遣興五首其二 杜甫 <247>遣興22首の⑯番 700- 361
- 2012/08/04
- 20:55
遣興五首其二 杜甫 <247>遣興22首の⑯番 700- 361
其一(寒さの時になって富家のさまを見て自己の貧窮をのべた詩である。) ⑮
朔風飄胡雁,慘澹帶砂礫。
冬を呼ぶ北風が北方異民族の地の「雁」を招き空に翻している、その「風」と「雁」は薄暗くものがなしい思いにさせるだけでなく、砂と小石混じりのすさまじい風をおびて吹き荒ぶのである。
長林何蕭蕭,秋草萋更碧。
背の高い木の林は木々を抜ける風がびゅうびゅうとなんとさびしく吹きわたる。秋の草は茂りながらいまだに碧を濃くしている。
北裡富燻天,高樓夜吹笛。
此の時、北里では富豪の家の勢焔は天をもくすぶらせるほどの勢いなのだ、そしてその富豪の高殿で夜を徹して笛を吹き宴をしているのだ。
焉知南鄰客,九月猶絺綌。
これに反して南に隣接の住民も、旅人であるわたしもどうしてこれを知らないはずがないのだ、その一方で、もうすぐ冬だという九月であるのにいまだに葛の単衣の着物で過ごしている者たちがいるのである。
朔風胡雁を諷す、惨澹として砂磯を帯ぶ。
長林何ぞ粛粛たる、秋草妻として更に碧なり。
北里富天を煮ず、高楼夜笛を吹く。
焉んぞ知らん南隣の客、九月に猶お絺綌なるを。
其二 ⑯
長陵銳頭兒,出獵待明發。
長陵にはとがった頭の貴公子がいる。狩猟に出かけると夜通しかけ、そこで夜明けを待つのだ。
騂弓金爪鏑,白馬蹴微雪。
あか馬に乗り、黄金で飾りつけたかぶらの矢で弓を引き、白馬にまたがって僅かに積もった雪を蹴散らして走り去る。
未知所馳逐,但見暮光滅。
所構わず「競い馬」をするかとおもえば、夕日が沈んでゆくのを眺めている。
歸來懸兩狼,門戶有旌節。
帰って来れば二匹のオオカミに襲われたようなものだ、その貴公子の邸宅の門には権勢をあらわす天子から賜った門閥の季節を祝う旗が掲げられている。
長陵【ちょうりょう】鋭頭【えいとう】の児、猟に出でて明発【めいはつ】を待つ。
験弓【せいきゅう】金爪【きんそう】の鏑、白馬 微雪を蹴る。
未だ馳逐【ちちく】する所を知らず、但だ暮光【ぼこう】の滅するを見る。
帰り来りて両狼【りょうろう】を懸く、門戸に旌節【せいせつ】有り。
其三 ⑰
漆有用而割,膏以明自煎;蘭摧白露下,桂折秋風前。
府中羅舊尹,沙道故依然。赫赫蕭京兆,今為人所憐。
其四 ⑱
猛虎憑其威,往往遭急縛。雷吼徒咆哮,枝撐已在腳。
忽看皮寢處,無複睛閃爍。人有甚於斯,足以勸元惡。
其五 ⑲
朝逢富家葬,前後皆輝光。共指親戚大,緦麻百夫行。
送者各有死,不須羨其強。君看束縛去,亦得歸山岡。
現代語訳と訳註
(本文) 其二
長陵銳頭兒,出獵待明發。騂弓金爪鏑,白馬蹴微雪。
未知所馳逐,但見暮光滅。歸來懸兩狼,門戶有旌節。
(下し文)
長陵【ちょうりょう】鋭頭【えいとう】の児、猟に出でて明発【めいはつ】を待つ。
験弓【せいきゅう】金爪【きんそう】の鏑、白馬 微雪を蹴る。
未だ馳逐【ちちく】する所を知らず、但だ暮光【ぼこう】の滅するを見る。
帰り来りて両狼【りょうろう】を懸く、門戸に旌節【せいせつ】有り。
(現代語訳)
長陵にはとがった頭の貴公子がいる。狩猟に出かけると夜通しかけ、そこで夜明けを待つのだ。
あか馬に乗り、黄金で飾りつけたかぶらの矢で弓を引き、白馬にまたがって僅かに積もった雪を蹴散らして走り去る。
所構わず「競い馬」をするかとおもえば、夕日が沈んでゆくのを眺めている。
帰って来れば二匹のオオカミに襲われたようなものだ、その貴公子の邸宅の門には権勢をあらわす天子から賜った門閥の季節を祝う旗が掲げられている。
(訳注)
其二
長陵銳頭兒,出獵待明發。
長陵にはとがった頭の貴公子がいる。狩猟に出かけると夜通しかけ、そこで夜明けを待つのだ。
・銳頭兒 貴公子の特徴として頭にちょこんと小さな帽子をかぶっていること。・獵 野生の鳥や獣をとること。猟(りよう)。狩猟。・明發夕方から明け方まで夜通し。
李白『少年行』
五陵年少金市東、銀鞍白馬度春風。
落花踏尽遊何処、笑入胡姫酒肆中。
王維の「少年行四首」は漢時代を借りて四場面の劇構成になっている。
王維『少年行四首』 其一
新豊美酒斗十千、咸陽遊侠多少年。
相逢意気為君飲、繋馬高楼垂柳辺。
杜甫『少年行』を一首と二首の三首,作っている
馬上誰家白面郎、臨階下馬坐人牀。
不通姓氏麤豪甚、指點銀瓶索酒嘗。
騂弓金爪鏑,白馬蹴微雪。
あか馬に乗り、黄金で飾りつけたかぶらの矢で弓を引き、白馬にまたがって僅かに積もった雪を蹴散らして走り去る。
・騂弓 騂はあかうま。『詩経‧小雅‧角弓』「騂騂角弓, 翩其反矣。」『毛傳』「騂騂, 調利也・金爪鏑」・相続争いをすること。貴族はその血筋だけ重要なものとされていたため、醜い争いをそれぞれの門閥できそう。その争いのカヤの外の貴公子たちは遊侠の徒となっていた。
鏑【かぶら】とは。意味や解説。1 矢の先と鏃(やじり)との間につけて、射たときに鳴るように仕掛けた卵形の装置。角・木・竹の根などを用い、内部を空洞にして「目」とよぶ窓をあける。2 「鏑矢」の略。
未知所馳逐,但見暮光滅。
所構わず「競い馬」をするかとおもえば、夕日が沈んでゆくのを眺めている。
・馳逐(ちちく) 競い馬のこと。
歸來懸兩狼,門戶有旌節。
帰って来れば二匹のオオカミに襲われたようなものだ、その貴公子の邸宅の門には権勢をあらわす天子から賜った門閥の季節を祝う旗が掲げられている。
・兩狼 競い馬をする二人の貴公子の横暴な振る舞いという意味と、もう一方で、住民は叛乱軍の残虐な行為を経験している。住民にとってはどちらもかかわりたくないオオカミのようなものだということ。・旌節 旌【せい】旗竿(はたざお)のさきに旄(ぼう)という旗飾りをつけ、これに鳥の羽などを垂らした旗。天子が士気を鼓舞するのに用いる。・節 人日、上巳、端午、七夕、重用など、五節句という。ここでは、富豪の家の権勢、威厳、などをあらわすこととして使う。
長陵【ちょうりょう】鋭頭【えいとう】の児、猟に出でて明発【めいはつ】を待つ。
験弓【せいきゅう】金爪【きんそう】の鏑、白馬 微雪を蹴る。
未だ馳逐【ちつい】する所を知らず、但だ暮光【ぼこう】の滅するを見る。
帰り来りて両狼【りょうろう】を懸く、門戸に旌節【せいせつ】有り。
長安の貴公子達が猟に興じるさまを詠じた作品であり、幸せな充足した日々を過ごす貴公子達の姿が描かれている。
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