同李太守登歷下古城員外新亭 杜甫

李之芳が造った歴下の古城の新字にのぼって李邕が詩を作った。此の詩はそれに和したものである。

同李太守登歷下古城員外新亭
李太守が歴下にある古城の駕部員外郎李之芳の新亭に登って、李太守の詩に唱和した。
新亭結構罷,隱見清湖陰。
新しい亭が組み立てられよく仕上がっている、そこは清らかな鵲山湖の南に見え隠れしている。
跡籍台觀舊,氣冥海嶽深。
この場所は、まえあった道教の台観を利用してそのまま建てたのであり、其のあたりには仙人の靄が立ち込め静かなたたずまい遠くには海岳が望める。
圓荷想自昔,遺堞感至今。』
水中のはす葉は、昔からはえて渝處ある感じで自然になじんでいる。台観にあったひめがきが残っていることは今日までのよくこっていたと感心するのである。』
芳宴此時具,哀絲千古心。
酒肉の芬芳な宴席ということでこの時、御馳走が十分に並べられた、席上に奏でられる哀しき琴音は千古の情にさそわれるようだ。
主稱壽尊客,筵秩宴北林。
主人たる李之芳君はお礼をのべて尊客である李邕公に一家の弥栄を祈ったのだ、賓客は泥酔するものはなく湖面に面した北林で酒を飲んだ。
不阻蓬蓽興,得兼梁甫吟。』

自分のようないまだ粗末な門しか作っていないものまでお招きにあずかり、その上小山の分際の私が詠う諸葛亮の好んだ歌「梁甫吟」を披露させていただいた。


李太守が歴下にある古城の駕部員外郎李之芳の新亭に登って、李太守の詩に唱和した。
新しい亭が組み立てられよく仕上がっている、そこは清らかな鵲山湖の南に見え隠れしている。
この場所は、まえあった道教の台観を利用してそのまま建てたのであり、其のあたりには仙人の靄が立ち込め静かなたたずまい遠くには海岳が望める。
水中のはす葉は、昔からはえて渝處ある感じで自然になじんでいる。台観にあったひめがきが残っていることは今日までのよくこっていたと感心するのである。』
酒肉の芬芳な宴席ということでこの時、御馳走が十分に並べられた、席上に奏でられる哀しき琴音は千古の情にさそわれるようだ。
主人たる李之芳君はお礼をのべて尊客である李邕公に一家の弥栄を祈ったのだ、賓客は泥酔するものはなく湖面に面した北林で酒を飲んだ。
自分のようないまだ粗末な門しか作っていないものまでお招きにあずかり、その上小山の分際の私が詠う諸葛亮の好んだ歌「梁甫吟」を披露させていただいた。


(李太守が歴下の古城の員外の新亭に登るに同す)
新亭結構罷む 隠見す清湖の陰(みなみ)
跡は台観の旧なるに籍(よ)る 気冥(くら)くして海岳深し
円荷 昔よりするを想う 遺堞(いちょう)今に至るに感ず』
芳宴 此の時具(そなわ)る 哀糸千古の心
主は称して尊客に寿す 筵秩(えんちつ)北林に宴す
蓬蓽(ほうひつ)の興を阻(へだ)てず 梁甫の吟を兼ぬることを得たり』

同李太守登歷下古城員外新亭
李太守が歴下にある古城の駕部員外郎李之芳の新亭に登って、李太守の詩に唱和した。
(李太守が歴下の古城の員外の新亭に登るに同す)
 他人の詩に和して作ること。○李太守 前詩にみえる北海太守李邕。○登歴下古城員外新亭 歴下古城とは今の済南府歴城県治の西にあった城という。員外とは駕部員外郎李之芳をさす。新事とは前詩の歴下の草とはちがい李之芳が新につくったとおる亭をさす。李邕の詩の序に「亭ハ鵲湖二対ス」とあるのからすれば新亭は鵲湖に近い所にあったのである。鵲湖は鵲山湖で今の歴城県北80kmにある。この2年後に李太守は李林甫に殺される。

新亭結構罷,隱見清湖陰。
新しい亭が組み立てられよく仕上がっている、そこは清らかな鵲山湖の南に見え隠れしている。
結構 くみたてること。○隠見 気象の明晦によってみえたり隠れたりする。〇清湖 鵲山湖をさす。○陰 水の南を陰という、亭は湖の南にある。


跡籍台觀舊,氣冥海嶽深。

この場所は、まえあった道教の台観を利用してそのまま建てたのであり、其のあたりには仙人の靄が立ち込め静かなたたずまい遠くには海岳が望める。
○跡 亭の地址をいう。○ 籍と通じ、よる。〇台観 高地にある道教のてら。○気冥 亭のあたりを往来する雲煙などの気がくらい。○海岳深 東海と東岳、深とは深遠なことをいう。

圓荷想自昔,遺堞感至今。
水中のはす葉は、昔からはえて渝處ある感じで自然になじんでいる。台観にあったひめがきが残っていることは今日までのよくこっていたと感心するのである。』
円荷 まるいはすの葉、湖中の物。○遺堞 のこっている台観のひめがき。

芳宴此時具,哀絲千古心。
酒肉の芬芳な宴席ということでこの時、御馳走が十分に並べられた、席上に奏でられる哀しき琴音は千古の情にさそわれるようだ。
芳宴 芳とは酒肉の芬芳なることをいい、宴は宴事をいう。○ 具備する、不足する所のないこと。○哀糸 哀しい琴のいと。○千古心 懐古の心をうごかすことをいう。

主稱壽尊客,筵秩宴北林。
主人たる李之芳君はお礼をのべて尊客である李邕公に一家の弥栄を祈ったのだ、賓客は泥酔するものはなく湖面に面した北林で酒を飲んだ。
主称 主は主人、李之芳をさす。称は口でとなえること。○寿 一家の弥栄を祈ること。○尊客 李邕をさす。○筵秩 筵席の秩序あること。○ 宴飲をなすことをいう。○北林 北の林。亭は湖の南に在るから北林は湖に面する位置になる。

不阻蓬蓽興,得兼梁甫吟。
自分のようないまだ粗末な門しか作っていないものまでお招きにあずかり、その上小山の分際の私が詠う諸葛亮の好んだ歌「梁甫吟」を披露させていただいた。
不阻 阻は阻隔すること、不阻とは近づけることをいう。○蓬蓽興 蓬戸車門の興。蓬戸はよもぎであんだ戸、草門はいばら、竹をもって織った門、いぶせきふせやのこと。蓬華興とは、作者自家の興をいう。○得兼 兼とは一事をなしたうえに更に他事をなすことをいう。○梁甫吟 梁甫は泰山の傍にある山の名である、梁父ともいう。梁甫吟は山東地方の民謡。三国志に諸葛亮(孔明)が父の死後、既成のメロディーに合わせて歌詞をつくったとある。諸葛亮が愛詞した詩篇、其の辞にいう、「歩して斉の城門を出で、造かに蕩陰里を望む。里中に三墳有り、索索として相い似たり。閉り是れ誰が家の墓ぞ、田彊と古治子と。カは能く南山を排し、文は能く地紀を絶つ。一朝謹言を被り、二桃三士を殺す。誰か能く此の謀を為せる、国相たる斉の量子なり」と。梁甫は泰山の下の小山の名、孔明は山東に耕して此の詩を好んで吟じたという。其の意は妟子の陰謀を悪むに在るもののようである。
同じく杜甫「登楼」では梁父吟とあり、同様の使用法をしている。晩唐の李商隠「籌筆駅」にもある。


 

〔付録〕 杜集に附載される李邕の原作。
登歴下古城員外孫新亭。亭對鵲湖。時季之芳。
自尚書郎。出斎州。製此亭。
        李  邕
吾宗固神秀、體物寫謀長。
形制開古迹、曾冰延楽方。
太山雄地理、巨壡眇雲荘。
高興泊煩促、永懐清典常。
含弘知四大、出入見三光。
負郭喜稉稻、安時歌吉祥。