假山 杜甫 
天宝1載 742年 31歳、この年結婚している。
天宝の初、我が太夫人の堂下に於て、土を塁ねてに慈竹を植え、この詩を作る。


假  山(仮 山)
天賓初。南曹小司冠男。於我太夫人堂下。
塁土馬山。一匿盈尺。以代彼朽木。承諸焚香瓷甌。
甌甚安夫。旁植慈竹。蓋立教峰。嶔岑嬋娟
宛有塵外致。乃不知興之所至。而作是詩。

天宝の初、自分のおじで小司寇の官で吏部省の南曹の兼官の人が、我が継祖母の太夫人の堂の下に、土をもってつき山をつくった。一モッコで高さ一尺になる。普通に作る木製の朽木の台に代えて、香を焚く陶器の壺を載せるのだ。のせてみると壺のすわりが安定している。そのそばに慈竹を植えた。築山のそびえが嶺のようで、竹の色もちょうどいい。とがったりまるまったり、神の御庭のような趣がある。じぶんは面白さをおぼえてこの詩を作った。
○仮山 つきやま。○天宝 唐の玄宗の年号742-756。○南曹小司寇舅 舅は母方のおじをいう、其の人については未詳。南曹とは吏部省の南曹で兼官であり、小司寇は舅の本官である。○太夫人 作者の祖父、杜審言の継室慮氏をさす。慮氏は天宝三載五月陳留で歿した。○塁 累と同じ。○匱 簣の作もある、モッコのこと。○朽木 くちた木。普通ならば香炉の台などは木で造る。○承 うける、のせる。○套甑 すえもののつぼ。○安 おちつきのよいこと。○慈竹 しのだけの類。○数峰 土山の峰をいう。○巌卑 山のけわしいさま。○輝娼 竹のうつくしいさま。○致 おもむき。○所至 至とは極まるをいう



假山
一匱功盈尺、三峰意出羣。
一モッコの土を盛りあげて一尺あまりの山をつくりあげた。その山の三つの峰は他の羣峰よりも傑出しているかとみるのだ。
望中疑在野、幽處欲生雲。
これをながめると広野にでもいるのかとみまちがえるほどだ、その奥ふかき静まった処からは雲が沸き起こるかとおもわれる。
慈竹春陰覆、香爐暁勢分。
慈竹は春のくもりを得て平地をおおい、香炉からは暁の煙が幾筋か分れてたちのぼっている。
惟南将獻壽、佳氣日氤氳。 

この土山は彼の尊き南山のようにそのことほぎを祖母に奉るかのように日々その周囲にめでたい気をただよわせている。

一置功尺に盈つ 三峰意羣を出づ
望中野に在るかと疑う 幽処雲を生ぜんと欲す
慈竹春陰覆う 香炉暁勢分る
惟れ南将に寿を献ぜんとす 佳気日に氤氳(いんうん)たり


 現代語訳と訳註
(本文)
假山
一匱功盈尺、三峰意出羣。
望中疑在野、幽處欲生雲。
慈竹春陰覆、香爐暁勢分。
惟南将獻壽、佳氣日氤氳。

(下し文)
一置功尺に盈つ 三峰意羣を出づ
望中野に在るかと疑う 幽処雲を生ぜんと欲す
慈竹春陰覆う 香炉暁勢分る
惟れ南将に寿を献ぜんとす 佳気日に氤氳(いんうん)たり

(現代語訳)
一モッコの土を盛りあげて一尺あまりの山をつくりあげた。その山の三つの峰は他の羣峰よりも傑出しているかとみるのだ。
これをながめると広野にでもいるのかとみまちがえるほどだ、その奥ふかき静まった処からは雲が沸き起こるかとおもわれる。
慈竹は春のくもりを得て平地をおおい、香炉からは暁の煙が幾筋か分れてたちのぼっている。
この土山は彼の尊き南山のようにそのことほぎを祖母に奉るかのように日々その周囲にめでたい気をただよわせている。

(訳注)
一匱功盈尺、三峰意出羣。
一モッコの土を盛りあげて一尺あまりの山をつくりあげた。その山の三つの峰は他の羣峰よりも傑出しているかとみるのだ。
功 土盛りのわざをいう。〇三峰 土山の数。○ 峰を活物としてみる。○出羣 同類より傑出している。


望中疑在野、幽處欲生雲。

これをながめると広野にでもいるのかとみまちがえるほどだ、その奥ふかき静まった処からは雲が沸き起こるかとおもわれる。

在野 堂下とは思えぬ荒野にいるようなさま。○幽処 おくふかいしずかなところ。○春陰 春時のくもり。


慈竹春陰覆、香爐暁勢分。
慈竹は春のくもりを得て平地をおおい、香炉からは暁の煙が幾筋か分れてたちのぼっている。
暁勢 勢とは香煙の勢い。○惟南 南は南山をいう、「詩経」に「南山之寿ノ如シ」とある。


惟南将獻壽、佳氣日氤氳。 
この土山は彼の尊き南山のようにそのことほぎを祖母に奉るかのように日々その周囲にめでたい気をただよわせている。
佳気 めでたい気、山の気をいう。○氤氳 もやもやしているさ


(詩題の下し文)
天宝の初、南曹の小司寇男、我が太夫人の堂下に於て、土を塁ねてつき山を為る。一置尺に盈つ。以て彼の朽木に代え、諸の香を焚く瓷甌を永く、甌甚だ安かなり。傍らに慈竹を植う。蓋し嘉の数峰、嶔岑嬋娟として宛も塵外の致有り。乃ち興の至る所を知らず、而して是の詩を作る