秋浦歌十七首 注目すべき秋浦の歌
李白が秋浦を歌うなかで、人生二度目の転換期、自分の人生について深く顧みている詩集である。
秋浦歌十七首 其二 李白Kanbuniinkai紀頌之の漢詩李白特集-246/350
其の一で、姿勢を正して長安に向き合うという気持ちが込められていた。長江は世に出ることを目指してはじめて下った江であり、その長江に向かって問いかけ、自分の初心に問いかけたのだ。
秋浦歌十七首其二
其二
秋浦猿夜愁。 黃山堪白頭。
秋浦で、秋が深まってきて猿がかなしそうに啼く夜になると愁いで胸いっぱいになる。ここからすこし南に黄山がある、もう冬になろうというのか、私のように愁いが募って、白髪頭になろうとしている。
清溪非隴水。 翻作斷腸流。
清渓の水は隴頭の水ほどではないけれど、やっぱり君との性交を思い出す腸を断ち切る声に聞こえてくるのだ。
欲去不得去。 薄游成久游。
ここにいると、ここを去ろうと思うのだけれどなぜか去り得ないのだ。ちょっとのつもりの滞在がながい滞在となってしまった。
何年是歸日。 雨淚下孤舟。
もう一二年で、思いを遂げて帰る日となる。いまは雨のように涙をながしながら、この川にただ一槽の小舟にのって下っている。
其の二
秋浦 猿は夜愁(うれ)う、黄山 白頭(はくとう)に堪えたり。
青渓(せいけい)は朧水(ろうすい)に非(あら)ざるに、翻(かえ)って断腸(だんちょう)の流れを作(な)す。
去らんと欲(ほっ)して去るを得ず、薄遊(はくゆう) 久遊(きゅうゆう)と成る
何(いず)れの年か 是(こ)れ帰る日ぞ、泪を雨(ふ)らせて孤舟(こしゅう)に下る。
秋浦歌十七首其二 現代語訳と訳註
(本文) 其二
秋浦猿夜愁。 黃山堪白頭。
清溪非隴水。 翻作斷腸流。
欲去不得去。 薄游成久游。
何年是歸日。 雨淚下孤舟。
(下し文) 其の二
秋浦 猿は夜愁(うれ)う、黄山 白頭(はくとう)に堪えたり。
青渓(せいけい)は朧水(ろうすい)に非(あら)ざるに、翻(かえ)って断腸(だんちょう)の流れを作(な)す。
去らんと欲(ほっ)して去るを得ず、薄遊(はくゆう) 久遊(きゅうゆう)と成る
何(いず)れの年か 是(こ)れ帰る日ぞ、泪を雨(ふ)らせて孤舟(こしゅう)に下る。
(現代語訳)
秋浦で、秋が深まってきて猿がかなしそうに啼く夜になると愁いで胸いっぱいになる。ここからすこし南に黄山がある、もう冬になろうというのか、私のように愁いが募って、白髪頭になろうとしている。
清渓の水は隴頭の水ほどではないけれど、やっぱり君との性交を思い出す腸を断ち切る声に聞こえてくるのだ。
ここにいると、ここを去ろうと思うのだけれどなぜか去り得ないのだ。ちょっとのつもりの滞在がながい滞在となってしまった。
もう一二年で、思いを遂げて帰る日となる。いまは雨のように涙をながしながら、この川にただ一槽の小舟にのって下っている。
(訳注)
秋浦猿夜愁。 黃山堪白頭。
秋浦で、秋が深まってきて猿がかなしそうに啼く夜になると愁いで胸いっぱいになる。ここからすこし南に黄山がある、もう冬になろうというのか、私のように愁いが募って、白髪頭になろうとしている。
○黄山 山の名。秋浦の南方にある。会稽山、天望山、天台山、廬山など李白が愛した名山が集まっている場所だ。
清溪非隴水。 翻作斷腸流。
清渓の水は隴頭の水ほどではないけれど、やっぱり君との性交を思い出す腸を断ち切る声に聞こえてくるのだ。
○清渓 秋浦の近くにある。安徽省貴池地方を北西に流れて長江にそそぐ川。その西側を流れる、秋浦河とともにその美しさにより景勝地となっている。別名、白洋河。
李白64清溪半夜聞笛 66清溪行 67 宿清溪主人 |
○隴水 隴水は甘粛省。「隴頭歌」という古い歌に「隴頭の流水は、鳴声幽咽す。造かに秦川を望み、肝腸断絶す」とある。○隴水 甘粛省隴山から長安方面に流れる渭水に合流する川の名。チベット;吐蕃との国境をながれる。○腸斷 腹の底からの感情を示す。悲哀の具象的表現。「楽府特集」二十五巻≪横笛曲辞≫「隴頭の流水、鳴声幽咽す。はるかに秦川(長安)を望み、心肝断絶す。」李白「清溪半夜聞笛」参照 杜甫「前出塞九首 其三 杜甫」 杜甫 「三秦記」にいう「隴山の頂に泉有りて、清水四に注ぐ、東のかた秦川を望めば四五里なるが如し。俗歌に『陣頭の流水、鳴声幽咽す。遙かに秦川を望めば、肝腸断絶す』という」と。隴山は今の陝西省鳳翔府隴州の北西にあって、ここを経て甘粛省の方へ赴くが、長安地方の眺望がこれよりみえなくなる様子を詠った歌である。鳴咽の水とはむせびなくような水流をいう。腸断声とは水自身に人をして腸をたたしめるような声のあることをいう。○水赤刃傷手 事実は刃が手をきずつけるから血が染まって水が赤くなるのであるが、我々がであう経験からすれば水が赤いのではっとおどろいてみると刃が手をきずつけていることが知られるということになる。
欲去不得去。 薄游成久游。
ここにいると、ここを去ろうと思うのだけれどなぜか去り得ないのだ。ちょっとのつもりの滞在がながい滞在となってしまった。
○薄遊しばらくの旅行。
何年是歸日。 雨淚下孤舟。
もう一二年で、思いを遂げて帰る日となる。いまは雨のように涙をながしながら、この川にただ一槽の小舟にのって下っている。
○下 清溪の下流にすすむと銭塘江に灌がれ、蕭山方面でまた妻のいる開封方面から遠ざかることになる。
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