行次西郊作 一百韻 李商隠  161 #14

これまで掲載している「甘露の変」を題材にしている李商隠の詩。

行次西郊作一百韻

行次西郊作 一百韻 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 149 #1、#2

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行次西郊作 一百韻 李商隠 150- 159 #13

玉輦望南鬥,未知何日鏇。
誠知開闢久,遘此雲雷屯。
送者問鼎大,存者要高官。
搶攘互間諜,孰辨梟與鸞。
千馬無返轡,萬車無還轅。」#-13
城空鼠雀死,人去豺狼喧。
街は人影なく荒涼として、荒田には、穀物の残りもつきて、ねずみやすずめも餓死した。人の去ったあとには、荒野や山にすむ猛獣が出て来て、豺や狼が叫びあい、そのこえはひとしお喧(かしま)しいものであった。
南資竭吳越,西費失河源。
今まで、長安へは運河により南から食物や塩鉄などの必需物資が搬び込まれた、西方の異国からは、シルクロードで数知れぬ衣服や装飾などの貢物や貿易品がもち込まれていた。
因今左藏庫,摧毁惟空垣。
それで、安史の乱でそれらの資源も、南は呉越の地方で使いはたし、略奪され、その中で、西に向けられた資物は黄河の源のあたりで、吐蕃に横領されて、左の蔵庫に搬入されないのだ。右の国庫は、百姓の乱入するにまかせて、唯空しき垣だけを残し、もはや再びその蔵に貢物や財宝のおさめたものがなくなったのだ。
如人當一身,有左無右邊。
租庸調という賦税の事は、戦禍が一応おさまれば、元通り履行されたので、左の藏庫には資財は確保されていったが、それは人間の体に喩えれば、左半分が有って右半分の無い片輪のようなものであった。
觔體半痿痺,肘腋生臊膻。』
#-14
體の筋肉の半分が搾れて、痺れた、半身不隨、自由のきかぬ片方のひじや脇はかさぶたができ、そこから膿みがでている、その上その膿がなま臭い悪臭を発したのか、なま臭い異民族の輩の匂いなのかが周辺に漂っていた。

列聖蒙此恥,含懷不能宣。
謀臣拱手立,相戒無敢先。
萬國困杼軸,内庫無金錢。
健兒立霜雪,腹歉衣裳單。」#-15

#13
玉輦(ぎょくれん)は南斗を望み、未だ知らず 何の日に旋(かえ)らんかを。
誠に知りぬ 開闢(かいびゃく)より久しくして、此の雲雷の屯に遘(あ)うことを。
送(したが)う者は鼎(かなえ)の大いさを問い、存(のこ)る者も高官を要(もと)むるのみ。
搶攘(そうじょう)しつつ互に間諜(かんちょう)し、孰(たれ)か梟(きょう)と鸞(らん)とを辨(わか) たん。
千馬 轡(たずな)を返えさず、万車も轅(ながえ)を還(めぐら)さず。
14

城は空しくして鼠雀(そじゃく)死し、人は去りて豺狼(さいろく)(かしま)し。

南の資は呉越に竭()き、西の費は河源に失す。

()りて右の蔵庫(ぞうこ)を令()て、摧(さいき)して惟だ空垣(くうえん)のみならしむ。

人の一身に当りて、左有りて右辺無きが如し。

筋体(きんたい) 半ば痿()えて痺(しび)れて、肘腋(ちゅうえき)に 臊膻(そうせん)を生ず。

#15
列聖(れつせい) 此の恥を蒙(こうむり)り、懐を含むも宜(の)ぶる能(あた)わず。
謀臣(ぼうしん)は手を拱(こまね)いて立ち、相い戒(いまし)めて敢て先んずる無し。
万国 杼軸(ちょじく)に困(くる)み、内庫(ないこ)に金銭無し。
健児(けんじ)は霜雪(そうせつ)のうちに立ち、腹は歉(あ)かず 衣裳は単のみ。

 

現代語訳と訳註
(本文)
#-14

城空鼠雀死,人去豺狼喧。
南資竭吳越,西費失河源。
因今左藏庫,摧毁惟空垣。
如人當一身,有左無右邊。
觔體半痿痺,肘腋生臊膻。』

(下し文) #14
城は空しくして鼠雀(そじゃく)死し、人は去りて豺狼(さいろく)喧(かしま)し。
南の資は呉越に竭(つ)き、西の費は河源に失す。
因(よ)りて右の蔵庫(ぞうこ)を令(し)て、摧毁(さいき)して惟だ空垣(くうえん)のみならしむ。
人の一身に当りて、左有りて右辺無きが如し。
筋体(きんたい) 半ば痿(な)えて痺(しび)れて、肘腋(ちゅうえき)に 臊膻(そうせん)を生ず。

(現代語訳)
街は人影なく荒涼として、荒田には、穀物の残りもつきて、ねずみやすずめも餓死した。人の去ったあとには、荒野や山にすむ猛獣が出て来て、豺や狼が叫びあい、そのこえはひとしお喧(かしま)しいものであった。
今まで、長安へは運河により南から食物や塩鉄などの必需物資が搬び込まれた、西方の異国からは、シルクロードで数知れぬ衣服や装飾などの貢物や貿易品がもち込まれていた。
それで、安史の乱でそれらの資源も、南は呉越の地方で使いはたし、略奪され、その中で、西に向けられた資物は黄河の源のあたりで、吐蕃に横領されて、左の蔵庫に搬入されないのだ。右の国庫は、百姓の乱入するにまかせて、唯空しき垣だけを残し、もはや再びその蔵に貢物や財宝のおさめたものがなくなったのだ。
租庸調という賦税の事は、戦禍が一応おさまれば、元通り履行されたので、左の藏庫には資財は確保されていったが、それは人間の体に喩えれば、左半分が有って右半分の無い片輪のようなものであった。
體の筋肉の半分が搾れて、痺れた、半身不隨、自由のきかぬ片方のひじや脇はかさぶたができ、そこから膿みがでている、その上その膿がなま臭い悪臭を発したのか、なま臭い異民族の輩の匂いなのかが周辺に漂っていた。

(訳注)
城空鼠雀死,人去豺狼喧。
街は人影なく荒涼として、荒田には、穀物の残りもつきて、ねずみやすずめも餓死した。人の去ったあとには、荒野や山にすむ猛獣が出て来て、豺や狼が叫びあい、そのこえはひとしお喧(かしま)しいものであった。
城空 長安城はみんな逃げて誰もいないありさま。


南資竭吳越,西費失河源。
今まで、長安へは運河により南から食物や塩鉄などの必需物資が搬び込まれた、西方の異国からは、シルクロードで数知れぬ衣服や装飾などの貢物や貿易品がもち込まれていた。
南資 南方から長安に運び込まれていた食糧、塩、鉄などの資源。○呉越 共に春秋時代の国名。後に呉は越に滅されたのだが、その二国の版図、江蘇、浙江一帯を呉越という。○西費 西方の異国からもたらされる衣類や香料や宝石などの貢物。○河源 黄河の源の一帯。安縁山の叛乱による中国の混乱に乗じて、粛宗皇帝李亨(711年-762年)の至徳年間(756―757年)、吐蕃は河西隴右の地をことごとく占拠したばかりか、一時長安にも迫った。


因今左藏庫,摧毁惟空垣。
それで、安史の乱でそれらの資源も、南は呉越の地方で使いはたし、略奪され、その中で、西に向けられた資物は黄河の源のあたりで、吐蕃に横領されて、左の蔵庫に搬入されないのだ。右の国庫は、百姓の乱入するにまかせて、唯空しき垣だけを残し、もはや再びその蔵に貢物や財宝のおさめたものがなくなったのだ。
○因 それで。その結果。○左藏庫 国庫に左右の蔵倉があり、左には天下の賦調、右には国の宝貨および四方からの貢物をおさめる。長安の人口に対して、潼関から西の耕作地面積では長安の自給率は、50%に満たなかった。


如人當一身,有左無右邊。
租庸調という賦税の事は、戦禍が一応おさまれば、元通り履行されたので、左の藏庫には資財は確保されていったが、それは人間の体に喩えれば、左半分が有って右半分の無い片輪のようなものであった。
○基本的な税は、租庸調に変わりはない。


觔體半痿痺,肘腋生臊膻。』
體の筋肉の半分が搾れて、痺れた、半身不隨、自由のきかぬ片方のひじや脇はかさぶたができ、そこから膿みがでている、その上その膿がなま臭い悪臭を発したのか、なま臭い異民族の輩の匂いなのかが周辺に漂っていた。
臊膻 動物のなま臭いにおい。また食生活の違う、北方の異民族に対する蔑称でもあり、一種のかけ言葉として用いられたもの。