贈銭徴君少陽 李白
古風 其二十三 に「夜夜當秉燭」とあった。
「秉燭唯須飲」(燭を秉って唯須らく飲べし。) 
李白の竹渓の六逸であった友の呉筠も銭少陽と前後して朝廷に上がっている。資料にあるわけではないが銭少陽も李白の仕官に手助けをしたかもしれない。明るい性格の李白らしい相手の気持ちをよく汲んだ贈る言葉である。

贈銭徴君少陽
白玉一盃酒、緑楊三月時。
白い玉の杯にいっぱいの酒。線したたる柳のうつくしい三月の季節。
春風餘幾日、兩鬢各成絲。
春風がふく日は、もうあと幾日のこっているだろうか。左右のビンの毛は、糸のように衰えてしまった
秉燭唯須飲、投竿也未遲。
ともし火をかかげて、ただ飲むにかぎる。しかし、これから竿を投げすてて太公望のように活躍するのも、まだまだ、おそくはない。
如逢渭川獵、猶可帝王師。
もしも、渭川で猟をした文王のような人にあえるならば、やはり、帝王の軍師となれることであろう。

白い玉の杯にいっぱいの酒。線したたる柳のうつくしい三月の季節。
春風がふく日は、もうあと幾日のこっているだろうか。左右のビンの毛は、糸のように衰えてしまった
ともし火をかかげて、ただ飲むにかぎる。しかし、これから竿を投げすてて太公望のように活躍するのも、まだまだ、おそくはない。
もしも、渭川で猟をした文王のような人にあえるならば、やはり、帝王の軍師となれることであろう。

(下し文)

白玉 一盃の酒、緑楊 三月の時。
春風 幾日をか余す、兩鬢(りょうびん) 各々 絲を成す
燭を秉(と)って唯須らく飲むべし、竿を投ずること 也(ま)た 未だ遅から じ
如(も)し 渭川の獵に逢わば、猶 帝王の師たるべし。


贈銭徴君少陽
せんちょう くんしょう ようにおくる。
銭徴君少陽 銭少陽という人のくわしい事跡は、わからない。徴君というのは、天子の特別の命令で朝廷に召
された人。

白玉一盃酒、緑楊三月時。
白い玉の杯にいっぱいの酒。綠したたる柳のうつくしい三月の季節。

春風餘幾日、兩鬢各成絲。
春風がふく日は、もうあと幾日のこっているだろうか。左右のビンの毛は、糸のように衰えてしまった

秉燭唯須飲、投竿也未遲
ともし火をかかげて、ただ飲むにかぎる。しかし、これから竿を投げすてて太公望のように活躍するのも、まだまだ、おそくはない。
○秉燭 古詩に「昼は短かく、夜の長きを苦しむ。何ぞ燭を秉って遊ばざる」とある。ともし火を手にとる。○投竿 釣竿を投げすてて漁師の境涯を去る。以下、太公望の故事をふまえる。

如逢渭川獵、猶可帝王師。
もしも、渭川で猟をした文王のような人にあえるならば、やはり、帝王の軍師となれることであろう。
渭川獵 渭川獵、黄河の支流で、長安の北を流れる川。周の文王は、渭水の北に猟をしたとき、そこで釣をしていた呂尚にめぐりあい、かねがね望んでいた人物なので太公望と名づけ、連れて帰って軍師として尊んだ。太公望は、この時すでに八十歳の老人であったが、この詩の銭少陽もまた、八十何歳になっていたので、太公望になぞらえたということである。