李太白集 60《太白巻二十五42 題竇圌山》 李白 kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞 fc2ブログ 5881
- 2015/04/21
- 22:46
李太白集 60《太白巻二十五42 題竇圌山》 李白 | kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞 fc2ブログ 5881 |
李白は、唐の長安(則天武后)元年(701)に生まれたことになっている。このとき長庚(金星、太白星)を夢みたところ生まれたので、白と名づけ、太白と字することとなった。また、彼は後にみずからを青蓮居士、酒仙翁ともした。
四歳までは、当時、西域といわれる砕葉で過ごしており、五歳のとき、はじめて父とともに四川省に移住した。時に中宗の神竜元年(705)である。これより二十五歳まで、この四川に住んだ。
李白自身も蜀を郷里として意識し、その住まいは紫雲山のほとりで、四川省綿陽県(当時は彰〔昌〕明県)境にあって、そこの清廉郷(青蓮郷)というところであった。李白が郷里の名をとって
青蓮居士と号したのである。
四川時代の詩ははなはだ少なく、彼の生活を詳しく知る由もないが、家庭は相当に富裕であった。彼の父は李客といった。後年、李白が維揚(揚州)に遊んだとき、一年足らずのうちに、落魄公子のために、三十余万の金を費やした「上安州裴長史」(安州の裴長史に上る書)というところを見ると、相当の金を李白が持っていたと考えられる。つまり、それは彼の父に金があったことになる。父親は富裕の商人であった。こうした商人は、中央アジアと長安の経済交流の盛んな情勢に乗じて、長安にやって来る。また、長安と蜀との経済交流の行なわれた当時、李白の父は長安から蜀にやって来たものと思われる。
十五歳ごろまではもっぱら教養として読書で過ごしている。五歳のころ六甲を誦し、十歳では百家を観たと自ら言っている「上安州裴長史」(安州の裴長史に上る書)。「六甲」とは十干十二支で表わす組み合わせを覚えたということである。漢の司馬相如の「子虚の賦」を暗誦した「秋於敬亭送從姪耑遊廬山序」(秋、敬亭山に於いて、侄耑の盧山に遊ぶを送るの序)。李白の口からは経書をとくに学んだとはいっていないが、教養として当然学んだものである。そのほかに諸子百家に及んでいることは、彼の教養を広く豊かなものにして、彼の想像力をふくらませる詩作の助けになっている。
また、剣術も習っていた「与韓荊州書」(韓荊州に与うる書」)。彼は後年、しばしば剣のことを歌うが、その素養もこのころ養われたのであろう。「贈從兄襄陽少府皓」(従兄の裏陽の少府暗に贈る)を見ると、「結髪」(二十歳)のころのことを述べて、「結發未識事,所交盡豪雄。」(結發未だ事を識らず、交わる所は尽く豪雄)といい、文人ではなく、武勇の徒と思われる。そして、「託身白刃里,殺人紅塵中。」(身を白刃の裏に託し、人を紅塵の中に殺す)といって、自刃を奮って血を流し人を殺すようなことは、しばしばあったといっている。これを見ると、若い時は必ずしも後年に見られるような詩人としての活躍はほとんどなかったといえよう。友人魏顥の『李翰林集』序にいう「少くして任侠、手ずから数人を刃す」というのも、真実を伝えているものであろう。要するに苦いときは、いわゆる任侠の徒であったということだ。
剣を持つことは、元来、文人の教養の一つではあるが、李白は、むしろ任侠の徒として剣を常に挟んでおり、後年になっても、彼の身辺に絶えずあって、単なる飾りではなくて、あふるる感慨を洩らすときの相手でもあった。「撫劍夜吟嘯。 雄心日千里。」(剣を撫して夜吟嗜し、雄心日に千里)「贈張相鎬」(張相鎬に贈る)、「知音不易得,撫劍增感慨。」(知音は得易からず、剣を撫して感慨を増す)「贈從兄襄陽少府皓」(従兄の裏陽の少府暗に贈る)、「長劍一杯酒、男兒方寸心。」(長剣一杯の酒、男児方寸の心」「贈崔侍御」(崔侍御に贈る)、「三杯拂劍舞秋月。 忽然高詠涕泗漣。」(三杯剣を払い秋月に舞わし、忽然として高詠し沸酒漣る)「玉壺吟」などは、壮士的悲横の感慨を剣に託して表わしている。
この時期に、なおもっとも注目すべきことは、有名な道教徒、東厳子(趙蕋)とともに岷山に隠れたり、戴天山道士らの道教徒と交友のあったことである。このことは、李白の人格形成、思想形成の上に重大な影響を及ぼしているのである。戴天山道士を訪ねたとき、遇えなかった詩がある。これを見ると、戴天山の静寂境と幽遠の山水の美しきを色彩を交えて描写している。後年の李白の詩の一つの特色である自然の美しさとか、静けさとか、神秘さとかを歌う審美眼も、じつはこの多感の青年期の筍において大いに養われたものと思われる。
李白は、生来、性格的にも自然の風景が好きであったかもしれないが、彼は蜀の自然の美しきにひかれて、苛の各地をしばしば遊覧している。成都の散花楼に登っては、「登錦城散花樓」(錦城の散花楼に登る)がある。これは、散花楼の朝の光の中の羊しき、蜀の川のたたずまい、過ぎ行く暮雨の風景などを歌い、いずれの景色もすべて彼の目をじゅうぶん楽しませているものであることが分かる。いったい、李白は生涯、自然の風景を楽しんでいるが、それはこうした蜀の美しい風景に触発されて感得した美的感覚がもとになっているのであろう。
制作年: 715年開元三年 15歲
卷別: 文體: 五言古詩
詩題: 題竇圌山
作地點: 劍南道北部 綿州 昌明
及地點: 竇圌山【とうすいざん】 (劍南道北部 綿州 昌明) 別名:猿門山、圌山 道教名山古蹟で、隠遁者が多くいた。
綿州 昌明 竇圌山
四川省江油縣竇圌山
四川省 >> 綿陽市 >>江油市 >> 竇圌山
題竇圌山
樵夫與耕者,出入畫屏中。
(竇圌山【とうすいざん】に 題す)
樵夫と耕者とが,出でては入る 畫屏の中。
題竇圌山
隠遁者が多く棲む竇圌山に題す。
樵夫與耕者,出入畫屏中。
木こりや、百姓は、さながら畫屏の内に出入りするがごとく、竇圌山の景色は、まことに格別である。
| 幼い頃から十分な教育的環境の中で育って来た李白は、十代に入ると勉強好きの面だけでなく、空想好きで豪快な気質も目立ち始める。十代半ばには剣を学んで任侠の士と交際したと、これも自分で告白している。 | | ||||
| Ⅰ―1 715年開元三年15歳 剣術を好み賦を作る | 6 | 首 | | ||
| ID | No. | 詩題 | 詩文初句 | | |
| 1 | 1 | 題竇圌山 | 樵夫與耕者, | | |
| | | 樵夫與耕者,出入畫屏中。 | | | |
| 2 | 2 | 望夫石 | 彷彿古容儀, | | |
| | 25巻 | 彷彿古容儀,含愁帶曙輝。 | | | |
| 夫を恋い慕うあまり死して石となった女の話を題材にしている。 | | ||||
| 3 | 3 | 對雨 | 卷簾聊舉目, | | |
| | 25巻 | 卷簾聊舉目,露溼草綿芊。 | | | |
| 詩は全体が雨の中の景色の描写になっていて、。霧雨にけぶる、いかにも南中国の情景らしい詩である。李白の詩は約千首ほど残っているが、雨を詠ったものは非常に少ない。季節は春か初夏、小雨にけぶる景色をさまざまな角度から詠み、前半は部屋の中から眺め、後半は外に出て風に吹かれながら眺めている。 | | ||||
| 4 | 4 | 曉晴【晚晴】 | 野涼疏雨歇, | | |
| | 25巻 | 野涼疏雨歇,春色遍萋萋。 | | | |
| 5 | 5 | 初月 | 玉蟾離海上, | | |
| | 25巻 | 玉蟾離海上,白露溼花時。 | | | |
| 「初月」 は三日月という意味で、詩は或る春の夜、三日月を眺めて心に浮かんだことを詠う。前半は三日月が出て来て空に浮かぶまでのようすを描き、関連伝説を連想させ、たのしませ、後半は「月を見ていると楽しい。宴会の席で音楽を聴きながら月を見る人々は、その楽しさもひとしおであろう。しかし考えてみると、月は出征している兵士たちをひどく悲しませるものでもある筈だ。だから私は楽しいだけの月見の宴会はやめて、今、春の夜風に吹かれながら詩を作っているのだ」、と。 | | ||||
| 6 | 6 | 雨後望月 | 四郊陰靄散, | | |
| | 25巻 | 四郊陰靄散,開戶半蟾生。 | | | |
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