李太白集 190《太白巻24-36 寄遠,十一首之八》 李白kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞 fc2ブログ 6531
- 2015/08/29
- 22:58
憶昨東園桃李紅碧枝,與君此時初別離。金瓶落井無消息,令人行歎復坐思。坐思行歎成楚越,春風玉顏畏銷歇。碧窗紛紛下落花,青樓寂寂空明月。兩不見,但相思。空留錦字表心素,至今緘愁不忍窺。
(この詩は遠くにいる人に寄せる意をつづる十一の八)おもへば、昨日、東園の桃李は、葉綠に、花紅に、見事に吹き出るかのように咲き誇っていたが、この春、君と初めで別れたのである。しかし、金瓶が一たび井戸に落ちし後は、打絶えて、消息なきが如く、君も出て行きし後は、何の音沙汰もなく、人をして行いては嘆じ、坐しては思わしめ、断えず惆悵の想いに堪へざらしめる。そこで、坐しては思い、行いでは歎じ、しかも楚越の絶えて相い関せざる如くなれば、春風のどかなる玉顔も、いつしか綃歇してしまうおそれがある。今しも、碧窓の前には、落花紛々としてくだり、靑楼の上には、名月寂々として照らし、花も、月も、翻って思いの種となって仕舞った。花も、月も、見たくないから見ず、独り垂れこめて、物思いに沈んで居る。折角、錦字を留めて、心の誠を書きあらわしたのが、今に至るまで、愁を併せて封緘したまま、それを覗い見る気にも成らず、なお残されてある。
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191 《巻24-36 寄遠,十一首之八》Index-11 Ⅱ―6 -731年開元十九年31歳 43首
年:-731年開元十九年31歳
卷別: 卷一八四 文體: 雜言古詩
詩題: 寄遠,十一首之八
寄遠,十一首之八
(この詩は遠くにいる人に寄せる意をつづる十一の八)
憶昨東園桃李紅碧枝,與君此時初別離。
おもへば、昨日、東園の桃李は、葉綠に、花紅に、見事に吹き出るかのように咲き誇っていたが、この春、君と初めで別れたのである。
金瓶落井無消息,令人行歎復坐思。
しかし、金瓶が一たび井戸に落ちし後は、打絶えて、消息なきが如く、君も出て行きし後は、何の音沙汰もなく、人をして行いては嘆じ、坐しては思わしめ、断えず惆悵の想いに堪へざらしめる。
坐思行歎成楚越,春風玉顏畏銷歇。
そこで、坐しては思い、行いでは歎じ、しかも楚越の絶えて相い関せざる如くなれば、春風のどかなる玉顔も、いつしか綃歇してしまうおそれがある。
碧窗紛紛下落花,青樓寂寂空明月。
今しも、碧窓の前には、落花紛々としてくだり、靑楼の上には、名月寂々として照らし、花も、月も、翻って思いの種となって仕舞った。
兩不見,但相思。
花も、月も、見たくないから見ず、独り垂れこめて、物思いに沈んで居る。
空留錦字表心素,至今緘愁不忍窺。
折角、錦字を留めて、心の誠を書きあらわしたのが、今に至るまで、愁を併せて封緘したまま、それを覗い見る気にも成らず、なお残されてある。
(寄遠,十一首の八)
憶ふ昨、東園の桃李紅碧の枝、君と此時、初めて別離。
金瓶落井にちて消息無く,令人をして行いて歎じ復た坐して思わしむ。
坐して思い 行いて歎じ 楚越を成す,春風 玉顏 銷歇を畏る。
碧窗【へきそう】紛紛として落花を下し,青樓 寂寂として空しく明月。
兩つながら見ず,但だ 相い思う。
空しく錦字を留めて心素を表す,今に至って愁いを緘して窺うに忍びず。
『寄遠,十一首之八』 現代語訳と訳註解説
(本文)
憶昨東園桃李紅碧枝,與君此時初別離。
金瓶落井無消息,令人行歎復坐思。
坐思行歎成楚越,春風玉顏畏銷歇。
碧窗紛紛下落花,青樓寂寂空明月。
兩不見,但相思。
空留錦字表心素,至今緘愁不忍窺。
(下し文)
(寄遠,十一首の八)
憶ふ昨、東園の桃李紅碧の枝、君と此時、初めて別離。
金瓶落井にちて消息無く,令人をして行いて歎じ復た坐して思わしむ。
坐して思い 行いて歎じ 楚越を成す,春風 玉顏 銷歇を畏る。
碧窗【へきそう】紛紛として落花を下し,青樓 寂寂として空しく明月。
兩つながら見ず,但だ 相い思う。
空しく錦字を留めて心素を表す,今に至って愁いを緘して窺うに忍びず。
(現代語訳)
(この詩は遠くにいる人に寄せる意をつづる十一の八)
おもへば、昨日、東園の桃李は、葉綠に、花紅に、見事に吹き出るかのように咲き誇っていたが、この春、君と初めで別れたのである。
しかし、金瓶が一たび井戸に落ちし後は、打絶えて、消息なきが如く、君も出て行きし後は、何の音沙汰もなく、人をして行いては嘆じ、坐しては思わしめ、断えず惆悵の想いに堪へざらしめる。
そこで、坐しては思い、行いでは歎じ、しかも楚越の絶えて相い関せざる如くなれば、春風のどかなる玉顔も、いつしか綃歇してしまうおそれがある。
今しも、碧窓の前には、落花紛々としてくだり、靑楼の上には、名月寂々として照らし、花も、月も、翻って思いの種となって仕舞った。
花も、月も、見たくないから見ず、独り垂れこめて、物思いに沈んで居る。
折角、錦字を留めて、心の誠を書きあらわしたのが、今に至るまで、愁を併せて封緘したまま、それを覗い見る気にも成らず、なお残されてある。
寄遠,十一首之八
(この詩は遠くにいる人に寄せる意をつづる十一の八)
この詩は、男から女妓に寄せた詩というスタンスで、その内容は、詩経風に、六朝からの詩風のものであり、隠語を含んだものであって、誰が読んでも、わかり易いから、決して、陳套と思われないものである。憂愁幽思、筆端に繚繞し、惰致とこしえに尽きない。後世高靑邱は、この種の格調を尊び、明媚にして人に近き旨としている。
憶昨東園桃李紅碧枝,與君此時初別離。
おもへば、昨日、東園の桃李は、葉綠に、花紅に、見事に吹き出るかのように咲き誇っていたが、この春、君と初めで別れたのである。
東園桃李 東園の桃李。
《古風,五十九首之四十七》
桃花開東園,含笑誇白日。桃花は東園に開き,含笑をんで白日に誇る。
偶蒙東風榮,生此豔陽質。偶ま東風の榮を蒙って,此の豔陽の質を生ず。
豈無佳人色,但恐花不實。豈に佳人の色無からんや,但だ恐る 花の實らざるを。
宛轉龍火飛,零落早相失。宛轉として 龍火飛び,零落すれば 早に相い失う。
詎知南山松,獨立自蕭飋。詎んぞ知らん 南山の松,獨立 自ら蕭飋たるを。
47 《古風五十九首之四十七》Index-22Ⅲ― 2-743年天寶二年43歳273古風,五十九首之四十七桃花開東園, <47> Ⅰ李白詩1210 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4598
金瓶落井無消息,令人行歎復坐思。
しかし、金瓶が一たび井戸に落ちし後は、打絶えて、消息なきが如く、君も出て行きし後は、何の音沙汰もなく、人をして行いては嘆じ、坐してはまた思わしめ、断えず惆悵の想いに堪へざらしめる。
金瓶 《先秦漢魏晉南北朝詩·齊詩》卷六〈釋寶月·估客樂〉~480~「有信數寄書,無信心相憶。莫作瓶落井,一去無消息。」(信 數寄書に有り,無信くば心 相い憶う。瓶井に落す作す莫れ,一たび去れば消息無し。)
復坐思 坐してはまた思うこと。
坐思行歎成楚越,春風玉顏畏銷歇。
そこで、坐しては思い、行いでは歎じ、しかも楚越の絶えて相い関せざる如くなれば、春風のどかなる玉顔も、いつしか綃歇してしまうおそれがある。
楚越 戦国時代の楚国と越国。敵国どうしであったことから、仲の悪いもののたとえにいう。そえつどうしゅう【楚越同舟】仲の悪い者どうしが同じ場所・境遇にあること。呉越同舟。
銷歇 散らし、溶かすし消し去る。
碧窗紛紛下落花,青樓寂寂空明月。
今しも、碧窓の前には、落花紛々としてくだり、靑楼の上には、名月寂々として照らし、花も、月も、翻って思いの種となって仕舞った。
青樓 ① 〔曹植「美女編」〕 高貴な美人のいる楼。 ② あげや。女郎屋。妓楼。
兩不見,但相思。
花も、月も、見たくないから見ず、独り垂れこめて、物思いに沈んで居る。
空留錦字表心素,至今緘愁不忍窺。
折角、錦字を留めて、心の誠を書きあらわしたのが、今に至るまで、愁を併せて封緘したまま、それを覗い見る気にも成らず、なお残されてある。
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- カテゴリ:李太白集 巻二十四
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