古風五十九首 其十五 李白


古風五十九首 其十五 
燕昭延郭隗、遂築黄金臺。
むかし燕の昭王は、「まず隗より始めよ」と郭隗をひきたて、ついには黄金台まできずいて天下の英才をまねいた。
劇辛方趙至、鄒衍復斉來。
劇辛は、はたして趙からやって来た。鄒衍も、つづいて斉からやって来た。
奈何青雲士、棄我如塵挨。
ところが、なんということだ、青雲の上に立身出世したやつどもは、われわれを塵や挨のように棄ててかえりみないではないか。
珠玉買歌笑、糟糠養賢才。
珠玉を美人の歌や笑いのために惜しまず買うが、糠や糟でもって賢才を養おうと思っているのか。
方知黄鶴擧、千里濁徘徊。

いまこそ十分に理解した、黄い鶴が舞いあがるように崇高な志をもつ者は、千里をひとりで飛びまわるものなのだ。



むかし燕の昭王は、「まず隗より始めよ」と郭隗をひきたて、ついには黄金台まできずいて天下の英才をまねいた。
劇辛は、はたして趙からやって来た。鄒衍も、つづいて斉からやって来た。
ところが、なんということだ、青雲の上に立身出世したやつどもは、われわれを塵や挨のように棄ててかえりみないではないか。
珠玉を美人の歌や笑いのために惜しまず買うが、糠や糟でもって賢才を養おうと思っているのか。
いまこそ十分に理解した、黄い鶴が舞いあがるように崇高な志をもつ者は、千里をひとりで飛びまわるものなのだ。

その十五
燕昭 郭隗を延き、遂(か)くて 黄金台を築けり。
劇辛は 万に趙より至り、鄒衍も 復た斉より来れり。
奈何ぞ 青雲の士、我を棄つること 塵挨の如くなるや。
珠玉もて 歌笑を買い、糟糠もて 賢才を養う。
方に知る 黄鶴の挙りて、千里に 独り徘徊するを。



燕昭延郭隗、遂築黄金臺。
むかし燕の昭王は、「まず隗より始めよ」と郭隗をひきたて、ついには黄金台まできずいて天下の英才をまねいた。
燕昭 戦国時代の燕の昭王。○郭隗 昭王の臣、「先ず隗より始めよ」の故事で有名。昭王は、一時とはいえ燕を亡国に追い込んだ斉を深く憎み、いつか復讐したいと願っていた。しかし当時の斉は秦と並んで最強国であり、燕の国力では非常に難しい問題であった。昭王は人材を集めることを願い、どうしたら人材が来てくれるかを家臣の郭隗に聞いた。郭隗の返答は「まず私を優遇してください。さすれば郭隗程度でもあのようにしてくれるのだから、もっと優れた人物はもっと優遇してくれるに違いないと思って人材が集まってきます。」と答え、昭王はこれを容れて郭隗を師と仰ぎ、特別に宮殿を造って郭隗に与えた。これは後世に「まず隗より始めよ」として有名な逸話になった。郭隗の言う通りに、燕には名将楽毅は魏の国から、鄒衍は斉の国から、劇辛は趙の国から、蘇秦の弟蘇代など、続々と人材が集まってきた。また、時期は不明であるが、昭王は不老不死の仙人を求めて東方の海上に人を派遣したという。これらの人材を使い、昭王は燕の改革・再建を進めた。○黄金台 易水の東南にあって、昭王が、千金を台の上に置き、天下の士を招いたという。



劇辛方趙至、鄒衍復斉來。
劇辛は、はたして趙からやって来た。鄒衍も、つづいて斉からやって来た。



奈何青雲士、棄我如塵挨。
ところが、なんということだ、青雲の上に立身出世したやつどもは、われわれを塵や挨のように棄ててかえりみないではないか
青雲士 立身出世してしまった人。



珠玉買歌笑、糟糠養賢才。
珠玉を美人の歌や笑いのために惜しまず買うが、糠や糟でもって賢才を養おうと思っているのか。



方知黄鶴擧、千里濁徘徊。
いまこそ十分に理解した、黄い鶴が舞いあがるように崇高な志をもつ者は、千里をひとりで飛びまわるものなのだ。
万知 いまこそ十分に、理解できる。