有懷台州鄭十八司戶虔 杜甫 <234-#2> 700- 347
- 2012/08/14
- 21:04
有懷台州鄭十八司戶虔 杜甫 <234-#2> 700- 347
秦州に来てある日、儒者である鄭虔を懐かしく思い出した。杜甫30代後半長安で就職活動をしているときこの鄭虔には人からならぬお世話になっている。当時、廣文館博士であった鄭虔とともに何将軍の山荘に遊んでの詩。杜甫、五言律詩篇『 陪鄭広文遊何将軍山林十首 其一 』から『十首』に心安らぐ様子をあらわしている。
また鄭虔は房琯に連座して台州の書記官に左遷された様子を杜甫、七言律詩『送鄭十八虔貶台州司戶、傷其臨老隋賊之故閲馬面別情見於詩 』「鄭公樗散鬢成絲,酒後常稱老畫師。」(鄭公樗散贅糸を成す、酒後常に称す老画師と。)とあらわしていた。
有懷台州鄭十八司戶虔
台州司戶で親族の十八番目の鄭虔先生を懐かしむことがあった時の詩。
天臺隔三江,風浪無晨暮。
天台はこの国の三大河川を隔てた向こうにある。そこは、風が吹き大波が朝夕の隔てなくあるのである。
鄭公縱得歸,老病不識路。
鄭虔先生はたとえ今帰ることを許されたとしても、寄る年波に加えてもともと病弱でその病気があるため帰路に就くことは考えられないことだろう。
昔如水上鷗,今如罝中兔。
私が知っている廣文館博士のころは、鴎が水の上で遊ぶように生き洋々とされていた。しかし、今はきっと網の中に捕えられたウサギのような生活をされていることと思う。
性命由他人,悲辛但狂顧。
その人に持って生まれた運命と性格というものは他人によって影響を受けるものである。いまはつらく悲しいことがあってもただ振り返ってみるということだけなのだ。
#2
山鬼獨一腳,蝮蛇長如樹。
山中の怪物は単独であるいているものであり、マムシなどは木と木の枝に一体になっているものなのだ。
呼號傍孤城,歲月誰與度?
孤城のほとりで名を呼んで叫んでみる、そのように独りでこの歳月をだれと過ごしてゆくというのだろうか。
從來禦魑魅,多為才名誤。
これまで山林の異気(瘴気)から生ずるという怪物と一緒にいるといわれている。多くの才能あるもの、名分をつくるものがどれほど多く間違ったことをしてきたのか。
夫子嵇阮流,更被時俗惡。
それ、そのことは先生が建安の儒者、嵇康と阮籍のように清談をし汚れたものを避けた生き方をしてきた、ところが今世俗はさらに低俗なものになっているのである。
#3
海隅微小吏,眼暗發垂素。黃帽映青袍,非供折腰具。
平生一杯酒,見我故人遇。相望無所成,乾坤莽回互。
台州の鄭十八司戶虔を懷う有り
天臺 三江を隔てる,風浪 晨暮 無し。
鄭公 縱い歸るを得るとも,老病 路を識らず。
昔 水上の鷗の如し,今 罝中の兔の如し。
性命 他人に由,悲辛 但だ 狂顧す。
山鬼 獨り一腳し,蝮蛇 長じて樹の如し。
呼號して孤城の傍,歲月は誰と與り度る?
從來 魑魅に禦し。多為 才名 誤る。
夫れ子は 嵇阮の流にし,更に時に俗惡を被う。
海隅にして小吏を微し,眼暗にして垂素を發す。
黃帽 青袍に映え,腰具を折るを供にし非ず。
平生 一杯の酒,我の故人に遇うを見る。
相い望むも成す所無く,乾坤 莽として回互す。
現代語訳と訳註
(本文) #2
山鬼獨一腳,蝮蛇長如樹。
呼號傍孤城,歲月誰與度?
從來禦魑魅,多為才名誤。
夫子嵇阮流,更被時俗惡。
(下し文)
山鬼 獨り一腳し,蝮蛇 長じて樹の如し。
呼號して孤城の傍,歲月は誰と與り度る?
從來 魑魅に禦し。多為 才名 誤る。
夫れ子は 嵇阮の流にし,更に時に俗惡を被う。
(現代語訳)
山中の怪物は単独であるいているものであり、マムシなどは木と木の枝に一体になっているものなのだ。
孤城のほとりで名を呼んで叫んでみる、そのように独りでこの歳月をだれと過ごしてゆくというのだろうか。
これまで山林の異気(瘴気)から生ずるという怪物と一緒にいるといわれている。多くの才能あるもの、名分をつくるものがどれほど多く間違ったことをしてきたのか。
それ、そのことは先生が建安の儒者、嵇康と阮籍のように清談をし汚れたものを避けた生き方をしてきた、ところが今世俗はさらに低俗なものになっているのである。
(訳注) #2
山鬼獨一腳,蝮蛇長如樹。
山中の怪物は単独であるいているものであり、マムシなどは木と木の枝に一体になっているものなのだ。
・山鬼 山中の怪物。大型のヒヒの類をいう。・蝮蛇 マムシとサソリ、転じて凶悪なものの喩え。
呼號傍孤城,歲月誰與度?
孤城のほとりで名を呼んで叫んでみる、そのように独りでこの歳月をだれと過ごしてゆくというのだろうか。
從來禦魑魅,多為才名誤。
これまで山林の異気(瘴気)から生ずるという怪物と一緒にいるといわれている。多くの才能あるもの、名分をつくるものがどれほど多く間違ったことをしてきたのか。
・魑魅 山林の異気(瘴気)から生ずるという怪物のことと言われている。顔は人間、体は獣の姿をしていて、人を迷わせる。
夫子嵇阮流,更被時俗惡。
それ、そのことは先生が建安の儒者、嵇康と阮籍のように清談をし汚れたものを避けた生き方をしてきた、ところが今世俗は
さらに低俗なものになっているのである。
・嵇阮 嵇康と阮籍
嵆 康(けい こう、224年 - 262年あるいは263年)は、中国三国時代の魏の文人。竹林の七賢の一人で、その主導的な人物の一人。字は叔夜。非凡な才能と風采を持ち、日頃から妄りに人と交際しようとせず、山中を渉猟して仙薬を求めたり、鍛鉄をしたりするなどの行動を通して、老荘思想に没頭した。気心の知れた少数の人々と、清談と呼ばれる哲学論議を交わし名利を求めず、友人の山濤が自分の後任に、嵆康を吏部郎に推薦した時には、「与山巨源絶交書」(『文選』所収)を書いて彼との絶交を申し渡し、それまで通りの生活を送った。ただし死の直前に、息子の嵆紹を山濤に託しているように、この絶交書は文字通りのものではなく、自らの生き方を表明するために書かれたものである。
阮 籍(げん せき、210年(建安15年) - 263年(景元4年))は、中国三国時代の人物。字(あざな)を嗣宗、陳留尉氏の人。竹林の七賢の指導者的人物である。父は建安七子の一人である阮瑀。甥の阮咸(げんかん)も竹林の七賢の一人である。子は阮渾、兄は阮煕をもつ。魏の末期に、偽善と詐術が横行する世間を嫌い、距離を置くため、大酒を飲み清談を行い、礼教を無視した行動をしたと言われている。俗物が来ると白眼で対し、気に入りの人物には青眼で対した。
・俗惡 風俗がわるい。劣悪なこと。
「五言古詩」
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