高適の詩 (1)除夜作 (2) 塞上聞吹笛 (3) 田家春望
- 2012/05/07
- 14:57
高適の詩 (1)除夜作 (2) 塞上聞吹笛 (3) 田家春望
219 高適 こうせき 702頃~765
渤海(ぼっかい)(山東省)の人。字(あざな)は達夫(たっぷ)。辺境の風物を歌った詩にすぐれた作が多い。こうてき。
辺塞の離情を多くよむ。50歳で初めて詩に志し、たちまち大詩人の名声を得て、1篇を吟ずるごとに好事家の伝えるところとなった。吐蕃との戦いに従事したので辺塞詩も多い。詩風は「高古豪壮」とされる。李林甫に忌まれて蜀に左遷されて?州を通ったときに李白・杜甫と会い、悲歌慷慨したことがある。しかし、その李林甫に捧げた詩も残されており、「好んで天下の治乱を談ずれども、事において切ならず」と評された。『高常侍集』8巻がある。
高適 除夜作 塞上聞吹笛 田家春望
旅の空、一人迎える大みそかの夜。
詩人を孤独が襲います。
(1)除夜作
旅館寒燈獨不眠,客心何事轉悽然。
寒々とした旅館のともしびのもと、一人過ごす眠れぬ除夜をすごす。ああ、本当にさみしい。
旅の寂しさは愈々増すばかり・・・・・・・・・・。
故鄕今夜思千里,霜鬢明朝又一年。
今夜は大晦日。
故郷の家族は、遠く旅に出ている私のことを思ってくれているだろう。
夜が明けると白髪頭の置いたこの身に、また一つ歳を重ねるのか・・・・。
寒々とした旅館のともしびのもと、一人過ごす眠れぬ除夜をすごす。ああ、本当にさみしい。
旅の寂しさは愈々増すばかり・・・・・・・・・・。
今夜は大晦日。
故郷の家族は、遠く旅に出ている私のことを思ってくれているだろう。
夜が明けると白髪頭の置いたこの身に、また一つ歳を重ねるのか・・・・。
作者 高適は河南省開封市に祀られています。三賢祠と呼ばれるその杜は李白、杜甫、高適の三詩人が共に旅をした場所である。記念して建立されている。
詩人高適は50歳で初めて詩に志し、たちまち大詩人の名声を得て、1篇を吟ずるごとに好事家の伝えるところとなった。吐蕃との戦いに従事したので辺塞詩も多く残されている。詩風は「高古豪壮」とされる。李林甫に忌まれて蜀に左遷されて?州を通ったときに李白・杜甫と会い、詩の味わいが高まった。
李林甫に捧げた詩も残されており、「好んで天下の治乱を談ずれども、事において切ならず」と評された。『高常侍集』8巻がある。
霜鬢明朝又一年。
ああ、大晦日の夜が過ぎると、また一つ年を取ってしまう。年々頭の白髪も増えていく、白髪の数と同じだけ愁いが増えてゆくのか
当時、「数え」で歳をけいさんしますから、新年を迎えると年を取ります。
旅館寒燈獨不眠,客心何事轉悽然。
故鄕今夜思千里,霜鬢明朝又一年。
旅先で一人過ごす大晦日、故郷にいれば家族そろって団欒し、みんなで酒を酌み交わしていたことでしょう。
:故鄕 今夜 千里を 思う
自分が千里離れた故郷を偲ぶのではなく、故郷の家族が自分を思ってくれるだろうという中国人の発想の仕方です。中華思想と同じ発想法で、多くの詩人の詩に表れています。
しかしそれが作者の孤独感を一層引き立て、望郷の念を掻き立てるのです。
高適の詩(2) 塞上聞吹笛 (3) 田家春望 (1)除夜作
春ののどかさにつられ、城郭を出て田園の里にやってきた。朝廷では権力者李林甫を意識して、普通の付き合いができない。春を詠う。
田家春望
田園の家、春の眺め。
出門何所見、春色滿平蕪。
城門を出て、郊外へ行ったが、何も見るものがない、春の気配が、草原一面に満ちているだけである。
嘆かわしいことは、私を理解してくれる者がいないことだ。高陽の一酒徒となって悶々としている。
可歎無知己、高陽一酒徒。
高適の詩は、春のけだるさを田園の景色に見るものがないということで強調します。春の気配が草原一面にあるが、理解してくれるものは誰もいない。賢人の集まりで酒を飲み交わすことにしよう。古来、権力者に対する、賢人は、酒を酌み交わして、談義した。 権力者のことを直接表現はできないのだ。
田園の家、春の眺め。
城門を出て、郊外へ行ったが、何も見るものがない、春の気配が、草原一面に満ちているだけである。
嘆かわしいことは、私を理解してくれる者がいないことだ。高陽の一酒徒となって悶々としている。
高適の詩は、春のけだるさを田園の景色に見るものがないということで強調します。春の気配が草原一面にあるが、理解してくれるものは誰もいない。賢人の集まりで酒を飲み交わすことにしよう。古来、権力者に対する、賢人は、酒を酌み交わして、談義した。 権力者のことを直接表現はできないのだ。
門を出でて 何の見る所ぞ、春色 平蕪へいぶに 滿つ。
歎ず 可べし 知己ちき 無きを、高陽の一酒徒。
(3)田家春望
田園の家、春の眺め。 ・田家 田園の家。 ・春望 春の眺め。春の風景。
出門何所見、春色滿平蕪。
城門を出て、郊外へ行ったが、何も見るものがない。春の気配が、草原一面に満ちているだけである。
・出門 城門を出ることで、郊外へ行くの意。 ・何所見 何も見るべきものがない。 ・何所 なにも…ない。 ・所見 見るところ。見る事柄。 ・春色 春景色。春の気配。 ・平蕪 草原。平原。平野。
可歎無知己、高陽一酒徒。
嘆かわしいことは、私を理解してくれる者がいないことだ。 (天下に志があっても用いられることがなく、天下の壮士が酒に日を送っている、そのようなわたしは)高陽の一酒徒となって悶々としている。
・可歎 なげかわしいことである。 ・知己 〔ちき〕知人。友人。自分の気持ちや考えをよく知っている人。自分をよく理解してくれる人。 ・高陽酒徒 飲み友達。酒飲み、の意。 太公望のことを意味する。そのいみでは、高陽は地名。いまの河南省杞県の西。陳留県に属した。酒徒は酒のみ。高陽の呑み助とは、漢の酈食其(れきいき)のことで、陳留県高陽郷の人である。読書を好んだ。
(酈生の生は、読書人に対する呼び方。)家が貧しくて、おちぶれ、仕事がなくて衣食に困った。県中の人がみな、かれを狂生と呼んだ。沛公(のちの漢の高祖)が軍をひきいて陳留の郊外を攻略したとき、沛公の旗本の騎士で、たまたま酈生と同じ村の青年がいた。その青年に会って酈生は言った。「おまえが沛公にお目通りしたらこのように申しあげろ。臣の村に、酈生という者がおります。年は六十あまり、身のたけ八尺、人びとはみな彼を狂生と呼んでいますが、彼みずからは、わたしは狂生ではないと、申しております、と。」騎士は酈生におしえられたとおりに言った。
沛公は高陽の宿舎まで来て、使を出して酈生を招いた。酈生が来て、入って謁見すると、沛公はちょうど、床几に足を投げ出して坐り、二人の女に足を洗わせていたが、そのままで酈生と面会した。酈生は部屋に入り、両手を組み合わせて会釈しただけで、ひざまずく拝礼はしなかった。そして言った。「足下は秦を助けて諸侯を攻めようとされるのか。それとも、諸侯をひきいて秦を破ろうとされるのか。」沛公は罵って言った。「小僧め。そもそも天下の者がみな、秦のために長い間くるしめられた。
だから諸侯が連合して秦を攻めている。それにどうして、秦を助けて諸侯を攻めるなどと申すのか。」酈生は言った。「徒党をあつめ、義兵をあわせて、必ず無道の秦を課しょうとされるなら、足を投げ出したまま年長者に面会するのはよろしくありません。」沛公は足を洗うのをやめ、起ち上って着物をつくろい、酈生を上座にまねいて、あやまった。酈生はそこでむかし戦国時代に、列国が南北または東西に結んで、強国に対抗したり同盟したりした、いわゆる六国の合縦連衡の話をした。
沛公は喜び鄭生に食をたまい、「では、どうした計略をたてるのか」ときいた。酈生は、強い秦をうちやぶるには、まず、天下の要害であり、交通の要処である保留を攻略すべきであると進言し、先導してそこを降伏させた。沛公は、酈生に広野君という号を与えた。酈生は遊説の士となり、馳せまわって諸侯の国に使した。漢の三年に、漢王(沛公)は酈生をつかわして斉王の田広に説かせ、酈生は、車の横木にもたれて安坐しながら、斉の七十余城を降服させた。酈生がはじめて沛公に謁見した時のことは、次のようにも伝わっている。酈生が会いに来たとき、沛公はちょうど足を洗っていたが、取次にきた門番に「どんな男か」とたずねた。「一見したところ、儒者のような身なりをしております」と門番がこたえた。
沛公は言った。「おれはいま天下を相手に仕事をしているのだ。儒者などに会う暇はない。」門番が出ていって、その旨をつたえると、酈生は目をいからし、剣の柄に手をかけ、門番をどなりつけた。「おれは高陽の酒徒だ。儒者などではない。」門番は腰をぬかして沛公に報告した。「客は天下の壮士です。」かくして酈生は沛公に謁見することができた。
『梁甫吟』 李白
「君不見 高陽酒徒起草中。 長揖山東隆准公。」と見える。
塞上聞吹笛
雪淨胡天牧馬還,月明羌笛戍樓閒。
雪が清らかなえびすの地で、牧馬からもどってくる、月は明らかで、西方異民族(チベツト系)の吹く笛の音が、物見櫓の間から聞こえてきた。
借問梅花何處落,風吹一夜滿關山。
少しお訊ねしますこの「梅花」の笛の音はどこから聞こえてくるのだろうか、風が吹いてきて、一晩中、この関所となる山に満ちてしまった。
雪が清らかなえびすの地で、牧馬からもどってくる、月は明らかで、西方異民族(チベツト系)の吹く笛の音が、物見櫓の間から聞こえてきた。
少しお訊ねしますこの「梅花」の笛の音はどこから聞こえてくるのだろうか、風が吹いてきて、一晩中、この関所となる山に満ちてしまった。
塞上にて 吹笛を聞く
雪 淨(きよ)く 胡天( こ てん) 牧馬(ぼくば) 還(かへ)れば,
月 明るく 羌笛(きゃうてき) 戍樓(じゅろう)に閒(あひだ)す。
借問(しゃもん)す 梅花 何(いづ)れの處よりか 落つる,
風 吹きて 一夜(いち や ) 關山(くゎんざん)に 滿つ。
塞上聞吹笛
国境附近で笛を吹いているのを耳にした。
雪淨胡天牧馬還、月明羌笛戍樓閒。
雪が清らかなえびすの地で、牧馬からもどってくると。(晴天で満月に近い時なので)月は明らかで、西方異民族(チベツト系)の吹く笛の音が、物見櫓の間から聞こえてきた。
*この句は「雪淨く 胡天 馬を牧して還れば」とも読めるが、この聯「雪淨胡天牧馬還,月明羌笛戍樓閒。」は対句であり、でき得る限り、読み下しもそのようにしたい。 ・淨:きよらかである。 ・胡天:(西方の)えびすの地の空。(西方の)えびすの地。 ・牧馬:(漢民族側の官牧が飼養している馬。或いは、異民族が飼い養っている馬。 ・還:(出かけていったものが)もどる。(出かけていったものが)かえる。 ・羌笛:青海地方にいた西方異民族(チベツト系)の吹く笛。 ・閒:あいだをおく。物があってへだてる。間。
借問梅花何處落、風吹一夜滿關山。
少しお訊ねしますこの「梅花」の笛の音はどこから聞こえてくるのだろうか。風が吹いてきて、一晩中、この関所となる山に満ちてしまった。
・借問:〔しゃもん、しゃくもん〕訊ねる。試みに問う。ちょっと質問する。かりに訊ねる。 ・梅花:「春を告げる梅の花」という意味と笛曲の名を兼ねている。 ・何處:どこ。いずこ。 ・落:散る。落ちる。 ・關山:関所となるべき要害の山。また、ふるさとの四方をとりまく山。故郷。
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