李太白集 201《太白巻18-10 酬崔五郎中》 李白 kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞 fc2ブログ 6586
- 2015/09/09
- 21:50
朔雲橫高天,萬里起秋色。壯士心飛揚,落日空歎息。長嘯出原野,凜然寒風生。幸遭聖明時,功業猶未成。
(崔五郎中の詩に答えて作った詩)北方の朔地の寒雲は、高天のうえに横たわり、万里杳渺の間に秋色が生じてきた。この時、壮士の心は、飛揚するばかり、そして西に堕ちてゆく夕日に対しては、空しく嘆息するばかりだ。こうして、長嘯したのち、平原広野に出てみると、寒風凛然として吹き起こる。きわめてさびしい景色で、今年も、やがて暮れてしまう。顧みれば、幸いにして、聖明の治世に生まれ合わせたが、心行くばかりの功業は未だなお成らないでいる。
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《巻18-10 酬崔五郎中 -#3》Index-12 Ⅱ―7 -732年開元二十年32歳 12首
年:732年開元二十年32歳
卷別: 卷一七八 文體: 五言古詩
詩題: 酬崔五郎中
作地點: 南陽(山南東道 / 鄧州 / 南陽)
及地點:明光殿 (京畿道 京兆府 長安)
嵩山 (都畿道 河南府 嵩山) 別名:嵩高山、嵩、嵩丘、嵩高
交遊人物/地點:崔成輔 當地交遊 (山南東道 鄧州 南陽)
酬崔五郎中
朔雲橫高天,萬里起秋色。
北方の朔地の寒雲は、高天のうえに横たわり、万里杳渺の間に秋色が生じてきた。
壯士心飛揚,落日空歎息。
この時、壮士の心は、飛揚するばかり、そして西に堕ちてゆく夕日に対しては、空しく嘆息するばかりだ。
長嘯出原野,凜然寒風生。
こうして、長嘯したのち、平原広野に出てみると、寒風凛然として吹き起こる。きわめてさびしい景色で、今年も、やがて暮れてしまう。
幸遭聖明時,功業猶未成。
顧みれば、幸いにして、聖明の治世に生まれ合わせたが、心行くばかりの功業は未だなお成らないでいる。
(崔五郎中に酬ゆ)
朔雲 高天に橫わり,萬里 秋色を起す。
壯士 心 飛揚,落日 空しく歎息。
長嘯 原野に出づれば,凜然として寒風生ず。
幸いに 聖明の時に遭い,功業 猶お未だ成らず。
#2
奈何懷良圖,鬱悒獨愁坐。
杖策尋英豪,立談乃知我。
崔公生民秀,緬邈青雲姿。
制作參造化,託諷含神祇。
#3
海嶽尚可傾,吐諾終不移。
是時霜飆寒,逸興臨華池。
起舞拂長劍,四座皆揚眉。
因得窮歡情,贈我以新詩。
#4
又結汗漫期,九垓遠相待。
舉身憩蓬壺,濯足弄滄海。
從此凌倒景,一去無時還。
朝遊明光宮,暮入閶闔關。
但得長把袂,何必嵩丘山。
『酬崔五郎中』 現代語訳と訳註解説
(本文) #1
酬崔五郎中
朔雲橫高天,萬里起秋色。
壯士心飛揚,落日空歎息。
長嘯出原野,凜然寒風生。
幸遭聖明時,功業猶未成。
(下し文)
(崔五郎中に酬ゆ)
朔雲 高天に橫わり,萬里 秋色を起す。
壯士 心 飛揚,落日 空しく歎息。
長嘯 原野に出づれば,凜然として寒風生ず。
幸いに 聖明の時に遭い,功業 猶お未だ成らず。
(現代語訳)
(崔五郎中の詩に答えて作った詩)
北方の朔地の寒雲は、高天のうえに横たわり、万里杳渺の間に秋色が生じてきた。
この時、壮士の心は、飛揚するばかり、そして西に堕ちてゆく夕日に対しては、空しく嘆息するばかりだ。
こうして、長嘯したのち、平原広野に出てみると、寒風凛然として吹き起こる。きわめてさびしい景色で、今年も、やがて暮れてしまう。
顧みれば、幸いにして、聖明の治世に生まれ合わせたが、心行くばかりの功業は未だなお成らないでいる。
(訳注)
酬崔五郎中
(崔五郎中の詩に答えて作った詩)
この詩は、李白の来訪を喜び、「自分の別荘が嵩山にあるからそこに一緒に出掛けようではないか」というのに答えて作ったものである。
崔五郎 崔宗之の事で、李白の酒友である。杜甫《飲中八仙歌》「宗之瀟灑美少年,舉觴白眼望青天,皎如玉樹臨風前。」崔宗之は垢抜けた美少年、杯を挙げては白眼で晴天を望む、輝くようなその姿は風前の玉樹のようだ。』とあり、この詩は李白が崔宗之の《贈李十二》にこたえてつくったもの。
崔宗之 贈李十二
涼風八九月,白露滿空庭。耿耿意不暢,捎捎風葉聲。
思見雄俊士,共話今古情。李侯忽來儀,把袂苦不早。
清論既抵掌,玄談又絕倒。分明楚漢事,歷歷王霸道。
擔囊無俗物,訪古千里餘。袖有匕首劒,懷中茂陵書。
雙眸光照人,詞賦凌子虛。酌酒弦素秦,霜氣正凝潔。
平生心中事,今日爲君說。我家有別業,寄在嵩之陽。
明月出高岑,清谿澄素光。雲散窗戶靜,風吹松桂香。
子若同斯遊,千載不相忘。
朔雲橫高天,萬里起秋色。
北方の朔地の寒雲は、高天のうえに横たわり、万里杳渺の間に秋色が生じてきた。
朔雲 北方の朔地の寒雲。
萬里 万里杳渺の間。
壯士心飛揚,落日空歎息。
この時、壮士の心は、飛揚するばかり、そして西に堕ちてゆく夕日に対しては、空しく嘆息するばかりだ。
長嘯出原野,凜然寒風生。
こうして、長嘯したのち、平原広野に出てみると、寒風凛然として吹き起こる。きわめてさびしい景色で、今年も、やがて暮れてしまう。
原野 平原広野の地。
幸遭聖明時,功業猶未成。
顧みれば、幸いにして、聖明の治世に生まれ合わせたが、心行くばかりの功業は未だなお成らないでいる。
酬崔五郎中
朔雲橫高天,萬里起秋色。
北方の朔地の寒雲は、高天のうえに横たわり、万里杳渺の間に秋色が生じてきた。
壯士心飛揚,落日空歎息。
この時、壮士の心は、飛揚するばかり、そして西に堕ちてゆく夕日に対しては、空しく嘆息するばかりだ。
長嘯出原野,凜然寒風生。
こうして、長嘯したのち、平原広野に出てみると、寒風凛然として吹き起こる。きわめてさびしい景色で、今年も、やがて暮れてしまう。
幸遭聖明時,功業猶未成。
顧みれば、幸いにして、聖明の治世に生まれ合わせたが、心行くばかりの功業は未だなお成らないでいる。
(崔五郎中に酬ゆ)
朔雲 高天に橫わり,萬里 秋色を起す。
壯士 心 飛揚,落日 空しく歎息。
長嘯 原野に出づれば,凜然として寒風生ず。
幸いに 聖明の時に遭い,功業 猶お未だ成らず。
#2
奈何懷良圖,鬱悒獨愁坐。
折角の良図を胸中に抱きつつ、鬱々として、ひとり愁坐しているのはいかなる故であろうか。
杖策尋英豪,立談乃知我。
そこで、鞭を杖として諸方を旅し尋ね歩き、英豪の士にたどり着いた、そして、立談の間に吾人物を鍳識してくれた人であった。
崔公生民秀,緬邈青雲姿。
それは、崔宗之 公であり、崔公は生民の中で、特に秀でた者であって、その高遠の姿は、挺然群をぬいている。
制作參造化,託諷含神祇。
その遣りあげた仕事は、造化に参し、たしかに人力以上であるし、その託諷する言語は神の発するような予言を含んでいる。
#2
奈何せん 良圖を懷いて,鬱悒 獨り愁坐する。
策に杖いて 英豪を尋ね,立談 乃ち我を知る。
崔公 生民の秀,緬邈【めんぼく】青雲の姿。
制作 造化に參し,託諷 神祇を含む。
『酬崔五郎中』 現代語訳と訳註解説
(本文)#2
奈何懷良圖,鬱悒獨愁坐。
杖策尋英豪,立談乃知我。
崔公生民秀,緬邈青雲姿。
制作參造化,託諷含神祇。
(下し文) #2
奈何せん 良圖を懷いて,鬱悒 獨り愁坐する。
策に杖いて 英豪を尋ね,立談 乃ち我を知る。
崔公 生民の秀,緬邈【めんぼく】青雲の姿。
制作 造化に參し,託諷 神祇を含む。
(現代語訳)
折角の良図を胸中に抱きつつ、鬱々として、ひとり愁坐しているのはいかなる故であろうか。
そこで、鞭を杖として諸方を旅し尋ね歩き、英豪の士にたどり着いた、そして、立談の間に吾人物を鍳識してくれた人であった。
それは、崔宗之 公であり、崔公は生民の中で、特に秀でた者であって、その高遠の姿は、挺然群をぬいている。
その遣りあげた仕事は、造化に参し、たしかに人力以上であるし、その託諷する言語は神の発するような予言を含んでいる。
酬崔五郎中
(崔五郎中の詩に答えて作った詩)
この詩は、李白の来訪を喜び、「自分の別荘が嵩山にあるからそこに一緒に出掛けようではないか」というのに答えて作ったものである。
崔五郎 崔宗之の事で、李白の酒友である。杜甫《飲中八仙歌》「宗之瀟灑美少年,舉觴白眼望青天,皎如玉樹臨風前。」崔宗之は垢抜けた美少年、杯を挙げては白眼で晴天を望む、輝くようなその姿は風前の玉樹のようだ。』とあり、この詩は李白が崔宗之の《贈李十二》にこたえてつくったもの。
奈何懷良圖,鬱悒獨愁坐。
折角の良図を胸中に抱きつつ、鬱々として、ひとり愁坐しているのはいかなる故であろうか。
愁坐 何もできず愁うこと。738 《愁坐〔草堂逸詩拾遺〕》 蜀中転々 杜甫 <645> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3535 杜甫詩1000-645-901/1500〔草堂逸詩拾遺-(14)〕
杖策尋英豪,立談乃知我。
そこで、鞭を杖として諸方を旅し尋ね歩き、英豪の士にたどり着いた、そして、立談の間に吾人物を鍳識してくれた人であった。
杖策 馬の鞭を杖とする。鞭を手にして立つ。《後漢書、鄧禹傳》「禹杖策軍門、説上延攪英雄。」杜甫《別常徵君》詩「兒扶猶杖策, 臥病一秋強。」
765年永泰元年54歲-39 《別常徵君》 杜甫index-15 杜甫<839> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4930 杜甫詩1500-839-1157/2500
立談 立ったままで話すこと。
知我 吾人物を鍳識してくれた人である。
崔公生民秀,緬邈青雲姿。
それは、崔宗之 公であり、崔公は生民の中で、特に秀でた者であって、その高遠の姿は、挺然群をぬいている。
生民秀 生民の中で、特に秀でた者である。
緬邈 はるかに遠いこと。挺然群をぬいていること。
青雲姿 その高遠の姿。高い志を持った士のすがた。
制作參造化,託諷含神祇。
その遣りあげた仕事は、造化に参し、たしかに人力以上であるし、その託諷する言語は神の発するような予言を含んでいる。
造化 1 天地万物を創造し育てること。また、それをなす者。造物主。「―の神」2 造物主によってつくられたもの。
酬崔五郎中
朔雲橫高天,萬里起秋色。
北方の朔地の寒雲は、高天のうえに横たわり、万里杳渺の間に秋色が生じてきた。
壯士心飛揚,落日空歎息。
この時、壮士の心は、飛揚するばかり、そして西に堕ちてゆく夕日に対しては、空しく嘆息するばかりだ。
長嘯出原野,凜然寒風生。
こうして、長嘯したのち、平原広野に出てみると、寒風凛然として吹き起こる。きわめてさびしい景色で、今年も、やがて暮れてしまう。
幸遭聖明時,功業猶未成。
顧みれば、幸いにして、聖明の治世に生まれ合わせたが、心行くばかりの功業は未だなお成らないでいる。
(崔五郎中に酬ゆ)
朔雲 高天に橫わり,萬里 秋色を起す。
壯士 心 飛揚,落日 空しく歎息。
長嘯 原野に出づれば,凜然として寒風生ず。
幸いに 聖明の時に遭い,功業 猶お未だ成らず。
#2
奈何懷良圖,鬱悒獨愁坐。
折角の良図を胸中に抱きつつ、鬱々として、ひとり愁坐しているのはいかなる故であろうか。
杖策尋英豪,立談乃知我。
そこで、鞭を杖として諸方を旅し尋ね歩き、英豪の士にたどり着いた、そして、立談の間に吾人物を鍳識してくれた人であった。
崔公生民秀,緬邈青雲姿。
それは、崔宗之 公であり、崔公は生民の中で、特に秀でた者であって、その高遠の姿は、挺然群をぬいている。
制作參造化,託諷含神祇。
その遣りあげた仕事は、造化に参し、たしかに人力以上であるし、その託諷する言語は神の発するような予言を含んでいる。
#2
奈何せん 良圖を懷いて,鬱悒 獨り愁坐する。
策に杖いて 英豪を尋ね,立談 乃ち我を知る。
崔公 生民の秀,緬邈【めんぼく】青雲の姿。
制作 造化に參し,託諷 神祇を含む。
#3
海嶽尚可傾,吐諾終不移。
加えるに、その意気の盛んなることは、海嶽をも傾けて動かそう賭すべく、一たび承諾したと云う言葉を吐けば、決して移動する事は無い。
是時霜飆寒,逸興臨華池。
このように頼もしい大人物であって、我と常に交わりを続けている。この時、霜を帯びている旋風の吹きめくるをも意とせず、華池に臨んでいる。
起舞拂長劍,四座皆揚眉。
その席上、逸興をほしいままにし、酔った挙句に、長いのを振り回して剣舞すると、並んで座っていて面々も、眉をあげて、慷慨激昂した。
因得窮歡情,贈我以新詩。
ここに充分歡情を極めつくすことを得たといって、君は新しい詩を賦して、私に贈られたのである。
#3
海嶽 尚お傾く可し,吐諾【とだく】終に移らず。
是の時 霜飆【そうひょう】寒く,逸興 華池に臨む。
起舞して 長劍を拂えば,四座 皆 眉を揚ぐ。
因って歡情を窮むるを得,我に贈る 新詩を以てす。
『酬崔五郎中』 現代語訳と訳註解説
(本文) #3
海嶽尚可傾,吐諾終不移。
是時霜飆寒,逸興臨華池。
起舞拂長劍,四座皆揚眉。
因得窮歡情,贈我以新詩。
(下し文) #3
海嶽 尚お傾く可し,吐諾【とだく】終に移らず。
是の時 霜飆【そうひょう】寒く,逸興 華池に臨む。
起舞して 長劍を拂えば,四座 皆 眉を揚ぐ。
因って歡情を窮むるを得,我に贈る 新詩を以てす。
(現代語訳)
加えるに、その意気の盛んなることは、海嶽をも傾けて動かそう賭すべく、一たび承諾したと云う言葉を吐けば、決して移動する事は無い。
このように頼もしい大人物であって、我と常に交わりを続けている。この時、霜を帯びている旋風の吹きめくるをも意とせず、華池に臨んでいる。
その席上、逸興をほしいままにし、酔った挙句に、長いのを振り回して剣舞すると、並んで座っていて面々も、眉をあげて、慷慨激昂した。
ここに充分歡情を極めつくすことを得たといって、君は新しい詩を賦して、私に贈られたのである。
(訳注) #3
酬崔五郎中
(崔五郎中の詩に答えて作った詩)
この詩は、李白の来訪を喜び、「自分の別荘が嵩山にあるからそこに一緒に出掛けようではないか」というのに答えて作ったものである。
崔五郎 崔宗之の事で、李白の酒友である。杜甫《飲中八仙歌》「宗之瀟灑美少年,舉觴白眼望青天,皎如玉樹臨風前。」崔宗之は垢抜けた美少年、杯を挙げては白眼で晴天を望む、輝くようなその姿は風前の玉樹のようだ。』とあり、この詩は李白が崔宗之の《贈李十二》にこたえてつくったもの。
海嶽尚可傾,吐諾終不移。
加えるに、その意気の盛んなることは、海嶽をも傾けて動かそう賭すべく、一たび承諾したと云う言葉を吐けば、決して移動する事は無い。
是時霜飆寒,逸興臨華池。
このように頼もしい大人物であって、我と常に交わりを続けている。この時、霜を帯びている旋風の吹きめくるをも意とせず、華池に臨んでいる。
華池 西王母の住む崑崙山上にある池の名。(瑤地)
起舞拂長劍,四座皆揚眉。
その席上、逸興をほしいままにし、酔った挙句に、長いのを振り回して剣舞すると、並んで座っていて面々も、眉をあげて、慷慨激昂した。
因得窮歡情,贈我以新詩。
ここに充分歡情を極めつくすことを得たといって、君は新しい詩を賦して、私に贈られたのである。
酬崔五郎中
朔雲橫高天,萬里起秋色。
北方の朔地の寒雲は、高天のうえに横たわり、万里杳渺の間に秋色が生じてきた。
壯士心飛揚,落日空歎息。
この時、壮士の心は、飛揚するばかり、そして西に堕ちてゆく夕日に対しては、空しく嘆息するばかりだ。
長嘯出原野,凜然寒風生。
こうして、長嘯したのち、平原広野に出てみると、寒風凛然として吹き起こる。きわめてさびしい景色で、今年も、やがて暮れてしまう。
幸遭聖明時,功業猶未成。
顧みれば、幸いにして、聖明の治世に生まれ合わせたが、心行くばかりの功業は未だなお成らないでいる。
(崔五郎中に酬ゆ)
朔雲 高天に橫わり,萬里 秋色を起す。
壯士 心 飛揚,落日 空しく歎息。
長嘯 原野に出づれば,凜然として寒風生ず。
幸いに 聖明の時に遭い,功業 猶お未だ成らず。
#2
奈何懷良圖,鬱悒獨愁坐。
折角の良図を胸中に抱きつつ、鬱々として、ひとり愁坐しているのはいかなる故であろうか。
杖策尋英豪,立談乃知我。
そこで、鞭を杖として諸方を旅し尋ね歩き、英豪の士にたどり着いた、そして、立談の間に吾人物を鍳識してくれた人であった。
崔公生民秀,緬邈青雲姿。
それは、崔宗之 公であり、崔公は生民の中で、特に秀でた者であって、その高遠の姿は、挺然群をぬいている。
制作參造化,託諷含神祇。
その遣りあげた仕事は、造化に参し、たしかに人力以上であるし、その託諷する言語は神の発するような予言を含んでいる。
#2
奈何せん 良圖を懷いて,鬱悒 獨り愁坐する。
策に杖いて 英豪を尋ね,立談 乃ち我を知る。
崔公 生民の秀,緬邈【めんぼく】青雲の姿。
制作 造化に參し,託諷 神祇を含む。
#3
海嶽尚可傾,吐諾終不移。
加えるに、その意気の盛んなることは、海嶽をも傾けて動かそう賭すべく、一たび承諾したと云う言葉を吐けば、決して移動する事は無い。
是時霜飆寒,逸興臨華池。
このように頼もしい大人物であって、我と常に交わりを続けている。この時、霜を帯びている旋風の吹きめくるをも意とせず、華池に臨んでいる。
起舞拂長劍,四座皆揚眉。
その席上、逸興をほしいままにし、酔った挙句に、長いのを振り回して剣舞すると、並んで座っていて面々も、眉をあげて、慷慨激昂した。
因得窮歡情,贈我以新詩。
ここに充分歡情を極めつくすことを得たといって、君は新しい詩を賦して、私に贈られたのである。
#3
海嶽 尚お傾く可し,吐諾【とだく】終に移らず。
是の時 霜飆【そうひょう】寒く,逸興 華池に臨む。
起舞して 長劍を拂えば,四座 皆 眉を揚ぐ。
因って歡情を窮むるを得,我に贈る 新詩を以てす。
#4
又結汗漫期,九垓遠相待。
また、我が欲する所は、物外に優遊する佳期を約し、そして九垓の外において、遠くあい待っている。つまり、この世を排脱したいというのである。
舉身憩蓬壺,濯足弄滄海。
酔って、身を踊らし蓬莱山まで出かけてゆく、そこでゆっくり休憩し、足を洗いつつ滄海の流れを弄ぶのである。
從此凌倒景,一去無時還。
更にここより去ってさかしまに照り返す中天の光景を凌ぎつつ、一度去れば、またこの人生には帰る事は無い。
朝遊明光宮,暮入閶闔關。
だから、朝には、丹邱の称ある明光宮に遊び、暮れには、天文を敲いて天帝に拝謁する。
但得長把袂,何必嵩丘山。
かくのごとくなれば、その楽しみは無窮であるというものであるが、但し、それも自分だけでは面白くないから、ぜひとも君のたもとをとって、一緒に行きたいので、そうすれば、われわれの遊ぶところは、君の嵩山の別業だけではない広がった人生となるのではないだろうか。
#4
又 汗漫の期を結び,九垓 遠く相い待つ。
身を舉げて蓬壺に憩い,足を濯い 滄海を弄す。
此より 倒景を凌ぎ,一去 時として還る無し。
朝には明光宮に遊び,暮には閶闔の關に入る。
但だ 長く袂を把るを得れば,何ぞ必ずしも 嵩丘の山のみならんや。
『酬崔五郎中』 現代語訳と訳註解説
(本文) #4
又結汗漫期,九垓遠相待。
舉身憩蓬壺,濯足弄滄海。
從此凌倒景,一去無時還。
朝遊明光宮,暮入閶闔關。
但得長把袂,何必嵩丘山。
(下し文)#4
又 汗漫の期を結び,九垓 遠く相い待つ。
身を舉げて蓬壺に憩い,足を濯い 滄海を弄す。
此より 倒景を凌ぎ,一去 時として還る無し。
朝には明光宮に遊び,暮には閶闔の關に入る。
但だ 長く袂を把るを得れば,何ぞ必ずしも 嵩丘の山のみならんや。
(現代語訳)
また、我が欲する所は、物外に優遊する佳期を約し、そして九垓の外において、遠くあい待っている。つまり、この世を排脱したいというのである。
酔って、身を踊らし蓬莱山まで出かけてゆく、そこでゆっくり休憩し、足を洗いつつ滄海の流れを弄ぶのである。
更にここより去ってさかしまに照り返す中天の光景を凌ぎつつ、一度去れば、またこの人生には帰る事は無い。
だから、朝には、丹邱の称ある明光宮に遊び、暮れには、天文を敲いて天帝に拝謁する。
かくのごとくなれば、その楽しみは無窮であるというものであるが、但し、それも自分だけでは面白くないから、ぜひとも君のたもとをとって、一緒に行きたいので、そうすれば、われわれの遊ぶところは、君の嵩山の別業だけではない広がった人生となるのではないだろうか。
酬崔五郎中
(崔五郎中の詩に答えて作った詩)
この詩は、李白の来訪を喜び、「自分の別荘が嵩山にあるからそこに一緒に出掛けようではないか」というのに答えて作ったものである。
崔五郎 崔宗之の事で、李白の酒友である。杜甫《飲中八仙歌》「宗之瀟灑美少年,舉觴白眼望青天,皎如玉樹臨風前。」崔宗之は垢抜けた美少年、杯を挙げては白眼で晴天を望む、輝くようなその姿は風前の玉樹のようだ。』とあり、この詩は李白が崔宗之の《贈李十二》にこたえてつくったもの。
又結汗漫期,九垓遠相待。
また、我が欲する所は、物外に優遊する佳期を約し、そして九垓の外において、遠くあい待っている。つまり、この世を排脱したいというのである。
九垓 ①天の果て。 ②地の果て。大地。「先期汗漫九垓上=先づ期す汗漫九垓の上」〔李白・廬山謡〕 ③「九州②」と同じ
舉身憩蓬壺,濯足弄滄海。
酔って、身を踊らし蓬莱山まで出かけてゆく、そこでゆっくり休憩し、足を洗いつつ滄海の流れを弄ぶのである。
蓬壺 《形が壺(つぼ)に似ているところから》蓬莱山(ほうらいさん)の異称。内裏や上皇の御所のたとえ。
滄海 東海三山に至る広大な海原。あおあおとした広い海。あおうなばら。滄海変じて桑田となる《儲光羲「献八舅東帰」から》広い海原が桑畑に変わる。世の中の移り変わりの激しいことのたとえ。桑田変じて海となる。桑田変じて滄海となる。
從此凌倒景,一去無時還。
更にここより去ってさかしまに照り返す中天の光景を凌ぎつつ、一度去れば、またこの人生には帰る事は無い。
倒景 逆さに映った影。
朝遊明光宮,暮入閶闔關。
だから、朝には、丹邱の称ある明光宮に遊び、暮れには、天文を敲いて天帝に拝謁する。
明光宮 丹邱の称ある明光宮であるが、ここは仙郷をいう。漢の武帝の時代に未央宮を造営し(BC200)、その十年後に、はじめて長安城の城壁を築いた。城壁は版築で築き、北宮や明光宮、建章宮が営され、さらに西部の上林苑を拡張し、昆明池を開削した。
閶闔關 天門をいう。紫微宮の門のこと。《楚辭‧離騷》: 「吾令帝閽開關兮, 倚閶闔而望予。」(吾 帝閽をして關を開らかしめんとすれば,閶闔に倚りて予を望む。) 王逸の注に「“閶闔, 天門也。」
但得長把袂,何必嵩丘山。
かくのごとくなれば、その楽しみは無窮であるというものであるが、但し、それも自分だけでは面白くないから、ぜひとも君のたもとをとって、一緒に行きたいので、そうすれば、われわれの遊ぶところは、君の嵩山の別業だけではない広がった人生となるのではないだろうか。
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