行次西郊作 一百韻 李商隠 150- 171 #24


「行次西郊作一百韻」について李商隠の詩150 -147はじめに
李商隠 148 北徵と行次西郊作一百韻について


#23
我聽此言罷,冤憤如相焚。
昔聞擧一會,群盜爲之奔。
又聞理與亂,在人不在天。
我願爲此事,君前剖心肝。」#23

叩頭出鮮血,滂沱污紫宸。
私は天子の叱責をこうむるのも覚悟の上、床に額をうちつけて、甘露の変の血とは違い清らかな朱血を流し、涙ともども、天子政庁の殿堂を、その血と涙の玉で彩りたいとおもうのです。
九重黯已隔,涕泗空沾唇。
天子のおられます官殿は以前よりすでに九重の門を固く閉ざして王朝の雰囲気はうす暗く重いものになっている、誠心あるおおくの官位低き者を隔てて近寄せられない状況なのです。流れ落ちる涙、鼻水は、まだ何事をも心にしまい、建議すらできない、今はただ已れの唇を空しく濡らすに過ぎないというものです。
使典作尚書,廝養爲將軍。
今は学問も正義も不用、ただ僥倖姦智(ぎょうこうかんち:悪知恵―おべっか、賄賂、女などにより成り上がること)によって、役揚の小役人が最高宰相となり、軍陣の飯たきが成りあがって将軍になる時世となっているのです。
慎勿道此言,此言未忍聞
。』#-24
村人よ、よく教えてくれた、私も常々そうおもっていたが、もう二度とこうした話をされてはいけない。理解をしているからこそ、これ以上これを話されると辛くなるばかりなのでもうこれ以上聞けないのだ。

#23
我 此の言を聴き罷(おわ)り、冤憤(えんぷん) 相いに焚(や)くが如し。
昔 聞く 一(ひと)りの会(かい)を挙(あ)ぐれば、群盗(ぐんとう) 之が為に奔(はし)れりと。
又聞く 理と乱とは、人に在りて天には在らずと。
我は願う 此の事の為に、君前(くんぜん)に心肝(しんかん)を剖(あら)わし。

叩額(こうがく)して鮮血を出し、滂沱(ぼうだ)として紫宸(ししん)を污(けが)さん ことを。
九重(きゅうちょう)は黯(くら)已に隔たり、涕泗は空しく唇を沾(うるお)す。
使典 尚書と作り、廝養(しよう) 将軍と為る。
慎みて比の言を道(い)う 勿れ、此の言 未だ聞くに忍びず。




行次西郊作 一百韻 現代語訳と訳註

(本文)
叩頭出鮮血,滂沱污紫宸。
九重黯已隔,涕泗空沾唇。
使典作尚書,廝養爲將軍。
慎勿道此言,此言未忍聞。

(下し文)
叩額(こうがく)して鮮血を出し、滂沱(ぼうだ)として紫宸(ししん)を污(けが)さん ことを。
九重(きゅうちょう)は黯(くら)已に隔たり、涕泗は空しく唇を沾(うるお)す。
使典 尚書と作り、廝養(しよう) 将軍と為る。
慎みて比の言を道(い)う 勿れ、此の言 未だ聞くに忍びず。


(現代語訳)
私は天子の叱責をこうむるのも覚悟の上、床に額をうちつけて、甘露の変の血とは違い清らかな朱血を流し、涙ともども、天子政庁の殿堂を、その血と涙の玉で彩りたいとおもうのです。
天子のおられます官殿は以前よりすでに九重の門を固く閉ざして王朝の雰囲気はうす暗く重いものになっている、誠心あるおおくの官位低き者を隔てて近寄せられない状況なのです。流れ落ちる涙、鼻水は、まだ何事をも心にしまい、建議すらできない、今はただ已れの唇を空しく濡らすに過ぎないというものです。
今は学問も正義も不用、ただ僥倖姦智(ぎょうこうかんち:悪知恵―おべっか、賄賂、女などにより成り上がること)によって、役揚の小役人が最高宰相となり、軍陣の飯たきが成りあがって将軍になる時世となっているのです。
村人よ、よく教えてくれた、私も常々そうおもっていたが、もう二度とこうした話をされてはいけない。理解をしているからこそ、これ以上これを話されると辛くなるばかりなのでもうこれ以上聞けないのだ。


(訳注)
叩頭出鮮血,滂沱污紫宸。

私は天子の叱責をこうむるのも覚悟の上、床に額をうちつけて、甘露の変の血とは違い清らかな朱血を流し、涙ともども、天子政庁の殿堂を、その血と涙の玉で彩りたいとおもうのです。
叩額出鮮血 漢の朱雲が佞臣張禹を斬らんと願って成帝劉爽の怒りをかった時、左将軍の辛慶忌が、叩頭流血してその謝免を願った故事から出る言葉。○滂沱 涙の盛んに流れるさま。「詩経」陳風沢陂に「涕泗滂沱たり。」の句がある。○紫宸 天子が政を聴く一番奥の御殿。唐の長安の宮中でも紫宸殿は奥に位する。


九重黯已隔,涕泗空沾唇。
天子のおられます官殿は以前よりすでに九重の門を固く閉ざして王朝の雰囲気はうす暗く重いものになっている、誠心あるおおくの官位低き者を隔てて近寄せられない状況なのです。流れ落ちる涙、鼻水は、まだ何事をも心にしまい、建議すらできない、今はただ已れの唇を空しく濡らすに過ぎないというものです。
○九 天子の宮城には九つの門がある。○涕泗 涙を流し鼻水を流す。


使典作尚書,廝養爲將軍。
今は学問も正義も不用、ただ僥倖姦智(ぎょうこうかんち:悪知恵―おべっか、賄賂、女などにより成り上がること)によって、役揚の小役人が最高宰相となり、軍陣の飯たきが成りあがって将軍になる時世となっているのです。
使典作尚書 使典は役所の小役人。尚書は法令を実施する官庁。ここは、その尚書省の大臣をいう。「旧唐書」李林甫の伝に、その一党の朔方節度使牛仙客(生年不詳―742年)が尚書を兼ねた時、唐朝中興の功臣の一人で、それまで尚書僕射であった張九齢(673-740年)はそれをそしって、「仙客はもと河湶の一使典のみ。」と言ったとある。この事実を直接さす訳ではないが、官僚機構の秩序がこのように崩壊していたことをいうのである。○廝養 「春秋公羊伝」の宜公十二年の章に「廝役扈養」なる語がみえる。漢の何休の注によると「草を刈りとって防を為す者を廝、炊亨する者を養と曰う。」と。また、「東観漢記」に「忠下の養 中郎将たり。」云云と、商人や料理人が官爵を授った当時の風を風刺した後漢の歌謡をのせる。下賤より成りあがった者をいやしめていう言葉であろう。 


慎勿道此言,此言未忍聞。
村人よ、よく教えてくれた、私も常々そうおもっていたが、もう二度とこうした話をされてはいけない。理解をしているからこそ、これ以上これを話されると辛くなるばかりなのでもうこれ以上聞けないのだ。


次回まとめ

行次西郊作一百韻

蛇年建午月,我自梁還秦。
南下大散關,北濟渭之濱。
草木半舒坼,不類冰雪晨。
又若夏苦熱,燋卷無芳津。」#-1
高田長檞櫪,下田長荆榛。
農具棄道旁,饑牛死空墩。
依依過村落,十室無一存。
存者皆面啼,無衣可迎賓。』#-2
始若畏人問,及門還具陳。
右輔田疇薄,斯民常苦貧。
伊昔稱樂土,所賴牧伯仁。
官清若冰玉,吏善如六親。」#-3
生兒不遠征,生女事四鄰。
濁酒盈瓦缶,爛穀堆荆囷。
健兒庇旁婦,衰翁舐童孫。
況自貞觀後,命官多儒臣。』#-4
例以賢牧伯,徵入司陶鈞。
降及開元中,奸邪撓經綸。
晉公忌此事,多錄邊將勳。
因令猛毅輩,雜牧升平民。」#-5
中原遂多故,除授非至尊。
或出幸臣輩,或由帝戚恩。
中原困屠解,奴隸厭肥豚。』#-6
皇子棄不乳,椒房抱羌渾。
重賜竭中國,強兵臨北邊。
控弦二十萬,長臂皆如猿。
皇都三千里,來往同雕鳶。」#-7
五里一換馬,十里一開筵。
指顧動白日,暖熱回蒼旻。
公卿辱嘲叱,唾棄如糞丸。』#-8
大朝會萬方,天子正臨軒。
采旂轉初旭,玉座當祥煙。
金障既特設,珠簾亦高褰。」#-9
捋須蹇不顧,坐在禦榻前。
忤者死艱屨,附之升頂顛。
華侈矜遞衒,豪俊相並吞。
因失生惠養,漸見征求頻。』#-10

奚寇西北來,揮霍如天翻。
是時正忘戰,重兵多在邊。
列城繞長河,平明插旗幡。
但聞虜騎入,不見漢兵屯。
大婦抱兒哭,小婦攀車轓。」#-11
生小太平年,不識夜閉門。
少壯盡點行,疲老守空村。
生分作死誓,揮淚連秋雲。
廷臣例獐怯,諸將如羸奔。
爲贼掃上陽,捉人送潼關。』#-12
玉輦望南鬥,未知何日鏇。
誠知開辟久,遘此雲雷屯。
送者問鼎大,存者要高官。
搶攘互間諜,孰辨梟與鸞。
千馬無返轡,萬車無還轅。」#-13
城空鼠雀死,人去豺狼喧。
南資竭吳越,西費失河源。
因今左藏庫,摧毁惟空垣。
如人當一身,有左無右邊。
觔體半痿痺,肘腋生臊膻。』#-14
列聖蒙此恥,含懷不能宣。
謀臣拱手立,相戒無敢先。
萬國困杼軸,内庫無金錢。
健兒立霜雪,腹歉衣裳單。」#-15
饋餉多過時,高估銅與鉛。
山東望河北,爨煙猶相聯。
朝廷不暇給,辛苦無半年。
行人搉行資,居者税屋椽。』#-16
中間遂作梗,狼藉用戈鋋。
臨門送節制,以錫通天班。
破者以族滅,存者尚遷延。
禮數異君父,羈縻如羌零。」#-17
直求輸赤誠,所望大體全。
巍巍政事堂,宰相厭八珍。
敢問下執事,今誰掌其權。
瘡疽幾十載,不敢扶其根。
國蹙賦更重,人稀役彌繁。』#-18
近年牛醫兒,城社更扳援。
盲目把大旆,處此京西藩。
樂禍忘怨敵,樹黨多狂狷。
生爲人所憚,死非人所憐。
快刀斷其頭,列若豬牛懸。」#-19
鳳翔三百里,兵馬如黄巾。
夜半軍牒來,屯兵萬五千。
鄉里駭供億,老少相扳牽。
兒孫生未孩,棄之無慘顏。
不複議所適,但欲死山間。』#-20
爾來又三歲,甘澤不及春。
盜贼亭午起,問誰多窮民。
節使殺亭吏,捕之恐無因。
咫尺不相見,旱久多黄塵。」#-21
官健腰佩弓,自言爲官巡。
常恐值荒迥,此輩還射人。
愧客問本末,願客無因循。
郿塢抵陳倉,此地忌黄昏。』#-22
我聽此言罷,冤憤如相焚。
昔聞擧一會,群盜爲之奔。
又聞理與亂,在人不在天。
我願爲此事,君前剖心肝。」#-23
叩頭出鮮血,滂沱污紫宸。
九重黯已隔,涕泗空沾唇。
使典作尚書,廝養爲將軍。
慎勿道此言,此言未忍聞。』#-24



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