李太白集 364《太白巻五05 相逢行》 kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞 fc2ブログ 7398
- 2016/02/25
- 22:04
李白 相逢行
朝騎五花馬,謁帝出銀臺。秀色誰家子,雲車珠箔開。金鞭遙指點,玉勒近遲回。夾轂相借問,疑從天上來。
(貴公子が美人に専ら云い寄ることを詠う。)
朝に五花の文ある名馬に跨って参内し、天子に拝謁したる後、銀臺門を出でて歸途に就いた人がある。すると、かえり途にして秀色抜群の一美人に遇ったが、それは誰が家の娘であらうか。その女は、立派な車に乗り、金玉珠璣の箔を置いた簾を掲げて、外面を見廻わしている。そこで前の官人は、金鞭を揮って、はるかに之を指し示し、玉の飾ある鑣を引きしめて、その方に勿体付けて静々と向って往った。かくて、娘の近くにようやく来たが、車の毅をはさんで、ちょっと尋ねる慵惰、その人は、どこから御出でに成ったか、天上からでも降ってこられたのでは無いか、どうも、只だの人とは見えないようだ。
李太白集 364《太白巻五05 相逢行》 | kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞 fc2ブログ 7398 |
年:743年天寶二年43歳 94首-(48)
卷別: 卷一六五 文體: 樂府
詩題: 相逢行
作地點: 長安(京畿道 / 京兆府 / 長安)
及地點: 銀臺門 (京畿道 京兆府 長安)
霸城門 (京畿道 京兆府 長安) 別名:青門
交遊人物/地點:
相逢行 #1
(貴公子が美人に専ら云い寄ることを詠う。)
朝騎五花馬,謁帝出銀臺。
朝に五花の文ある名馬に跨って参内し、天子に拝謁したる後、銀臺門を出でて歸途に就いた人がある。
秀色誰家子,雲車珠箔開。
すると、かえり途にして秀色抜群の一美人に遇ったが、それは誰が家の娘であらうか。その女は、立派な車に乗り、金玉珠璣の箔を置いた簾を掲げて、外面を見廻わしている。
金鞭遙指點,玉勒近遲回。
そこで前の官人は、金鞭を揮って、はるかに之を指し示し、玉の飾ある鑣を引きしめて、その方に勿体付けて静々と向って往った。
(相逢行) #1
朝に五花の馬に騎し,帝に謁して 銀臺を出ず。
秀色 誰が家の子,雲車 珠箔 開く。
金鞭 遙かに指點,玉勒 近く遲回。
#2
夾轂相借問,疑從天上來。
蹙入青綺門,當歌共銜杯。
銜杯映歌扇,似月雲中見。
相見不得親,不如不相見。
#3
相見情已深,未語可知心。
胡為守空閨,孤眠愁錦衾。
錦衾與羅幃,纏綿會有時。
春風正澹蕩,暮雨來何遲。
#4
願因三青鳥,更報長相思。
光景不待人,須臾髮成絲。
當年失行樂,老去徒傷悲。
持此道密意,毋令曠佳期。
『相逢行』 現代語訳と訳註解説
(本文)
相逢行 #1
朝騎五花馬,謁帝出銀臺。
秀色誰家子,雲車珠箔開。
金鞭遙指點,玉勒近遲回。
詩文(含異文)
#1
朝騎五花馬,謁帝出銀臺。秀色誰家子,雲車珠箔開【雲中珠箔開】。
金鞭遙指點,玉勒近遲回。
(下し文)
(相逢行) #1
朝に五花の馬に騎し,帝に謁して 銀臺を出ず。
秀色 誰が家の子,雲車 珠箔 開く。
金鞭 遙かに指點,玉勒 近く遲回。
(現代語訳)
相逢行 #1(貴公子が美人に専ら云い寄ることを詠う。)
朝に五花の文ある名馬に跨って参内し、天子に拝謁したる後、銀臺門を出でて歸途に就いた人がある。
すると、かえり途にして秀色抜群の一美人に遇ったが、それは誰が家の娘であらうか。その女は、立派な車に乗り、金玉珠璣の箔を置いた簾を掲げて、外面を見廻わしている。
そこで前の官人は、金鞭を揮って、はるかに之を指し示し、玉の飾ある鑣を引きしめて、その方に勿体付けて静々と向って往った。
(訳注)
相逢行 #1
(貴公子が美人に専ら云い寄ることを詠う。)
【一】 相逢行 相逢行は、一に相逢狭路問行ともいい、又長安有狭斜行ともいい、漢人の作に係り、一寸長いが、その古詞の文意は、鶏鳴曲と同じである。
【二】 李白の詩は、以下の《詩経 齊風、還》詩を継承して詠ったもの。
齊国の少年輩が、遊猟の歸途、互に相逢うて、馬が良いとか、乗りっ振りが善いとかいつて、褒め合ふことを述べている。
詩経 齊風
子之還兮 遭我乎峱之閒兮。
並驅從兩肩兮、揖我謂我儇兮。
子の還たる 我に峱【どう】の閒に遭ふ。
竝【なら】び驅せて兩肩を從【お】ふ 我をして揖【ゆう】して我を儇【けん】と謂ふ。
子之茂兮 遭我乎峱之道兮
竝驅從兩牡兮 揖我謂我好兮
子の茂【ばう】なる 我に峱の道に遭ふ。
竝びて驅せて兩牡【りやうぼ】を從ふ 我を揖して我を好【よし】と謂ふ。
子之昌兮 遭我乎峱之陽兮
竝驅從兩狼兮 揖我謂我臧兮
子の昌なる 我に峱【どう】の陽に遭ふ。
竝びて驅りて兩狼を從【お】う 我を揖して我を臧【よし】と謂ふ
年: 731年 開元十九年 31歲
卷別: 卷一六三 文體: 樂府
詩題: 相逢行
作地點:長安(京畿道 / 京兆府 / 長安)
相逢行
相逢紅塵內,高揖黃金鞭。
萬戶垂楊裡,君家阿那邊。
(相い逢うの行)
相い逢う 紅塵の內,高く揖す 黃金の鞭。
萬戶 垂楊の裡,君が家は阿那の邊。
(《詩経 齊風、還》詩を継承して詠ったもの。)
軽装した遊侠の少年が、馬に跨り、紅塵を蹴立てて馳せ行くとき、向うからも同じ様な少年が来て、はたっと出合った。すると、黄金の鞭を軽げに揮いながら、両手を前にたかくして会釈した、
片片が萬家の隠見する垂柳の中を指し、君の御住居は、どの辺でありますかといって尋ねた。
朝騎五花馬,謁帝出銀臺。
朝に五花の文ある名馬に跨って参内し、天子に拝謁したる後、銀臺門を出でて歸途に就いた人がある。
【三】 五花馬 ①美しい毛並みの馬で五色の文を爲すをいう。②青白雑色の馬。③馬の鑣の両端を金の花に、五色の飾り紐が垂れている。いずれにしても貴公子の持ち馬を言う。《巻2-8 將進酒》「主人何為言少錢,徑須沽取對君酌。五花馬,千金裘。呼兒將出換美酒,與爾同銷萬古愁。」(主人 なんすれ 銭少しという、ただちにすべからく沽【か】い取り 君に対して酌むべし。五花の馬 千金の裘。児を呼びもち出でて美酒に換へ、なんじとともに銷【け】さん 万古の愁。)
235-#3李白 89(改訂版)《巻2-8 將進酒 -#3》Index-16Ⅱ―11-736年開元二十四年36歳 <235-#3> Ⅰ李白詩1480 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ5948
【四】 銀臺 雍録載するところの大典大明宮の圖に「紫宸殿側に右銀臺門、左銀臺門あり」と記してある。學士は院門を出でてより、右銀臺門に至るまで、皆歩行して直に至り、すでに宮城の銀臺門外に出でて、それから馬に乗ることに成って居る。
秀色誰家子,雲車珠箔開。
すると、かえり途にして秀色抜群の一美人に遇ったが、それは誰が家の娘であらうか。その女は、立派な車に乗り、金玉珠璣の箔を置いた簾を掲げて、外面を見廻わしている。
【五】 珠箔 金玉珠璣を以て簾に箔が置いてある。
金鞭遙指點,玉勒近遲回。
そこで前の官人は、金鞭を揮って、はるかに之を指し示し、玉の飾ある鑣を引きしめて、その方に勿体付けて静々と向って往った。
【六】 玉勒 勒はくつわ。
相逢行 #1
(貴公子が美人に専ら云い寄ることを詠う。)
朝騎五花馬,謁帝出銀臺。
朝に五花の文ある名馬に跨って参内し、天子に拝謁したる後、銀臺門を出でて歸途に就いた人がある。
秀色誰家子,雲車珠箔開。
すると、かえり途にして秀色抜群の一美人に遇ったが、それは誰が家の娘であらうか。その女は、立派な車に乗り、金玉珠璣の箔を置いた簾を掲げて、外面を見廻わしている。
金鞭遙指點,玉勒近遲回。
そこで前の官人は、金鞭を揮って、はるかに之を指し示し、玉の飾ある鑣を引きしめて、その方に勿体付けて静々と向って往った。
(相逢行) #1
朝に五花の馬に騎し,帝に謁して 銀臺を出ず。
秀色 誰が家の子,雲車 珠箔 開く。
金鞭 遙かに指點,玉勒 近く遲回。
#2
夾轂相借問,疑從天上來。
かくて、娘の近くにようやく来たが、車の毅をはさんで、ちょっと尋ねる慵惰、その人は、どこから御出でに成ったか、天上からでも降ってこられたのでは無いか、どうも、只だの人とは見えないようだ、
蹙入青綺門,當歌共銜杯。
願わくは、これから、一処に青綺門より城中に入り、どこぞ然るべき酒楼に上り、歌を聞きながら、杯を銜んで、酒でも飲みましょうといい、とうとう、之を誘って酒楼に上った。
銜杯映歌扇,似月雲中見。
かくて、杯を口に銜みつつ、歌扇に映ずる美人の顔を倫み見ると、さながら、月が雲間から、ちらり見えたようである。
相見不得親,不如不相見。
そこで、男がいうには、すでに縁あって相見たるに、親しむことができねば、見ない方がましである。
#2
轂を夾んで 相い借問し,天上より來るを疑う。
青綺門に蹙入し,歌に當って共に杯を銜まん。
杯を銜んで歌扇に映ずれば,月を雲中に見るに似たり。
相い見て親しむを得ざれば,相い見ざるに如かず。
#3
相見情已深,未語可知心。
胡為守空閨,孤眠愁錦衾。
錦衾與羅幃,纏綿會有時。
春風正澹蕩,暮雨來何遲。
#4
願因三青鳥,更報長相思。
光景不待人,須臾髮成絲。
當年失行樂,老去徒傷悲。
持此道密意,毋令曠佳期。
『相逢行』 現代語訳と訳註解説
(本文)
#2
夾轂相借問,疑從天上來。
蹙入青綺門,當歌共銜杯。
銜杯映歌扇,似月雲中見。
相見不得親,不如不相見。
(下し文)
#2
轂を夾んで 相い借問し,天上より來るを疑う。
青綺門に蹙入し,歌に當って共に杯を銜まん。
杯を銜んで歌扇に映ずれば,月を雲中に見るに似たり。
相い見て親しむを得ざれば,相い見ざるに如かず。
(現代語訳)
#2
かくて、娘の近くにようやく来たが、車の毅をはさんで、ちょっと尋ねる慵惰、その人は、どこから御出でに成ったか、天上からでも降ってこられたのでは無いか、どうも、只だの人とは見えないようだ、
願わくは、これから、一処に青綺門より城中に入り、どこぞ然るべき酒楼に上り、歌を聞きながら、杯を銜んで、酒でも飲みましょうといい、とうとう、之を誘って酒楼に上った。
かくて、杯を口に銜みつつ、歌扇に映ずる美人の顔を倫み見ると、さながら、月が雲間から、ちらり見えたようである。
そこで、男がいうには、すでに縁あって相見たるに、親しむことができねば、見ない方がましである。
(訳注) #2
相逢行 #1
(貴公子が美人に専ら云い寄ることを詠う。)
1 相逢行 相逢行は、一に相逢狭路問行ともいい、又長安有狭斜行ともいい、漢人の作に係り、一寸長いが、その古詞の文意は、鶏鳴曲と同じである。
夾轂相借問,疑從天上來。
かくて、娘の近くにようやく来たが、車の毅をはさんで、ちょっと尋ねる慵惰、その人は、どこから御出でに成ったか、天上からでも降ってこられたのでは無いか、どうも、只だの人とは見えないようだ、
9 轂 こしき車輪の軸を受ける部分。こしき。「轂下・轂撃 /輦轂」楚辭.屈原.九歌.國殤:「操吳戈兮被犀甲,車錯轂兮短兵接。」(吳戈を操りて 犀甲を被り,車は轂を錯えて 短兵 接す。)
10 借問【しゃもん】ためしに問うこと。ちょっと尋ねてみること。
蹙入青綺門,當歌共銜杯。
願わくは、これから、一処に青綺門より城中に入り、どこぞ然るべき酒楼に上り、歌を聞きながら、杯を銜んで、酒でも飲みましょうといい、とうとう、之を誘って酒楼に上った。
11 青綺門 即ち青門、漢の長安城の東、灞城門のこと。長安の古城門を邈然という場合もある。 古代常用為送別之處。《三輔黃圖‧都城十二門》「長安城 東出南頭第一門曰 霸城門 , 民見門色青, 名曰 青城門 , 或曰 青門」、《廟記》に曰く「霸城門 亦曰 青綺門 。」 李白 《送裴十八圖南歸嵩山之一》「何處可為別, 長安 青綺門 。”亦省作“ <<青綺>>。」
銜杯映歌扇,似月雲中見。
かくて、杯を口に銜みつつ、歌扇に映ずる美人の顔を倫み見ると、さながら、月が雲間から、ちらり見えたようである。
相見不得親,不如不相見。
そこで、男がいうには、すでに縁あって相見たるに、親しむことができねば、見ない方がましである。
相逢行 #1
(貴公子が美人に専ら云い寄ることを詠う。)
朝騎五花馬,謁帝出銀臺。
朝に五花の文ある名馬に跨って参内し、天子に拝謁したる後、銀臺門を出でて歸途に就いた人がある。
秀色誰家子,雲車珠箔開。
すると、かえり途にして秀色抜群の一美人に遇ったが、それは誰が家の娘であらうか。その女は、立派な車に乗り、金玉珠璣の箔を置いた簾を掲げて、外面を見廻わしている。
金鞭遙指點,玉勒近遲回。
そこで前の官人は、金鞭を揮って、はるかに之を指し示し、玉の飾ある鑣を引きしめて、その方に勿体付けて静々と向って往った。
(相逢行) #1
朝に五花の馬に騎し,帝に謁して 銀臺を出ず。
秀色 誰が家の子,雲車 珠箔 開く。
金鞭 遙かに指點,玉勒 近く遲回。
#2
夾轂相借問,疑從天上來。
かくて、娘の近くにようやく来たが、車の毅をはさんで、ちょっと尋ねる慵惰、その人は、どこから御出でに成ったか、天上からでも降ってこられたのでは無いか、どうも、只だの人とは見えないようだ、
蹙入青綺門,當歌共銜杯。
願わくは、これから、一処に青綺門より城中に入り、どこぞ然るべき酒楼に上り、歌を聞きながら、杯を銜んで、酒でも飲みましょうといい、とうとう、之を誘って酒楼に上った。
銜杯映歌扇,似月雲中見。
かくて、杯を口に銜みつつ、歌扇に映ずる美人の顔を倫み見ると、さながら、月が雲間から、ちらり見えたようである。
相見不得親,不如不相見。
そこで、男がいうには、すでに縁あって相見たるに、親しむことができねば、見ない方がましである。
#2
轂を夾んで 相い借問し,天上より來るを疑う。
青綺門に蹙入し,歌に當って共に杯を銜まん。
杯を銜んで歌扇に映ずれば,月を雲中に見るに似たり。
相い見て親しむを得ざれば,相い見ざるに如かず。
#3
相見情已深,未語可知心。
又、ひたすら見つめてみるに、もし御身の情が深いならば、こちら方から語るまえに、その心うちを読めそうなものである。
胡為守空閨,孤眠愁錦衾。
御身は、これほどの美貌を有しながら、如何なるわけがあるのか、ひとり空閏を守って、寂しい寝牀での夢は寒いもの、錦衾の重きをかこちつつあるであろう。
錦衾與羅幃,纏綿會有時。
今はいないお方の錦衾と羅幃を垂れたままでも、御身と心置きなく語り明かす時は、必ず有るであろう。
春風正澹蕩,暮雨來何遲。
今しも、この春風を正に澹蕩として、行楽の好時節であるのに、かの巫山神女の「朝雲暮雨」が、来るのか来ないのか、何と遅い。
#3
相見て 情 已に深ければ,未だ語らざるに心を知る可し。
胡ん為れぞ 空閨を守り,孤眠 錦衾を愁う。
錦衾と羅幃と,纏綿 會らず 時有り。
春風 正に澹蕩,暮雨 來る何ぞ遲き。
#4
願因三青鳥,更報長相思。
光景不待人,須臾髮成絲。
當年失行樂,老去徒傷悲。
持此道密意,毋令曠佳期。
#4
願わくば三青鳥に因って,更に長相思を報ぜん。
光景 人を待たず,須臾にして 髮 絲を成す。
當年 行樂を失い,老去 徒らに傷悲。
此を持って密意を道う,佳期を曠しうせしむる毋【な】かれ。
『相逢行』 現代語訳と訳註解説
(本文)
#3
相見情已深,未語可知心。
胡為守空閨,孤眠愁錦衾。
錦衾與羅幃,纏綿會有時。
春風正澹蕩,暮雨來何遲。
(下し文)
#3
相見て 情 已に深ければ,未だ語らざるに心を知る可し。
胡ん為れぞ 空閨を守り,孤眠 錦衾を愁う。
錦衾と羅幃と,纏綿 會らず 時有り。
春風 正に澹蕩,暮雨 來る何ぞ遲き。
(現代語訳)
#3
又、ひたすら見つめてみるに、もし御身の情が深いならば、こちら方から語るまえに、その心うちを読めそうなものである。
御身は、これほどの美貌を有しながら、如何なるわけがあるのか、ひとり空閏を守って、寂しい寝牀での夢は寒いもの、錦衾の重きをかこちつつあるであろう。
今はいないお方の錦衾と羅幃を垂れたままでも、御身と心置きなく語り明かす時は、必ず有るであろう。
今しも、この春風を正に澹蕩として、行楽の好時節であるのに、かの巫山神女の「朝雲暮雨」が、来るのか来ないのか、何と遅い。
(訳注) #3
相逢行 #3
(貴公子が美人に専ら云い寄ることを詠う。)
1 相逢行 相逢行は、一に相逢狭路問行ともいい、又長安有狭斜行ともいい、漢人の作に係り、一寸長いが、その古詞の文意は、鶏鳴曲と同じである。
相見情已深,未語可知心。
又、ひたすら見つめてみるに、もし御身の情が深いならば、こちら方から語るまえに、その心うちを読めそうなものである。
胡為守空閨,孤眠愁錦衾。
御身は、これほどの美貌を有しながら、如何なるわけがあるのか、ひとり空閏を守って、寂しい寝牀での夢は寒いもの、錦衾の重きをかこちつつあるであろう。
12 錦衾 にしきでつくったりっぱな夜着。《詩經.唐風.葛生》:「角枕粲兮,錦衾爛兮,予美亡此,誰與獨旦。」(角枕 粲たり,錦衾 爛たり,予が美 此に亡し,誰と與に獨り旦【あか】さん。)
錦衾與羅幃,纏綿會有時。
今はいないお方の錦衾と羅幃を垂れたままでも、御身と心置きなく語り明かす時は、必ず有るであろう。
13 羅幃 薄絹の帷。盧照鄰【長安古意】詩:「雙燕雙飛繞畫梁,羅幃翠被鬱金香。」(雙燕 雙飛 畫梁を繞り,羅幃 翠被 金香を鬱す。)
14 纏綿 1 からみつくこと。2 複雑に入り組んでいること。心にまつわりついて離れないさま。
春風正澹蕩,暮雨來何遲。
今しも、この春風を正に澹蕩として、行楽の好時節であるのに、かの巫山神女の「朝雲暮雨」が、来るのか来ないのか、何と遅い。
15 澹蕩 ゆったりしてのどかな・こと(さま)。
16 暮雨 朝雲暮雨《楚 (そ) の懐王が夢の中で契りを交わした神女が、朝には雲に、夕暮れには雨になると言ったという、宋玉「高唐賦」などにみえる故事から》男女の堅い契り。巫山 (ふざん) の雲雨

相逢行 #1
(貴公子が美人に専ら云い寄ることを詠う。)
朝騎五花馬,謁帝出銀臺。
朝に五花の文ある名馬に跨って参内し、天子に拝謁したる後、銀臺門を出でて歸途に就いた人がある。
秀色誰家子,雲車珠箔開。
すると、かえり途にして秀色抜群の一美人に遇ったが、それは誰が家の娘であらうか。その女は、立派な車に乗り、金玉珠璣の箔を置いた簾を掲げて、外面を見廻わしている。
金鞭遙指點,玉勒近遲回。
そこで前の官人は、金鞭を揮って、はるかに之を指し示し、玉の飾ある鑣を引きしめて、その方に勿体付けて静々と向って往った。
(相逢行) #1
朝に五花の馬に騎し,帝に謁して 銀臺を出ず。
秀色 誰が家の子,雲車 珠箔 開く。
金鞭 遙かに指點,玉勒 近く遲回。
#2
夾轂相借問,疑從天上來。
かくて、娘の近くにようやく来たが、車の毅をはさんで、ちょっと尋ねる慵惰、その人は、どこから御出でに成ったか、天上からでも降ってこられたのでは無いか、どうも、只だの人とは見えないようだ、
蹙入青綺門,當歌共銜杯。
願わくは、これから、一処に青綺門より城中に入り、どこぞ然るべき酒楼に上り、歌を聞きながら、杯を銜んで、酒でも飲みましょうといい、とうとう、之を誘って酒楼に上った。
銜杯映歌扇,似月雲中見。
かくて、杯を口に銜みつつ、歌扇に映ずる美人の顔を倫み見ると、さながら、月が雲間から、ちらり見えたようである。
相見不得親,不如不相見。
そこで、男がいうには、すでに縁あって相見たるに、親しむことができねば、見ない方がましである。
#2
轂を夾んで 相い借問し,天上より來るを疑う。
青綺門に蹙入し,歌に當って共に杯を銜まん。
杯を銜んで歌扇に映ずれば,月を雲中に見るに似たり。
相い見て親しむを得ざれば,相い見ざるに如かず。
#3
相見情已深,未語可知心。
又、ひたすら見つめてみるに、もし御身の情が深いならば、こちら方から語るまえに、その心うちを読めそうなものである。
胡為守空閨,孤眠愁錦衾。
御身は、これほどの美貌を有しながら、如何なるわけがあるのか、ひとり空閏を守って、寂しい寝牀での夢は寒いもの、錦衾の重きをかこちつつあるであろう。
錦衾與羅幃,纏綿會有時。
今はいないお方の錦衾と羅幃を垂れたままでも、御身と心置きなく語り明かす時は、必ず有るであろう。
春風正澹蕩,暮雨來何遲。
今しも、この春風を正に澹蕩として、行楽の好時節であるのに、かの巫山神女の「朝雲暮雨」が、来るのか来ないのか、何と遅い。
#3
相見て 情 已に深ければ,未だ語らざるに心を知る可し。
胡ん為れぞ 空閨を守り,孤眠 錦衾を愁う。
錦衾と羅幃と,纏綿 會らず 時有り。
春風 正に澹蕩,暮雨 來る何ぞ遲き。
#4
願因三青鳥,更報長相思。
勿論面と向っては、兎角にうら恥かしく、胸の思いも、十分に述べられぬから、彼の王母の使いと称する三羽の青鳥に言づけて、長く相思うが心を知らせたいものである。
光景不待人,須臾髮成絲。
本当に、まあ、この眼前に広がる情景は人を待たず過行く、緑の髪も、見る間に絲の如く乱れて白髪となる。
當年失行樂,老去徒傷悲。
今しも、行楽の今ある機会を逃さないようにしないといけない、年が寄ってから、徒に悲むばかりで、何の甲斐もないことである。
持此道密意,毋令曠佳期。
そこで、こころに秘める思いを打ち明けて訴えるので、あなたとの佳期というものが曠しいものでないために、どうか、わが願いをかなえてもらいたいものである。
#4
願わくば三青鳥に因って,更に長相思を報ぜん。
光景 人を待たず,須臾にして 髮 絲を成す。
當年 行樂を失い,老去 徒らに傷悲。
此を持って密意を道う,佳期を曠しうせしむる毋【な】かれ。
『相逢行』 現代語訳と訳註解説
(本文)
#4
願因三青鳥,更報長相思。
光景不待人,須臾髮成絲。
當年失行樂,老去徒傷悲。
持此道密意,毋令曠佳期。
詩文(含異文)
願因三青鳥,更報長相思。光景不待人,須臾髮成絲。當年失行樂,老去徒傷悲。持此道密意,毋令曠佳期【案:一本「長相思」下,無此六句。】。
(下し文)
#4
願わくば三青鳥に因って,更に長相思を報ぜん。
光景 人を待たず,須臾にして 髮 絲を成す。
當年 行樂を失い,老去 徒らに傷悲。
此を持って密意を道う,佳期を曠しうせしむる毋【な】かれ。
(現代語訳)
#4
勿論面と向っては、兎角にうら恥かしく、胸の思いも、十分に述べられぬから、彼の王母の使いと称する三羽の青鳥に言づけて、長く相思うが心を知らせたいものである。
本当に、まあ、この眼前に広がる情景は人を待たず過行く、緑の髪も、見る間に絲の如く乱れてしらがとなる。
今しも、行楽の今ある機会を逃さないようにしないといけない、年が寄ってから、徒に悲むばかりで、何の甲斐もないことである。
そこで、こころに秘める思いを打ち明けて訴えるので、あなたとの佳期というものが曠しいものでないために、どうか、わが願いをかなえてもらいたいものである。
(訳注) #4
相逢行 #4
(貴公子が美人に専ら云い寄ることを詠う。)
1 相逢行 相逢行は、一に相逢狭路問行ともいい、又長安有狭斜行ともいい、漢人の作に係り、一寸長いが、その古詞の文意は、鶏鳴曲と同じである。
願因三青鳥,更報長相思。
勿論面と向っては、兎角にうら恥かしく、胸の思いも、十分に述べられぬから、彼の王母の使いと称する三羽の青鳥に言づけて、長く相思うが心を知らせたいものである。
8 青鳥 山海経の西山経に「三危の山、三青鳥、これに居る」とあって、郭僕の註に「三青鳥に、主として、王母の為に食を取るもの、別に自ら此山に棲息するなり。竹書に日く、穆王西征、青鳥の解くところに至るなり」とある。叉大荒西経に「沃の野、三青鳥あり、赤首黒目、一名大鶖といい、一名少鶖といい、一名青とりといふ」とあって、郭璞の註に「皆西王母の使うところなり」とある。
17 長相思 久遠の辞、行人久寿戍、書を寄せて思うところをおくる。夜着の中には「長相思」の綿をつめて、縁のかざりは「結不解」のかがり糸にして、固く結んで解けぬ意をもたせるという女の気持ちを詠う。
李白 長相思【寄遠】,二首之一
日色已盡花含煙,月明欲素愁不眠。
趙瑟初停鳳凰柱,蜀琴欲奏鴛鴦弦。
此曲有意無人傳,願隨春風寄燕然。
憶君迢迢隔青天,昔日橫波目。【昔時橫波目】。
今成流淚泉。
不信妾腸斷,歸來看取明鏡前。
(長相思,二首之一)
日色 已に盡きて 花は煙を含む,月明 素ならんと欲して愁て眠らず。
趙瑟 初めて停む鳳凰の柱,蜀琴 奏せんと欲す 鴛鴦の弦。
此曲 意有れども人の傳うる無し,願くば 春風に隨って燕然に寄せん。
君を憶えば迢迢として青天を隔ち,昔日 橫波の目。
今は流淚の泉と成る。
妾の腸斷つを信ぜざれば,歸り來って明鏡の前へ看取せよ。
光景不待人,須臾髮成絲。
本当に、まあ、この眼前に広がる情景は人を待たず過行く、緑の髪も、見る間に絲の如く乱れて白髪となる。
18 光景 1 目前に広がる景色。眺め。「白銀にかがやく峰々の―」2 ある場面の具体的なありさま。情景。「惨憺 (さんたん) たる―」3 日のひかり。
19 須臾 短い時間。しばらくの間。ほんの少しの間。
當年失行樂,老去徒傷悲。
今しも、行楽の今ある機会を逃さないようにしないといけない、年が寄ってから、徒に悲むばかりで、何の甲斐もないことである。
20 行樂 山野に出たりして,遊び楽しむこと。漢樂府《西門行》詩:“夫為樂,為樂當及時。”《古詩十九首·生年不滿百》:“ 為樂當及時,何能待來茲”。
「出西門、歩念之、今日不作樂、當待何時。夫爲樂、爲樂當及時。」(西門を出で、歩みて之を念う、今日 樂しみを作さずんば、當【まさ】に何れの時をか待つべき。
夫れ樂しみを爲さん、樂しみを爲すには當に時に及ぶべし。
西門行 漢の無名氏 詩<81-#1>Ⅱ李白に影響を与えた詩511 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1350
第十五首
生年不滿百,常懷千歲憂。
晝短苦夜長,何不秉燭遊!
為樂當及時,何能待來茲?
愚者愛惜費,但為後世嗤。
卡人王子喬,難可蜿等期。
生年は百に満たず、常に千歳の憂を懐く。
晝は短くして夜の長きに苦しみ、何ぞ燭を秉って遊ばざる。
欒しみを為すは常に時に及ぶべし、何ぞ能く來茲【らいし】を待たん。
愚者は費を愛惜し、但後世の嗤【わらい】と為るのみ。
仙人王子喬は、蜿【えん】に期を等しうす可きこと難し。
人間は百歳までは生きられないのだ、なのにどうして日夜、千年後のことまで考えて憂いをいだくのである。
秋になると昼が短く、夜が長いのを苦にするようになる、だったらどうして燭を照らして、夜を日につぎ遊ばないのだ。
楽しみを求めるにはつとめて今ある機会を逃さないようにするのがよいのだ。あてにもならない来年のことなど、待ってもどうなるというものではないのである。
愚かな者は、いたずらに費用を出し惜しんで金をためるものだが、そうであればただ後の人々に笑われるだけである。
王子喬は仙人になり不老長生を得たと伝えるが、常人にはうねうね続く年寿をすべきであっても、とてもできないことなのだ。
古詩十九首之十五 漢の無名氏(15) 漢詩<102>Ⅱ李白に影響を与えた詩536 漢文委員会紀頌之の漢詩ブログ1425
持此道密意,毋令曠佳期。
そこで、こころに秘める思いを打ち明けて訴えるので、あなたとの佳期というものが曠しいものでないために、どうか、わが願いをかなえてもらいたいものである。
21 佳期 こころよい季節。男女の逢う約束。あいびきの時。李白『大堤曲』「漢水臨襄陽。花開大堤暖。佳期大堤下。淚向南云滿。」 謝靈運 《石門在永嘉》 #1
躋険築幽居、披雲臥石門。
苔滑誰能歩、葛弱豈可捫。
嫋嫋秋風過、萋萋春草繁。
美人遊不遠、佳期何繇敦。』
(石門は永嘉に在り)#1
険に躋【のぼ】りて幽居を築き、雲を披【ひら】きて石門に臥す。
苔は滑【なめ】らかにして誰か能く歩せん、葛は弱くして豈捫る可けんや。
嫋嫋【じょうじょう】と秋風が過ぎ、萋萋【せいせい】と春草も繁り。
美人は遊びて還らず、佳期は何に繇【よ】りてか敦【さだ】めん。
《石門新營所住四面高山回溪石瀨修竹茂林》石門在永嘉 謝霊運<30>#2 詩集 405 kanbuniinkai紀 頌之漢詩ブログ1032
李白 相逢行 【字解】
【1】 相逢行 相逢行は、一に相逢狭路問行ともいい、又長安有狭斜行ともいい、漢人の作に係り、一寸長いが、その古詞の文意は、鶏鳴曲と同じである。
【2】 李白の詩は、以下の《詩経 齊風、還》詩を継承して詠ったもの。
齊国の少年輩が、遊猟の歸途、互に相逢うて、馬が良いとか、乗りっ振りが善いとかいつて、褒め合ふことを述べている。
詩経 齊風
子之還兮 遭我乎峱之閒兮。
並驅從兩肩兮、揖我謂我儇兮。
子の還たる 我に峱【どう】の閒に遭ふ。
竝【なら】び驅せて兩肩を從【お】ふ 我をして揖【ゆう】して我を儇【けん】と謂ふ。
子之茂兮 遭我乎峱之道兮
竝驅從兩牡兮 揖我謂我好兮
子の茂【ばう】なる 我に峱の道に遭ふ。
竝びて驅せて兩牡【りやうぼ】を從ふ 我を揖して我を好【よし】と謂ふ。
子之昌兮 遭我乎峱之陽兮
竝驅從兩狼兮 揖我謂我臧兮
子の昌なる 我に峱【どう】の陽に遭ふ。
竝びて驅りて兩狼を從【お】う 我を揖して我を臧【よし】と謂ふ
年: 731年 開元十九年 31歲
卷別: 卷一六三 文體: 樂府
詩題: 相逢行
作地點:長安(京畿道 / 京兆府 / 長安)
相逢行
相逢紅塵內,高揖黃金鞭。
萬戶垂楊裡,君家阿那邊。
(相い逢うの行)
相い逢う 紅塵の內,高く揖す 黃金の鞭。
萬戶 垂楊の裡,君が家は阿那の邊。
(《詩経 齊風、還》詩を継承して詠ったもの。)
軽装した遊侠の少年が、馬に跨り、紅塵を蹴立てて馳せ行くとき、向うからも同じ様な少年が来て、はたっと出合った。すると、黄金の鞭を軽げに揮いながら、両手を前にたかくして会釈した、
片片が萬家の隠見する垂柳の中を指し、君の御住居は、どの辺でありますかといって尋ねた。
【3】 五花馬 美しい毛並みの馬。青白雑色の馬。《巻2-8 將進酒》「主人何為言少錢,徑須沽取對君酌。五花馬,千金裘。呼兒將出換美酒,與爾同銷萬古愁。」(主人 なんすれ 銭少しという、ただちにすべからく沽【か】い取り 君に対して酌むべし。五花の馬 千金の裘。児を呼びもち出でて美酒に換へ、なんじとともに銷【け】さん 万古の愁。)
【4】 銀臺 雍録載するところの大典大明宮の圖に「紫宸殿側に右銀臺門、左銀臺門あり」と記してある。學士は院門を出でてより、右銀臺門に至るまで、皆歩行して直に至り、すでに宮城の銀臺門外に出でて、それから馬に乗ることに成って居る。
【5】 珠箔 金玉珠璣を以て簾に箔が置いてある。
【6】 玉勒 勒はくつわ。
【7】 青綺門 水経註に「長安東に出づ、第三門、本と覇城門と名づく。民、その門色の青きを見て、叉青城門と名づけ、或は青綺門といひ、亦た青門という」とある。
【8】 青鳥 山海経の西山経に「三危の山、三青鳥、これに居る」とあって、郭僕の註に「三青鳥に、主として、王母の為に食を取るもの、別に自ら此山に棲息するなり。竹書に日く、穆王西征、青鳥の解くところに至るなり」とある。叉大荒西経に「沃の野、三青鳥あり、赤首黒目、一名大鶖といい、一名少鶖といい、一名青とりといふ」とあって、郭璞の註に「皆西王母の使うところなり」とある。
9 轂 こしき車輪の軸を受ける部分。こしき。「轂下・轂撃 /輦轂」楚辭.屈原.九歌.國殤:「操吳戈兮被犀甲,車錯轂兮短兵接。」(吳戈を操りて 犀甲を被り,車は轂を錯えて 短兵 接す。)
10 借問【しゃもん】ためしに問うこと。ちょっと尋ねてみること。
11 青綺門 即ち青門、漢の長安城の東、灞城門のこと。長安の古城門を邈然という場合もある。 古代常用為送別之處。《三輔黃圖‧都城十二門》「長安城 東出南頭第一門曰 霸城門 , 民見門色青, 名曰 青城門 , 或曰 青門」、《廟記》に曰く「霸城門 亦曰 青綺門 。」 李白 《送裴十八圖南歸嵩山之一》「何處可為別, 長安 青綺門 。”亦省作“ <<青綺>>。」
12 錦衾 にしきでつくったりっぱな夜着。《詩經.唐風.葛生》:「角枕粲兮,錦衾爛兮,予美亡此,誰與獨旦。」(角枕 粲たり,錦衾 爛たり,予が美 此に亡し,誰と與に獨り旦【あか】さん。)
13 羅幃 薄絹の帷。盧照鄰【長安古意】詩:「雙燕雙飛繞畫梁,羅幃翠被鬱金香。」(雙燕 雙飛 畫梁を繞り,羅幃 翠被 金香を鬱す。)
14 纏綿 1 からみつくこと。2 複雑に入り組んでいること。心にまつわりついて離れないさま。
15 澹蕩 ゆったりしてのどかな・こと(さま)。
16 暮雨 朝雲暮雨《楚 (そ) の懐王が夢の中で契りを交わした神女が、朝には雲に、夕暮れには雨になると言ったという、宋玉「高唐賦」などにみえる故事から》男女の堅い契り。巫山 (ふざん) の雲雨
17 長相思 久遠の辞、行人久寿戍、書を寄せて思うところをおくる。夜着の中には「長相思」の綿をつめて、縁のかざりは「結不解」のかがり糸にして、固く結んで解けぬ意をもたせるという女の気持ちを詠う。
李白 長相思【寄遠】,二首之一
日色已盡花含煙,月明欲素愁不眠。
趙瑟初停鳳凰柱,蜀琴欲奏鴛鴦弦。
此曲有意無人傳,願隨春風寄燕然。
憶君迢迢隔青天,昔日橫波目。【昔時橫波目】。
今成流淚泉。
不信妾腸斷,歸來看取明鏡前。
(長相思,二首之一)
日色 已に盡きて 花は煙を含む,月明 素ならんと欲して愁て眠らず。
趙瑟 初めて停む鳳凰の柱,蜀琴 奏せんと欲す 鴛鴦の弦。
此曲 意有れども人の傳うる無し,願くば 春風に隨って燕然に寄せん。
君を憶えば迢迢として青天を隔ち,昔日 橫波の目。
今は流淚の泉と成る。
妾の腸斷つを信ぜざれば,歸り來って明鏡の前へ看取せよ。
18 光景 1 目前に広がる景色。眺め。「白銀にかがやく峰々の―」2 ある場面の具体的なありさま。情景。「惨憺 (さんたん) たる―」3 日のひかり。
19 須臾 短い時間。しばらくの間。ほんの少しの間。
20 行樂 山野に出たりして,遊び楽しむこと。漢樂府《西門行》詩:“夫為樂,為樂當及時。”《古詩十九首·生年不滿百》:“ 為樂當及時,何能待來茲”。
「出西門、歩念之、今日不作樂、當待何時。夫爲樂、爲樂當及時。」(西門を出で、歩みて之を念う、今日 樂しみを作さずんば、當【まさ】に何れの時をか待つべき。
夫れ樂しみを爲さん、樂しみを爲すには當に時に及ぶべし。
西門行 漢の無名氏 詩<81-#1>Ⅱ李白に影響を与えた詩511 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1350
第十五首
生年不滿百,常懷千歲憂。
晝短苦夜長,何不秉燭遊!
為樂當及時,何能待來茲?
愚者愛惜費,但為後世嗤。
卡人王子喬,難可蜿等期。
生年は百に満たず、常に千歳の憂を懐く。
晝は短くして夜の長きに苦しみ、何ぞ燭を秉って遊ばざる。
欒しみを為すは常に時に及ぶべし、何ぞ能く來茲【らいし】を待たん。
愚者は費を愛惜し、但後世の嗤【わらい】と為るのみ。
仙人王子喬は、蜿【えん】に期を等しうす可きこと難し。
人間は百歳までは生きられないのだ、なのにどうして日夜、千年後のことまで考えて憂いをいだくのである。
秋になると昼が短く、夜が長いのを苦にするようになる、だったらどうして燭を照らして、夜を日につぎ遊ばないのだ。
楽しみを求めるにはつとめて今ある機会を逃さないようにするのがよいのだ。あてにもならない来年のことなど、待ってもどうなるというものではないのである。
愚かな者は、いたずらに費用を出し惜しんで金をためるものだが、そうであればただ後の人々に笑われるだけである。
王子喬は仙人になり不老長生を得たと伝えるが、常人にはうねうね続く年寿をすべきであっても、とてもできないことなのだ。
古詩十九首之十五 漢の無名氏(15) 漢詩<102>Ⅱ李白に影響を与えた詩536 漢文委員会紀頌之の漢詩ブログ1425
21 佳期 こころよい季節。男女の逢う約束。あいびきの時。李白『大堤曲』「漢水臨襄陽。花開大堤暖。佳期大堤下。淚向南云滿。」 謝靈運 《石門在永嘉》 #1
躋険築幽居、披雲臥石門。
苔滑誰能歩、葛弱豈可捫。
嫋嫋秋風過、萋萋春草繁。
美人遊不遠、佳期何繇敦。』
(石門は永嘉に在り)#1
険に躋【のぼ】りて幽居を築き、雲を披【ひら】きて石門に臥す。
苔は滑【なめ】らかにして誰か能く歩せん、葛は弱くして豈捫る可けんや。
嫋嫋【じょうじょう】と秋風が過ぎ、萋萋【せいせい】と春草も繁り。
美人は遊びて還らず、佳期は何に繇【よ】りてか敦【さだ】めん。
《石門新營所住四面高山回溪石瀨修竹茂林》石門在永嘉 謝霊運<30>#2 詩集 405 kanbuniinkai紀 頌之漢詩ブログ1032
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