道の修行ができず、空しく相い間違うようなことになれば、また再び会うこともできない。
このように思い悩んでから、忽然として大悟し、そこで自ら大笑いして言うには、いましも沈吟して別れを惜しむは、畢竟、「誰がためにするのか、まったく人間離れをするものではない」という。
このような愚痴な了見も出るので、世間におれば、名利のために煮られたり、炒られたりして終始忙しく駆け回らねばならない。どうして私が足並みを静かにしようかと、そんなことは少しも自分に役がない。
遠游に出かけて翻然高挙、かの赤松子に随って、ゆっくりと仙術の修行をなそうと思うので、かの安期生が赤玉の靴を留めて、遙かに東、蓬莱山にいったとおなじく、わたしもまた遺跡を人間に留めたまま立ち去ろうとするのである。
安期生は、一度去った後「秦の始皇帝が使者を遣わして、いくら尋ねてもわからず、東海は蒼蒼として、ただ煙霧の立ち込めるのに任せ、何処にいるか知る由もなかった」と同じく、私としても、この世を辞せし後は、たとえ帝王が捜されたとしても見つかるはずもなく区々たる親友の交誼など特に問うまでもないことなのである。
(訳注)
古風,五十九首之二十
古風とは古体の詩というほどのことで、漢魏の間に完成した五言古詩の継承を目指すものである。諸篇は一時の作でなく、折にふれて作られた無題の詩を後から編集し、李白の生き方を述べたものである。
(仙郷に遊ぶことを詠じている。はじめ赤松に遭遇して愈々仙術を修行することとなり、それから親友に別れて、遠く立ち去る時の感慨を述べたものである。)
空聞紫金經,白首愁相誤。
折角、金丹の練り方の秘訣を聞いたところで、老人になるまで、世事に妨げられて仙道の修行ができず、空しく相い間違うようなことになれば、また再び会うこともできない。
○紫金經 紫金:赤銅(しゃくどう)の異称。古くは「黄治」や「黄白」とも呼ばれた金丹は、不老不死の効果を持つ薬の製造と服薬により仙人になることを目指すという点から、道教と密接に関連していた。後漢時代に左慈という人物が神人から授かった「金丹仙経」をごく少数の集団を経て伝えられたという。
撫己忽自笑,沈吟為誰故。
このように思い悩んでから、忽然として大悟し、そこで自ら大笑いして言うには、いましも沈吟して別れを惜しむは、畢竟、「誰がためにするのか、まったく人間離れをするものではない」という。
名利徒煎熬,安得閒余步。
このような愚痴な了見も出るので、世間におれば、名利のために煮られたり、炒られたりして終始忙しく駆け回らねばならない。どうして私が足並みを静かにしようかと、そんなことは少しも自分に役がない。
終留赤玉舄,東上蓬萊路。
遠游に出かけて翻然高挙、かの赤松子に随って、ゆっくりと仙術の修行をなそうと思うので、かの安期生が赤玉の靴を留めて、遙かに東、蓬莱山にいったとおなじく、わたしもまた遺跡を人間に留めたまま立ち去ろうとするのである。
○赤玉舄 安期生が赤玉の靴。『列仙伝』 の安期先生も 「赤玉の. 暮」 をのこ し、 『神仙伝』 の茄子訓も棺中にくつを一つのこ していった。 安期先生 : 瑯邪の阜郷(山東省)の人で、秦始皇帝(BC259~BC210)が巡遊したとき三日三晩共に語らい、赤玉くつ一足を返礼し、蓬莱山に愚老を捜すように書面を残して去る
○蓬萊路 古代中国で東の海上(海中)にある仙人が住むといわれていた仙境の1つ。道教の流れを汲む神仙思想のなかで説かれるものである。
秦帝如我求,蒼蒼但煙霧。
安期生は、一度去った後「秦の始皇帝が使者を遣わして、いくら尋ねてもわからず、東海は蒼蒼として、ただ煙霧の立ち込めるのに任せ、何処にいるか知る由もなかった」と同じく、私としても、この世を辞せし後は、たとえ帝王が捜されたとしても見つかるはずもなく区々たる親友の交誼など特に問うまでもないことなのである。
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