巻1 51 李太白集 《0151 古風五十九首之五十一》 李白 kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞 fc2ブログ 5556
- 2015/02/15
- 22:20
李太白集 《0151 古風五十九首之五十一》 (この詩は、殷・楚の末運より、比干・屈原の事、および、忠貞の思いが、世に容れられず、空しく禍にかかったことを李白は自分の佳形に照らして時事に感じたことを詩に詠った。)殷の紂王は天の綱紀をみだしたし、楚の懐王もまた昏愚であったために、二君ともに、どの国をうしなうこととなった。
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作年: 753年天寶十二年53歲
卷別: 卷一六一 文體: 五言古詩
詩題: 古風,五十九首之五十一
作地點: 長安(京畿道 / 京兆府 / 長安)
古風,五十九首之五十一
(この詩は、殷・楚の末運より、比干・屈原の事、および、忠貞の思いが、世に容れられず、空しく禍にかかったことを李白は自分の佳形に照らして時事に感じたことを詩に詠った。)
殷后亂天紀,楚懷亦已昏。
殷の紂王は天の綱紀をみだしたし、楚の懐王もまた昏愚であったために、二君ともに、どの国をうしなうこととなった。
夷羊滿中野,菉葹盈高門。
殷の紂王の末年には、夷羊という神獣が牧野に現れ、殷の紂王が、後にここに敗軍する兆を示したし、海王の時は菉葹などの悪草に比すべき、小人が朝廷に満ちて、しきりに権力を振るっていた。
比干諫而死,屈平竄湘源。
こうして、比干は殷の紂王を諌め、あまりはげしくやったので、ついに胸を裂かれて死んでしまい、屈原は、折角の才芸が累をなし、同僚の上官太夫に讒言を以て、とうとう湘江のほとりに放逐されてしまったのである。
虎口何婉孌,女嬃空嬋媛。
比干は虎口におちいるも顧みず、ひたすらその君を顧慕し、つかの間も忘れず、そのために、覚えず極諫したのであるし、屈原は、その姉の女嬃に引き留められ、あまり正直にするのは身のためにならないから、少しは、控えめにせよと、酷く叱られた。賢者の心は、世俗の人にわからず、かえって、その諸行を否定される位である。
彭咸久淪沒,此意與誰論。
顧みれば、彭咸のような賢人は、没して既に久しく、この忠義の心をだれと共に論ずればよいのか、今の世には、それができる人物が全くいないのだから仕方がないということだ。
(古風,五十九首の五十一)
殷后 天紀を亂し,楚懷 亦た已に昏し。
夷羊 中野に滿ち,菉葹【りょくし】高門に盈つ。
比干は 諫めて死し,屈平は湘源に竄す。
虎口 何ぞ婉孌【えんれん】たる,女嬃【じょしゅ】空しく嬋媛【せんえん】。
彭咸 久しく淪沒,此の意 誰れと論ぜん。
『古風,五十九首之五十一』 現代語訳と訳註
(本文)
古風,五十九首之五十一
殷后亂天紀,楚懷亦已昏。
夷羊滿中野,菉葹盈高門。
比干諫而死,屈平竄湘源。
虎口何婉孌,女嬃空嬋媛。
彭咸久淪沒,此意與誰論。
(下し文)
(古風,五十九首の五十一)
殷后 天紀を亂し,楚懷 亦た已に昏し。
夷羊 中野に滿ち,菉葹【りょくし】高門に盈つ。
比干は 諫めて死し,屈平は湘源に竄す。
虎口 何ぞ婉孌【えんれん】たる,女嬃【じょしゅ】空しく嬋媛【せんえん】。
彭咸 久しく淪沒,此の意 誰れと論ぜん。
(現代語訳)
(この詩は、殷・楚の末運より、比干・屈原の事、および、忠貞の思いが、世に容れられず、空しく禍にかかったことを李白は自分の佳形に照らして時事に感じたことを詩に詠った。)
殷の紂王は天の綱紀をみだしたし、楚の懐王もまた昏愚であったために、二君ともに、どの国をうしなうこととなった。
殷の紂王の末年には、夷羊という神獣が牧野に現れ、殷の紂王が、後にここに敗軍する兆を示したし、海王の時は菉葹などの悪草に比すべき、小人が朝廷に満ちて、しきりに権力を振るっていた。
こうして、比干は殷の紂王を諌め、あまりはげしくやったので、ついに胸を裂かれて死んでしまい、屈原は、折角の才芸が累をなし、同僚の上官太夫に讒言を以て、とうとう湘江のほとりに放逐されてしまったのである。
比干は虎口におちいるも顧みず、ひたすらその君を顧慕し、つかの間も忘れず、そのために、覚えず極諫したのであるし、屈原は、その姉の女嬃に引き留められ、あまり正直にするのは身のためにならないから、少しは、控えめにせよと、酷く叱られた。賢者の心は、世俗の人にわからず、かえって、その諸行を否定される位である。
顧みれば、彭咸のような賢人は、没して既に久しく、この忠義の心をだれと共に論ずればよいのか、今の世には、それができる人物が全くいないのだから仕方がないということだ。
(訳注)
古風,五十九首之五十一
(この詩は、殷・楚の末運より、比干・屈原の事、および、忠貞の思いが、世に容れられず、空しく禍にかかったことを李白は自分の佳形に照らして時事に感じたことを詩に詠った。)
殷后 亂天紀,楚懷 亦已昏。
殷の紂王は天の綱紀をみだしたし、楚の懐王もまた昏愚であったために、二君ともに、どの国をうしなうこととなった。
殷后 后は君、紂をしめす。
天紀 天の綱紀。
夷羊 滿中野,菉葹 盈高門。
殷の紂王の末年には、夷羊という神獣が牧野に現れ、殷の紂王が、後にここに敗軍する兆を示したし、海王の時は菉葹などの悪草に比すべき、小人が朝廷に満ちて、しきりに権力を振るっていた。
夷羊 「神獣の夷羊、商のまさに亡びんとするや、商郊牧野の地にあらわる。」とある。
菉葹 部屋の中に生えてきた草、菉(かりやす)・葹(おなもみ)のような雑草、人にとって悪い草ということ。屈原《楚辞・離騒》「薋菉葹以盈室兮,判獨離而不服。」(薋菉葹を以て室を盈たすに,判獨離而不服 判として獨り離れて服せず。)薋(はまびし)・菉(かりやす)・葹(おなもみ)のような雑草は部屋に満ちているのにただひとり離れてそれを身につけぬとは
薋菉葹以盈室兮,判獨離而不服衆不可戸説兮,孰云察余之中情世竝舉而好朋兮,夫何煢獨而不予聽。
比干 諫而死,屈平 竄湘源。
こうして、比干は殷の紂王を諌め、あまりはげしくやったので、ついに胸を裂かれて死んでしまい、屈原は、折角の才芸が累をなし、同僚の上官太夫に讒言を以て、とうとう湘江のほとりに放逐されてしまったのである。
比干 殷(いん)王朝の人。紂(ちゅう)の叔父。淫乱な紂王を諫(いさ)めたため、紂王に胸を裂かれて殺された。箕子(きし)・微子とともに殷の三仁と称される。
屈平 屈原のこと。(くつげん、紀元前343年1月21日頃 - 紀元前278年5月5日頃)は、中国戦国時代の楚の政治家、詩人。姓は羋、氏は屈。諱は平または正則。字が原。春秋戦国時代を代表する詩人であり、政治家としては秦の張儀の謀略を見抜き踊らされようとする懐王を必死で諫めたが受け入れられず、楚の将来に絶望して入水自殺した。
湘源 湘江の上流を指す。
虎口 何婉孌,女嬃 空嬋媛。
比干は虎口におちいるも顧みず、ひたすらその君を顧慕し、つかの間も忘れず、そのために、覚えず極諫したのであるし、屈原は、その姉の女嬃に引き留められ、あまり正直にするのは身のためにならないから、少しは、控えめにせよと、酷く叱られた。賢者の心は、世俗の人にわからず、かえって、その諸行を否定される位である。
虎口 ①《恐ろしい虎の口の意》非常に危険な所、また、危険な状態のたとえ。危機。虎穴。②城郭における出入り口のことで、「こぐち」には狭い道・狭い口という意味がある。「小口」とも書く。「虎口(ここう)」とよむ場合は、中世の戦場や陣地における危険な場所を意味する。
婉孌 顧慕。“慕う”、“従う”、美しいことの形容。
女嬃 母のことを姐(しゃ)といい、巫女(神に仕える女)の長を女嬃(じょしゅ)という。 姉・姐・女嬃というのは同じ系列の語で、それぞれの地位・身分をあらわすものであろう。ここでは、屈原に生き方の助言をした姉ということとされている。
嬋媛 【せんえん】あでやかで美しいさま。優美であるさま。「暮れんとする春の色の、―として、しばらくは冥邈(めいばく)の戸口をまぼろしに彩どる中に」〈漱石・草枕〉
彭咸 久淪沒,此意 與誰論。
顧みれば、彭咸のような賢人は、没して既に久しく、この忠義の心をだれと共に論ずればよいのか、今の世には、それができる人物が全くいないのだから仕方がないということだ。
彭咸 殷の賢明な臣下で、君主を諫めたが聞き入れられず、ために入水する。或いは、巫、みこの名。水に身を投げて入水し、水神となる。
《楚辭・離騷》 屈原
帝高陽之苗裔兮, 朕皇考曰伯庸。
攝提貞于孟陬兮, 惟庚寅吾以降。
皇覽揆余初度兮, 肇錫余以嘉名。
名余曰正則兮, 字余曰靈均 。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(中略)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
亂曰:
已矣哉!
國無人莫我知兮, 又何懷乎故都?
既莫足與爲美政兮, 吾將從彭咸之所居!
(離騷)
帝 高陽の苗裔にて ,朕(わ)が皇考は 伯庸と 曰(い)ふ。
攝提孟陬に貞(あた)りて,惟れ 庚寅(かのえとら)に吾れ以って降(うま)る。
皇(ちち)覽ずるに余の初めて度すを揆(はか)りて,肇(はじ)めて余に錫(たま)ふに 嘉名を以てす。
余に 名づけて正則と曰(い)ひ,余に 字(あざな)して 靈均と 曰(い)ふ 。
・・・・・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・・・・・
亂に曰く:
已矣哉(やんぬるかな)!
國に人 無く 我を 知るもの莫し, 又 何ぞ 故都を 懷しまんや?
既に 與に 美政を爲すに 足るもの 莫し,吾れ將に彭咸に從ひて居す所に之(ゆ)かん!
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