古風五十九首 其十一 李白 



古風五十九首 其十一
黃河走東溟、白日落西海。
黄河の流れははるか東の海にむかって走り、太陽は西方の海に落ちる
逝川與流光、飄忽不相待。
すぎゆく川の流れも、光矢のようにはやく流れる時間も、たちまちのことであり、人を待ってはくれない。
春容舍我去、秋髪已衰改。
青春の顔かたちはわたしを捨てて変わってしまった。頭はすでに秋霜のような白髪哀しくも変わってしまった。
人生非寒松、年貌豈長在。
人間の生命は、寒い冬がきても葉を落さない松の木のようにはいかないのだ。年齢と容貌は、長く同じところにいてくれないのだ。
吾當乘云螭、吸景駐光彩
わたしは、幸運の竜の背に乗って日月の光を吸いとり、流れる五色の光矢時間をひきとめたいと思う。


黄河の流れははるか東の海にむかって走り、太陽は西方の海に落ちる
すぎゆく川の流れも、光矢のようにはやく流れる時間も、たちまちのことであり、人を待ってはくれない。
青春の顔かたちはわたしを捨てて変わってしまった。頭はすでに秋霜のような白髪哀しくも変わってしまった。
人間の生命は、寒い冬がきても葉を落さない松の木のようにはいかないのだ。年齢と容貌は、長く同じところにいてくれないのだ。

わたしは、幸運の竜の背に乗って日月の光を吸いとり、流れる五色の光矢時間をひきとめたいと思う。


古風五十九首 古風其の十一
黃河は 東溟に走り、 白日は西海に落つ。
逝川と 流光と、 飄忽として 相待たず。
春容 我を舍てて去り、 秋髪 已に衰改す。
人生は 寒松に非ず、年貌 豈に長えに在らんや。
吾 当に雲螭に乗じ、景を吸うて 光彩を駐むべし。

 

黃河走東溟、白日落西海。
黄河の流れははるか東の海にむかって走り、太陽は西方の海に落ちる。
東溟 はるか東の海。○西海 中国人は大地の四方に海があると意識していた。天竺の向こうには大海がある。中国人の宇宙観であり、道教の教えでもある。


逝川與流光、飄忽不相待。
すぎゆく川の流れも、光矢のようにはやく流れる時間も、たちまちのことであり、人を待ってはくれない。
逝川 流れゆく川。むかし孔子が川のほとりに立って流れゆく水を見て言った。「逝く者は斯の如き夫、昼夜を合かず。」そのコトバが連想される。○流光 光矢のようにはやく流れさる時間。○飄忽 急なさま。たちまち。



春容舍我去、秋髪已衰改。
青春の顔かたちはわたしを捨てて変わってしまった。頭はすでに秋霜のような白髪哀しくも変わってしまった。
春容 青春の日の容貌。青春の顔かたち。○秋髪 晩年の白髪。
 


人生非寒松、年貌豈長在。
人間の生命は、寒い冬がきても葉を落さない松の木のようにはいかないのだ。年齢と容貌は、長く同じところにいてくれないのだ。
寒松 寒い冬がきても葉を落さない松の木。〇年貌 年齢と容貌。

 

吾當乘云螭。 吸景駐光彩。
わたしは、幸運の竜の背に乗って日月の光を吸いとり、流れる五色の光矢時間をひきとめたいと思う。
雲螭 螭竜の一種。螭は額に角を持たない龍のことを言う。龍から角を取った感じだ。山や沢に棲む小さな龍で、色は赤や白、あるいは蒼色のものがいる。螭はとりわけ岩や木陰などの湿った場所を好むという。そして小さな虫や動物を食べて生きている。人目に触れる場所にはあまり出没しないという。螭が湿った場所を好むのか、螭が棲む場所を湿らせるのかはよく分からないが、螭がいなくなったためにその場所から湿気がなくなったという話も残されているという。仙界の幸運のいきもの。○吸景 日月の景を吸う。景は、ひかり。○光彩 ひかり。